マンション買取業者の決算を見てみよう④〜インテリックス〜

インテリックスの2016年5月期の決算が出た。

連結業績ハイライト

インテリックスは、主に仲介業者から中古住宅を仕入れて、リフォームした後に仲介業者を通じて再販売する不動産買取業者だ。再販売を省略して再販というが、買取して再販した戸数で、2015年度の全国3位だった会社だ(「中古住宅買取再販販売戸数ランキング」より)。マンションだけでいうと、全国1位の会社だ。

買取再販1位の不動産屋は?2016年「不動産買取再販戸数ランキング」TOP10

2016.06.28
ビフォーアフター(インテリックス)

メインがマンション買取再販事業(売上の83.7%を占める)のため、不動産屋がマンションの買取再販事業を占う上でも決算が注目されている。ちなみに平成28年6月9日に東証2部から東証1部へと市場変更した。

連結損益の概況

インテリックスの2016年5月期の決算は大幅な増収増益だった。ただ、粗利益率が低いのが気になる。

売上高(=再販価格)から仕入れ価格(=買取価格・諸費用)を引いたものが売上総利益(=粗利)だがインテリックスは12%と同業他社(大京の18%・イーグランドの16.9%)に比べて低い。これはマンションの仕入れ価格が他社より高いのか、リフォーム費用が高いかのどちらかだと考えられる。(大京の場合は仲介部門通じて、分譲したライオンズマンションなどの直接買取に強みがあり、イーグランドは競売物件を仕入れるため純粋には比較はできない。)

販売件数は1,393件(前期比:+226件)、平均販売価格は2,342万円(前期比:+234万円)だった。

物件販売の状況

仕入価格のうち、販売用不動産本体価格の平均は1,609万円だった。

仕入れ

今回の好決算は、ここ数年に進出した大阪・名古屋・札幌・仙台・福岡など地方店が、不動産の価格上昇の追い風を受けて買取再販が好調であったことからもたらしたものだ。一方、すでに価格上昇から横ばいへと変化してきている首都圏での販売は振るわなかった。

販売エリア別

そのため、地方での仕入れを拡大していることがわかる。

仕入れエリア別

中期目標で首都圏と地方店での仕入れ比率を1:1に掲げている。シェア拡大のためにも地方での買取には意欲的だ。

地方エリアへ仕入れ拡充

ちなみに仕入れの原資となるお金は主に金融機関からの借り入れとのことだ。

有利子負債

さて、今年の不動産買取市況はどうなるのか、インテリックスはどのように見ているのか、注目の2017年5月期の決算予想だったが、予想は増収減益だった。

連結業績予想の概要

正直、この決算は厳しいと見るべきだ。厳しいというよりも、好調で右上がりだった不動産市場のトレンドが変わり、横ばいと見ているといえそうだ。

販売件数予想は1,670件(前期比:+277件)、平均販売価格予想は2,260万円(前期比:−75万円)としており、販売件数の増加もあって売上は増加の予想だ。

連結業績予想の内訳

問題は営業利益だ。売上高(=再販価格)から仕入れ価格(=買取価格・諸費用)を引いたものが売上総利益(=粗利)だが、そこから人件費・広告費を差し引いた額が営業利益で、「物件を買取って再販する」という本業でいくら稼いだかがわかる。

来期の見通し

簡単に言うと、コストの増大をカバーできほどの売上は見込めないということだ。仕入れた物件よりも不動産価格の上昇の勢いの方が強ければ、労せず売れる。東京23区を中心とする首都圏の不動産の価格上昇が止まり、停滞気味な状況で、相対的に割安な主要地方都市に資金が流れ込み、今年の上半期は上昇していた。その間に東京が再度上がり始めれば、資金の好循環につながったのだが、いかんせん東京都区内の不動産は横ばい状態だ。そのため、地方の不動産の価格上昇がいつまでも続くわけもなくじきに止まるだろう。この決算からは、インテリックスも昨年の不動産市況と同じような好況が続くとは見ていないと捉えることができる。

実際、株式市場もインテリックスの決算をネガティブと捉え、決算の翌日、大幅に下落した。しかも日経平均株価は今週(11~15日)、合計で1390円上昇し、週間ベースでは1997年11月以来およそ19年ぶりの大幅高と地合は良かった中で、インテリックスは逆行安だった。市場の動きは決算への失望感をあらわしている。

インテリックス株価

他にも気になる点として、事業期間(=仕入れをしてから再販売し、現金を回収するまでの期間)が伸びていることだ。価格上昇時期において再販期間が伸びるのは一般的でもあるのだが、それでもこの今の現状は、「物件を安く仕入れることがいかに難しいか」ということと、エンド(=一般消費者)にとって「購入意欲が高まるような目をひく物件が少なくなってきている、もしくは即決できるような物件価格ではなくなりつつある(=不動産市況の変化)」とも置き換えることができる。

さらに心配なのが、この下の図に書かれている「保有期間180日長期滞留物件を除く」だ。

事業期間

保有期間180日長期滞留物件とは簡単にいうと、もう半年も売れていない在庫物件だのことだ。たな卸資産の内訳を見ると622件ある。このうち、どれぐらいが保有期間180日長期滞留物件かということは開示されていないが、在庫物件はコストしか生まない(金利・管理費・修繕積立金・固定資産税等)。心配されるのは、「このどうにもならない、もはや戦略的ではなく、運でしか売れないような物件を抱えている割合が多いのではないか」ということだ。買取業者の宿命なのだが、新たな地域に進出する場合(インテリックスの場合、大阪や名古屋などの地方に進出したとき)、マンション買取全国NO.1のインテリックスが、「東京から新たに事務所を開設しました。上場しているインテリックスです。マンションを(安く)買わせてください。」と言ったところで、中小の会社が多い地方の不動産業界では知名度が低く(というより単純に知らない)「じゃあどれぐらい(高く)買ってくれるの?」となることがほとんどだ。最初にある程度、「インテリックスは本気で買う」と興味を引いてもらうにも、ある程度の損失覚悟の金額で購入することも多分にある。当然のことだがこれらの買取再販物件は、再販売の金額が高すぎて(仕入れコストも高すぎて)売れないケースが多く、在庫物件になってしまう。

インテリックス地方店開設時期

右の表は、インテリックスの地方店の開設時期を示したものだが、開設時期は良い時期だ。アベノミクスによる不動産価格の上昇が本格的に地方に波及する前に開設できているからだ。それだけに、この価格上昇している時期に高く買いすぎた在庫物件が処分できなければ厳しいといえよう。

不動産が盛り上がっていると聞いて、また歴史的低金利で資金調達しやすい環境でもあるため、不動産買取に参入する会社がアベノミクス景気以降増えており、競合相手が増えているのも事実だ。そうなると、安く仕入れることがますます難しい。客観的に見て、インテリックスのリノベーションのアフターサービス保証は業界でも一歩進んでいるが、それを消費者に強く浸透させれているかというとこれも途上だ。インテリックスが直接売るならともかく、ほとんどの再販売物件を直接消費者に売っているのは、買取物件を仲介してくれた不動産屋であるため、このあたりの部分が弱いのも否めない。

インテリックスのリノベーションのアフターサービス保証について詳しくは、インテリックスのHPを見てほしい。

連結貸借対照表

アセットシェアリングなどの新たな事業にも取り組んでいるが、マンションの買取だけでなく、戸建買取再販事業の参入を考えているようだ。

戸建参入

マンションと戸建では、扱うスキルにも大きな差があり、リスクも大きくなる。スキルが必要なためマンション買取よりも幾分か参入障壁は高い。リスクも高いが、成功すれば利益も大きい。「買取再販といえどマンションと戸建は大きく違い、注力するために営業利益が減少するのは仕方がなく、未来への投資だ」とこの部分の説明に力を入れたらおもしろかったのかもしれない。単純に「人件費上昇等のため営業利益は下がります」などの理由だけでは、ネガティブに捉えられ、株価が下がるケースが多い。

まとめ

以下簡単に決算内容をまとめた。

  • 2016年5月期の販売件数は1,393件、平均販売価格は2,342万円、粗利率は12%
  • 仕入価格のうち、販売用不動産本体価格の平均は1,609万円
  • 地方での買取再販事業が好調
  • 買取再販期間は117日(保有期間180日長期滞留物件を除く)
  • 今期は増収減益予想
  • 今期の年間販売件数予想は1,670件、平均販売価格予想は2,260万円、粗利率は12.2%

(参考資料)

中古マンション市場の動向 (成約価格) 中古マンション市場の動向 (前年比) 中古マンション市場の動向 (実数推移) 中古マンション新築マンション逆転

(この記事で掲載されている情報は、株式会社インテリックス『決算短信』『決算説明資料』からの情報です。この記事を通じて得られる情報は、利用者の私的利用目的に限り提供されるものであって、特定の株式・不動産等についての勧誘ではなく、また、当社は、利用者に対し何らかの投資・売買行動を勧誘するものではありません。)

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産仲介を行う。ITを駆使して資産として不動産を高く売却するために、2015年12月に日本で初めて、実際に不動産(マンション)を売却した不動産会社名と売却価格がわかる「iQra-channel(イクラちゃんねる)」をリリースし、売却実績の情報開示を行いつつ、不動産売却に関わる情報も発信している。宅地建物取引士。