マイナス金利で本当に不動産は盛り上がるのか?

マイナス金利とREITと不動産

3月11日の日経新聞17面に、外国人がこの2月に過去2番目に多くREITを買い越した記事が掲載されていた。

海外投資家の不動産投資信託(REIT)買いが目立つ。東京証券取引所が10日発表した統計によると2月は1167億円の買い越しだった過去2番目の大きさ。[…]海外勢の買い越しは3カ月ぶりで、単月の買越額として2007年2月(1398億円)以来の大きさだ。[…]10日時点で東証REIT指数は昨年末から6%上昇した反面、日経平均株価は11%下落した。東証によると、海外投資家は3月第1週まで日本株を9週連続で売り越している。マイナス金利導入を受けた「株売り・REIT買い」が鮮明だ。

(日本経済新聞2016年3月11日(金)朝刊17面より抜粋)

マイナス金利の導入がその理由であることは明白だが、どのメディアも「マイナス金利=不動産に恩恵」みたいな伝え方をしているので、この記事を見て「やっぱり不動産が盛り上がっているんだな」と確かに思った。

しかし、本当に「マイナス金利=REITの購入=不動産の盛り上がり」につながるのだろうか?

気になったので調べてみることにした。

まず、実際にアベノミクス(2012年12月26日第2次安倍内閣発足)開始から、外国人の売買状況を調べてみた。プラスが買い越し、マイナスが売り越しをあらわしている。

東証REIT外国人投資家売買状況

これを見ると今回の外国人の買い越し額が尋常ではないことがわかる。この買い越しはまるで「絶対にREITの価格が上がる」と確信を得ているようだ。

次に同じ期間の東証REIT指数の推移を調べてみた。

東証REIT指数-マイナス金利週足チャート

この2つのチャートを比較すると面白いことがわかる。上記の東証REITのチャートを見ると、「不動産に関わるイベント」があると上昇していることがわかる。

それに対して、外国人は東京オリンピックや消費税10%延期については大して大きな反応を示していないが、日本銀行による金融緩和(いわゆる黒田バズーカ)に強く反応している。

恐らくこの違いは、日本人が「REIT=不動産」と大きくひとまとめにして購入しているのに対し、外国人は「不動産ではなく、REITに関わるイベント(日銀によるREIT購入)」のみ購入しているからだと考えられる。外国人と言っても、日本のREIT(不動産投資信託)に投資しているぐらいだから、プロもしくはプロ級の集団と考えても良い。ここからわかることは「REIT=不動産」ではないということだ。少なくとも外国人はそのように見ていない。REITは、REITという不動産の一つの商品ということだ。今回のマイナス金利での買い越し額が、過去の黒田バズーカよりも大きいということは、それほどマイナス金利がもたらす恩恵がREITにはあるということになる。

ご存知の方も多いと思うが、REITとは何かここでもう一度整理しよう。

REITとは?

REIT画像byいくらチャンネルREIT(リート)とは、Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略称で、投資家から資金を集めて不動産を購入し、得た賃料収入等を元に投資家に分配する金融商品のことだ。

1人で不動産を購入し、賃貸収入を得ようとすると初期投資(不動産購入)に何百万、何千万かかる。そして、不動産を現金化するために売却する場合、いつ・そしていくらで売れるかわからない。

REITは、賃貸収入を分配するのはもちろんのこと、多数の投資家と共同で不動産を購入することにより1口の投資金額が抑えれるだけでなく、売りたいときは市場の価格でいつでも売ることができる。

加えてREITには以下の特徴がある。

  1. 利益の90%超を分配すれば法人税が課税されない。
  2. 不動産の開発は行わず賃貸事業に特化している。

REITは法律上、物件から上がった収益の90%以上を分配金に回すことで、利益に法人税が掛からない。つまり利益のほとんどを投資家に分配しており、内部留保(会社の貯金)というものは基本的に存在しない。会社の貯金がないため、REITが新たな不動産を取得するためには、投資口を新たに発行する増資を行うか、銀行からの借り入れを行うかのどちらかになる。

利子の支払いはコストなので、金利が下落することでREITが支払う利子負担が軽減し、結果的に収益が増大することになる。収益力が増大することによって、REITの分配金が増加し、REITの魅力が増大するので、REITの価格上昇圧力が働くというわけだ。

つまり、銀行からの借入比率が高いREITでは、マイナス金利によって金利が下がれば借入の負担が軽くなるということだ。

先ほど、【この買い越しはまるで「絶対にREITの価格が上がる」と確信を得ているようだ。】と言ったが、確信があるということは、実例があるからに違いない。欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利を導入したのは2014年6月だ。マイナス金利を日本より先に導入したヨーロッパのREITを見てみよう。ちなみに日本のREITは、時価総額の規模で米国、豪州、フランスに次ぐ規模になっている。そのため、ここではヨーロッパのREIT代表としてフランスのREIT(S&P先進国REIT指数[配当込み、現地通貨ベース])を見てみる。

ヨーロッパREIT(仏)-マイナス金利週足チャート

やはりマイナス金利導入後、REIT価格が上昇している。

欧州REIT市場の見通し抜粋

これは2016年3月3日付けの『2月の欧州リート市場と欧州通貨の動き』(NNインベストメント・パートナーズ)からの抜粋だが、賃貸料収入が小幅な増加にも関わらず支払い金利の低下により配当金が増加したと書かれている。ただでさえ金利が下がっている中、REITの相対的に高い配当利回りは、長期化する低成長・低インフレ環境において大きな魅力となってきている。

このようにヨーロッパでマイナス金利の導入してREITが上昇した実例から日本のREITも上昇すると見込まれて購入したのは間違いないだろう。これは銀行借入れの比率が多いというREITの特徴から投資されたものであり、不動産の地価上昇や賃料上昇を見込んで購入されたものではない。それは日本の不動産株がマイナス金利導入後でもそれほど上昇していないのをみてもわかる。

つまり、残念だが「マイナス金利=REITの購入=不動産の盛り上がり」ではなく、「マイナス金利=REITの購入=REITの盛り上がり」と言えよう。

ここからは付け加えになるが、不動産が盛り上がる理由としてよく言われるのが「デンマークではマイナス金利の影響で、住宅ローン金利がマイナスになり、不動産取引も活発になり、価格が上昇しバブっている」という話だ。

デンマークマイナス金利

これはデンマークの住宅ローン担保債権利回りと手数料のチャートだ。デンマークでは確かに短期の住宅ローン金利も低下しているが、手数料を加えると平均ではプラス圏にある。住宅ローン金利そのものがマイナスとなっているのは限定的な事例のようだ。それにデンマークではリーマン・ショック前の金利は5%を超えており、今が不動産の購入に最適のタイミングと言われればそうかと思えるが、日本の住宅ローンの低金利は約20年ぐらい続いている。「今が住宅ローン金利の底で、これ以上はもう下がらないでしょう」と言い続けて20年だ。ここまできてしまった感がある。つまり、マイナス金利だからと言ってことさら不動産購入のタイミングとなって需要が喚起されるということは低いと思われる。加えて日本もアベノミクス以降、不動産価格が上昇し一部ではバブルの兆しも見えている。もう既に不動産取引が活発になり、2、3年前より価格が上昇しているのだ。マイナス金利で今から不動産が盛り上がるというより、住宅ローン金利の低下で(20年超)継続して購入の下支えとなっていると言ったほうがよいだろう。

短期的に不動産を盛り上げるためには、住宅ローン審査を緩和して今まで購入できなかった層に購入してもらうことが必要だと考える。地方銀行はマイナス金利導入を受けて、日本銀行にお金を預けることができず、低金利で国債で運用していくこともできず、住宅ローンの借り換えで大手銀行に顧客を奪われて大きなダメージを受けている。どちらにしても巨大な資本力のある大手銀行と同じような審査基準では地方銀行は生き残っていけない。地方銀行がどのような手を打つのか、それが不動産に関わってくるのかを注目している。

 

マイナス金利とREITと不動産

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産仲介を行う。ITを駆使して資産として不動産を高く売却するために、2015年12月に日本で初めて、実際に不動産(マンション)を売却した不動産会社名と売却価格がわかる「iQra-channel(イクラちゃんねる)」をリリースし、売却実績の情報開示を行いつつ、不動産売却に関わる情報も発信している。宅地建物取引士。