日銀がヘリコプターマネーをするなら不動産を買わなければならない

日銀ヘリコプターマネー

最近ヘリコプターマネー(ヘリマネ)という言葉をよく聞く。

結論から言うが、日銀がヘリコプタマネーを行うなら、あなたは不動産を買っておかなくてはならない。

ヘリコプターマネーとはなにか。

ヘリコプターマネーとは、あたかもヘリコプターから現金をばらまくように中央銀行(政府)が、対価を取らずに大量のお金を市中に供給する政策のことだ。

日本では日本銀行(日銀)が中央銀行であり、中央銀行はお札(日本銀行券)を発行することができる。よくよく考えてみると1万円札は何を持って1万円としての価値があるのだろうかと思うが、かつて1万円札は1万円分の金(Gold)と交換することができた(=金本位制)。しかし、今は金と交換することができず、日本銀行がいくらでも発行できる紙幣を、価値が損なわないよう管理しながら、お金の量を増やしたり減らしたりしている(=管理通貨制度)。

簡単に言うと、印刷機でお金を刷りまくり、使いまくってお金の量を増やそうというのがヘリコプターマネーだ。

なぜヘリコプターマネーの話が出てきているのだろうか?

それは日本銀行が行っている異次元の金融緩和が上手く作用していないからだ。

現在、日本銀行は「2%」の物価上昇を目標に異次元の金融緩和を行っている。

物価目標2%

上記のように物価が2%上がるとしよう。今年、アメが100円だったものが来年には102円になっているということになる。アメは何も変わっていないのだが、物価上昇したことになり、言い換えれば、今年は100円で買えたものが来年は+2円払わないと同じアメを買えないので、お金の価値が下がったということになる。

このように物価上昇(=お金の価値が下がる)ことをインフレーション(インフレ)というが、逆に物価下落(=お金の価値が上がる)ことをデフレーション(デフレ)という。

なぜ、わざわざお金の価値を下げるようなことをしなければならないのだろうか。そのことについて黒田東彦日銀総裁は以下のように述べている。

まずは、この15年間を振り返りながら、デフレの何が問題なのかという点について、改めて確認しておきたいと思います。日本経済においては、90 年代後半以降15年にわたって「デフレ」が続いています。デフレは景気低迷の「結果」であるとともに、それ自身が景気低迷の長期化をもたらす「原因」でもありました。15 年に及ぶデフレのもとで、日本経済には「物価が上がらない」あるいは「物価が緩やかに低下する」ことを前提とした体質が定着し、そのことが、景気低迷の長期化に繋がったということです。企業からすると、デフレのもとでは、製品やサービスの価格を引き上げることができないため、売上や収益は伸びません。そこで、人件費や設備投資をできるだけ抑制することになります。家計においては、賃金が上がらないため、消費を抑えようとします。家計が消費を抑えると、企業は、消費を取り込むために、製品やサービスの価格を引き下げざるを得なくなります。

[…]家計にとっても、将来、物価が下落すると予想すれば、価格が下がってから商品やサービスを購入すればよいので、消費をできるだけ先送りしようとする傾向が強まります。 一方で、デフレ下では、現金や預金を保有していることが相対的に有利な投資になります。デフレは、事業への投資や株式などのリスク性資産への投資の収益率を低下させる一方で、名目額が目減りしない現金や預金の実質的な収益率を高める方向に作用します。そのため、企業や家計にとっては、設備投資や消費を抑制する一方で、余剰資金については現預金として保有するということが合理的な行動になります。このように、デフレのもとでは、企業や家計のリスクテイクが消極化する中で、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続くことになりました。

[…]ところで、日本経済においてこのようなデフレが続いていた間に、消費者物価はどの程度下落したかご存知でしょうか。実は、1998年度から2012年度の15年間についてみると、消費者物価の下落率は、平均して年▲0.3%にすぎません。この間の消費者物価の変化率は、ほぼゼロ%に近いマイナスだったといってもよいでしょう。この事実は、消費者物価でみて変化率がほぼゼロ%であっても、実際にはデフレであるということを意味しています。企業の実感という意味でも、この15年間、短観調査で、販売している製品やサービスの価格が下落していると答えた企業の割合は、上昇していると答えた企業の割合をほぼ一貫して上回ってきました。 以上、デフレから脱却するためには、消費者物価の前年比でみて、「0」%より高い上昇率を目指さなければなりません。それでは、どの程度のプラスを目指すべきでしょうか。日本銀行では、それは「2%」だと考えています。

(2014年3月20日黒田東彦日銀総裁の日本商工会議所における講演『なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか』より一部抜粋)

アメが100円から102円程度なら気にはしないだろうが、もし「来年、2%物価上昇する」と確実にわかっているならば、それはある意味「消費税増税」のようなものであり、住宅や家電が必要であるならば今のうちに買っておこうとなるだろう。

2%物価上昇させるために日銀は異次元緩和を行っているが、物価上昇させるにはどうすればよいのだろうか。ずばり、お金の価値を下げれば良いのだ。世の中に出回っているお金を増やせば、お金の価値は下がる。ただし、あまりにもお金を増やしすぎて、本当にお金の価値を暴落させてしまうと大変なことになってしまう。一番良いのはお金の価値を下げずに、国民が「来年、2%物価上昇する」という意識を持ち、消費してくれることだ。そこで、日銀が何をやっているのか図で説明する。

異次元金融緩和

①家計(国民)は銀行にお金を預ける。

②お金を預かった民間銀行は、利子をつけて返さないといけないので、預かったお金の一部で政府が発行する国債を買う。これを繰り返しているため、既に多くの国債を持っている。

日本国債

(日本)国債とは、日本政府が発行している債券(=借金証書)だ。例えば、上記の写真の国債は10億円で利子が0.1%と書かれているので、購入すると年100万円の利息が政府からもらえるということになる。期間は2年間と書かれているので、2年経てば元本の10億円と2年分の利息200万円がもらえるという債券になる。リスクは日本国が潰れることだ。当たり前だが日本国が潰れると返してくれない可能性が高い。そのリスク以外、2年間の間に途中で売らなければ元本を割ることはない。利率は低くても元本を割る可能性が低いため、民間銀行は大量の国債を購入している。

③民間銀行が購入した国債を日本銀行が購入する。

こうすると代金が日本銀行から民間銀行に支払われ、民間銀行が持つ現金が増える。それを企業に貸すことによって世の中のお金の量が増えるというわけだ。

しかし実際のところ、民間銀行は持っている現金の全てを自分の銀行内に置いているわけではない。日本銀行に当座預金口座があり、利子もつくためそこに預金している。民間銀行が日銀に国債を売って払ってもらったほとんどのお金は、日本銀行内の口座に入るわけだ。

日銀マネタリーベース

(日本銀行のマネタリーベースの推移)

日銀が2日発表した市中の現金と金融機関の手元資金を示す日銀当座預金残高の合計であるマネタリーベース(資金供給量)の8月末の残高は404兆5290億円となり、9カ月連続で過去最高を更新した。

8月中のマネタリーベースの平均残高は前年比24.2%増の400兆9981億円。マネタリーベースの構成要因ごとの月中平均残高は、金融機関の手元資金を示す当座預金が前年比32.0%増の300兆575億円紙幣は同5.7%増の96兆2598億円、貨幣は同1.1%増の4兆6808億円だった。

日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円増やすペースで、国債を中心とした金融資産の買い入れを続けている。

(2016年9月2日ロイター)

このマネタリーベースというのが、民間銀行が日銀に預けている「日銀当座預金」と市中に出回っているお金である流通現金(「日本銀行券発行高[紙幣]」+「貨幣流通高[硬貨]」)の合計値のことだ。マネタリーベースは400兆円を超えているが、実際に出回っているお金は100兆円であり、ここ数年たいして増加していない。そして、「日銀は、マネタリーベースを年間約80兆円増やすペースで、国債を中心とした金融資産の買い入れを続けている。」こそが、2%物価上昇させるために日銀が行っている量的緩和政策(異次元緩和)なのだ。

つまり、日銀はお金を刷りまくって、国債を買いまくっているように見えるが、実のところその4分の3は日銀の中に眠っている。これこそが、本当にお金の価値を暴落させずに「国民が来年、2%物価上昇するという意識を持ち、消費を促す」作戦だったわけだ。

黒田総裁が日銀総裁になってもう3年半になるが、未だに2%の物価上昇が達成できていない。逆に言うと、これほどマネタリーベースを増やしているのにお金の価値も下がっていないということだ(『日本のインフレ率の推移』参照)。いろいろ手を尽くしてきたが、手詰まり感が出てきたため、「ヘリコプターマネー」という議論が出てきているのだ。

ここからやっと本題に入るが、「日銀が民間銀行から大量の国債を買い入れる異次元金融緩和」と「日銀が政府から国債を直接引き受けるヘリコプターマネー」はやっていることは同じように見えても全く違う

日銀の異次元金融緩和は、ギリギリではあるがまだ市場の原理に従っていると言える。お金の流れを見ると「家計の預貯金→民間銀行→政府」となっている。余ったお金(預貯金)が必要なお金(借金・国債)に回るのは自然だといえる。日銀が購入していても最初のお金の出し手は家計だ。つまり、日本の借金は家計の預貯金で消化されていることになる。既に市場で流通しているお金である家計の預貯金で国債を購入しているのであって、お金を刷りまくって新たなお金が市場に出ているわけではないのだ。だからお金の価値も下がらないのだ。これこそが、日銀が異次元金融緩和で国債を大量購入して、マネタリーベースを増やしたのにも関わらず、物価がほとんど変化していない理由ともいえる。

日銀ヘリマネ

それに対してヘリコプターマネーは、上記の図のように日銀が政府から国債を直接引き受ける。この国債は利子を払う必要がない債券(無利子永久債)で、引き換えに受け取ったお金を政府が自由にばらまくように使えるということだ。

この時点で明らかにまずそうな感じがするだろう。日銀による国債直接引き受け(ヘリコプターマネー)は、家計の預貯金に関係なく使うことができるお金が新たに捻出される。家計の預貯金の裏付けもなしに新たに創出された資金が市中に供給されると、お金の価値は暴落し、物価は確実に高騰する。

当たり前だ。こんな都合の良いことがあるわけがない。この物価高騰は、2%などではなく絶望のハイパーインフレだ。

というのも過去、日本は実際にヘリコプターマネーを行った歴史がある。

1932年、高橋是清蔵相が日銀の国債直接引き受けを行ったときの背景として、世界恐慌の影響があったことは言うまでもない。高橋蔵相も緊急的で一時的な政策であることを理解していた。同時期に日本は国土の4倍ある満州国を成立させる。国を建国するにはお金が必要だ。刷られたお金は軍事費に多く充てられ、実需を伴ったため、日本は世界のどの国よりも早く世界恐慌から脱出することができた。

しかし、緊急的で一時的なヘリコプターマネーと考えていた高橋蔵相は、1936年の二・二六事件によって殺される。翌年1937年には日中戦争、1941年に太平洋戦争に突入し、もうヘリコプターマネーは止めれなくなる。ヘリマネは戦費のかなりを捻出した。太平洋戦争の4年間だけを見ても、政府は国債を含めた政府債務を国民総支出の2年分超にあたる1600億円まで拡大させた。そのうち900億円相当は、日銀、朝鮮銀行、台湾銀行などでお金を刷りまくって手当てされた。さらに戦争末期は、臨時軍事費特別会計と別枠に外資金庫という極秘勘定を通じたヘリマネによって、通貨価値が著しく減じた外地円換算だが5000億円もの戦費が捻出された。

撒いた種は刈り取ることになる。これらのヘリマネは、終戦間際から戦後にかけてハイパーインフレを引き起こした。事実、東京の小売物価は、1945年から51年にかけて100倍となった。しかしこの期間に額面で3倍以上に膨らんだ政府の借金は、実質残高では実に30分の11に激減したため、政府は国債をほとんど帳消しにできた。裏を返せば、物価高騰が人々から購買力を暴力的に奪い、猛烈なインフレ税の形で国民に国債の返済負担を強いたのだ。

敗戦を告げる玉音放送の半年後。1946年2月16日夕刻の渋沢敬三蔵相によるラジオ演説で国民は「国家財政の敗戦」を知らされる。「預金の支払い制限 世帯主三百円」「新日銀券を発行」…。後の日本経済新聞、「日本産業経済」は翌日付でこう報じている。元財務相の藤井裕久氏は「旧円に証書を貼った紙幣を新円代わりにしたことをよく覚えている」。預金封鎖と新円切替えの準備は極秘に進められ、新札を刷る余裕がなかったためだ。

米経済学者のカーメン・ラインハート氏とケネス・ロゴフ氏は金融危機の歴史を研究した大著『国家は破綻する』で事実上の国内債務デフォルト(不履行)の例に終戦直後の日本を挙げる。同著によると45年のインフレ率は568.1%。政府は国民の財産を吸い上げ、インフレで債務の実質価値を目減りさせて、戦時国債で借りたお金をなんとか返した。

70年後の日本。ネット上には「発行残高1000兆円の国債は政府の債務で国民は1000兆円の債権者」「国債のほとんどは国内で消化しているから財政破綻には至らない」といった言説があふれる。戦時国債もほぼ国内で消化され、国民は債権者だったが紙くず同然になってしまった。今の日本の財政状況は異常だ。国際通貨基金(IMF)の最新の統計によると日本の国内総生産(GDP)に対する債務残高は249%でギリシャの178%を大きく上回る。第二次世界対戦中の44年の204%より高く、古今東西を見回しても46年の英国の270%に匹敵し、大戦でもでもないのに史上最悪に近い。

歴史をさらにさかのぼろう。徳川幕府が財政の立て直しに使ったのが小判に含まれる金の量を変える貨幣改鋳の差益だ。265年間続いた江戸時代、金貨改鋳は9回あった。金の含有量をみると、家康が将軍になる直前の1601年に発行された慶長小判の15グラムに対し、最後の改鋳で1860年にできた万延小判はわずか2グラムにすぎない。改鋳は5代将軍綱吉の放漫財政時や飢饉(ききん)で財政が逼迫した幕末に集中した。綱吉時代の勘定奉行、荻原重秀は「貨幣は国家が造る。がれきでもかまわない」との名言を残した。バーナンキ氏が米連邦準備理事会(FRB)議長就任前に「日銀はケチャップを買え」「ヘリコプターからお札をまけ」と語った話と符号する。

見た目の輝きは同じでも改鋳による通過の劣化と背後にある財政難は必ず見抜かれてインフレを招いた。遠い昔の話と笑えるか。『国家は破綻する』の原題は「今回は違う」。過ちはいつもこの言葉の後に繰り返す。「財政と金融の一体化が進むアベノミクスは違う」のだろうか。

(2016年8月14日日本経済新聞朝刊1面抜粋)

さて、歴史から見ても、ヘリマネが猛烈なハイパーインフレを引き起こしてきたことが理解できただろう。むしろ、政府は借金を帳消しにするため、ハイパーインフレを引き起こすのではないだろうかと疑うぐらいだ。

あなたの資産をハイパーインフレから守るためには、現金では価値がなくなってしまうため、株式・不動産・外貨・金(商品)を所有しておく必要がある。基本的にこれらは、ハイパーインフレになっても連動する。例えば3,000万円のマンションを所有していたとして、45年のインフレ率の568.1%になったとしよう。

インフレ不動産

3000万円のマンションの価格は1億7000万円に跳ね上がる。金額だけ見ると嬉しくなるが、全ての物価が5.68倍になっているので意味はない。これがハイパーインフレから資産を守れる方法だ。

株式は会社が倒産すれば紙クズになる。ハイパーインフレが起きたとき、会社も無事では済まない。また外貨を所有しておくのも有効な手段だが、かといって全ての資産を外貨で所有しておくのも、同じく現金という意味ではリスクが高い。バランスよく株式・不動産・外貨・金(商品)を所有するのが望ましいが、そんな資産がない人はどうすべきなのだろうか。

無理してでも、住むための家(居住用不動産)を購入しておかなければならない。

今の日銀が目指すようなゆるやかなインフレなら良いが、ヘリコプターマネーの結末はハイパーインフレだ。

ちなみに、日銀は過去に行った国債の直接引き受け(ヘリコプターマネー)を「日銀の歴史上最大の失敗」と自らが総括している。歴史から教訓を学んだ今の日銀がヘリコプターマネーをするとは考えにくいが、もし、もしも日銀がヘリコプターマネーを行うならどうすべきだろうか。

もちろん、不動産を買うべきだ。

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日銀ヘリコプターマネー

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産仲介を行う。ITを駆使して資産として不動産を高く売却するために、2015年12月に日本で初めて、実際に不動産(マンション)を売却した不動産会社名と売却価格がわかる「iQra-channel(イクラちゃんねる)」をリリースし、売却実績の情報開示を行いつつ、不動産売却に関わる情報も発信している。宅地建物取引士。