トランプが大統領になったら、日本の不動産は上がるの?下がるの?

トランプが大統領になったら日本の不動産はどうなるのか

何かと話題のトランプ氏が大統領になる可能性が出てきた。

米大統領選でドナルド・トランプ氏の共和党候補指名が確実になり、ウォール街など市場参加者も「トランプ大統領」の可能性に身構え始めた。一部には、低金利の長期化や積極財政が株価押上げにつながるとの見方も浮上している。だが、財政の悪化や企業の国際展開への悪影響が市場の混乱をもたらすとの警戒感は強い。

(2016年5月10日『日本経済新聞』朝刊7面より抜粋)

発言が物議を醸しているトランプ氏だが、対立候補を打ち破り、共和党の候補指名が確実となった。「まさかこんな人が大統領になるわけがない」と思っていた人も、誰が共和党の大統領候補としてふさわしいかという投票において、アメリカ国民が今のところトランプ氏に票を入れているという事実を否定することはできない。トランプ氏が実際に大統領になる可能性が出てきたわけだが、破天荒な人物だけにどのような政策を考えているのかいまだに予想できていない。

わからないことだらけだが、本日時点まででわかっているトランプ氏の経歴や発言から判断して、「もしトランプ氏が大統領になったら、日本の不動産はどうなるのか」という点に絞ってここでは説明することにする。

 

トランプ氏が大統領になったらどうなるの?

結論を先に書いておく。日本の不動産は下がるだろう

なぜなら円高ドル安になる可能性が高いからだ。

「低金利・大型減税・規制緩和・インフラ整備」。トランプ氏が最近、米メディアなどで発言した経済政策に関するキーワードを並べると、景気刺激を再重視する姿勢が鮮明になる。

とくに強調しているのは低金利継続の重要性だ。不動産事業での経験から自らを「借金王」と称し、低金利による政府債務の管理を訴える。慎重に利上げの機をうかがう米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の再任を認めないと言及したのは、この文脈だ。

大胆な規制緩和に加え、インフラ整備や大幅な法人減税も唱えている。低金利を長引かせつつ財政政策をフル回転させる構図が浮かぶ。

(2016年5月10日『日本経済新聞』朝刊7面より抜粋)

トランプタワードナルド・ジョン・トランプ氏は、トランプ・タワーを代表とする数多くの不動産を建設し、アメリカの不動産王として知られている。1946年6月14日生まれの69歳で、もうすぐ70歳を迎える。ニューヨーク生まれの生粋のニューヨーカーであり、ニューヨークの不動産デベロッパー(開発業者のことで、大規模な宅地造成やリゾート開発、再開発事業、オフィスビルの建設やマンション分譲といった不動産開発事業を行う)であった父の後を引き継いだ。

1970年代からビル建設やホテル・カジノ経営を推し進め、1980年代には、レーガン政権下における景況感の回復を背景に大成功を収めたが、88年から89年にかけて巨額の債務を抱え、 91年にカジノが、92年にホテルが倒産した。 94年にこれらの資産を売って借金を減らし、危機を切り抜けると90年代後半から好景気を背景に復活を成し遂げた。しかし、2007年後半からのサブプライム問題以降の不況を受け、トランプ・エンターテイメント・リゾーツ社が、2009年2月17日に連邦倒産法第11章(チャプターイレブン)の適用を申請している。

このような経験から、自らを「借金王」と呼んでいるわけだが、低金利継続の重要性を強調しているのは身をもっての経験からだろう。不動産開発業者には常に「借金」がつきまとう。例えばマンションを開発するとしよう。広大な敷地を仕入れ、整備・建設そして完成後に販売して売れたらやっと資金が回収できる。その期間中、ばく大な資金が何年にも渡って必要になる。それを複数のプロジェクトで同時に進めようとしたら、とてもじゃないが自己資金だけでは厳しい。つまり「借金」をする必要があるわけだが、借金をすると金利を支払わなければならない。借りてすぐに返すのであればそれほど気にならないが、何年にもわたると金利の大小がボディーブローのように効いてくる。

トランプ氏は「Make America great Again (偉大なアメリカを再び)」を掲げているが、アメリカ合衆国を「アメリカ株式会社」という会社に、大統領を「社長」に置き換えているのではないだろうか。大型減税やインフラ整備など景気を刺激して良くするためには「お金」が必要だ。加えて、不動産開発のように、すぐに効果が出るわけではなく時間がかかる。だが、アメリカにはそんなお金の余裕はないので、「借金」をしなければならない。借金は低金利であればあるほど、アメリカ株式会社にとっては良い。

アメリカの政策金利(FF金利)推移チャート

アメリカはリーマン・ショック以降、FRB(連邦準備制度理事会・日本でいう日本銀行)が量的緩和政策を行った。量的緩和政策とは、金利の引き下げではなく、中央銀行の当座預金残高量を拡大させることによって金融緩和を行う金融政策のことだ。平時であれば金利を下げれば、お金を借りる人が増え、経済刺激効果が出て景気は回復するが、深刻なデフレーション(需要の減少→売れないので物価を下げる)に陥ってしまうと、政策金利をゼロにしても十分な景気刺激効果を発揮することができない。そこでゼロ金利の状態で、市場にさらに資金を供給するというのが量的緩和政策である。

アメリカ10年国債利回り

アメリカの量的緩和政策は、QE1(量的緩和第1弾:2008年11月〜2010年6月、計1兆7250億ドル)、QE2(量的緩和第2弾:2010年11月〜2011年6月、6000億ドル)、QE3(量的緩和第3弾:2012年9月〜2014年10月、当初月額400億ドル)のことを指す。量的緩和というのは、FRBが主に金融機関が保有しているアメリカ国債を買い入れることで行われる。FRBがアメリカ国債を買い取ると、代金を金融機関に支払わないければならない。その代金は、金融機関がFRBに置いている当座預金口座に払い込まれていく。このようにして金融機関(市中銀行)に大量に資金を供給して、現金が増えた銀行が企業に融資を行いやすくさせようというのが量的緩和の狙いだ。今の日銀の黒田総裁が行っていることと同じだ。

量的緩和の図大量のアメリカ国債を高値でも買いたいとFRBが宣言しているわけだ。当然アメリカ国債の値段は上がる。例えば、年間1ドルの利子がつく10ドルの国債が、20ドルに値段が上がったとしよう。国債というのは国の借金で、10年国債というのは10年間利子を払い、10年後に元本を返しますというものだ。10ドルの国債に1ドルの利子ということは、この国債の年利回りは10%ということになる。それが別に20ドルに値段が上がっても、利子の1ドルは変わらない。20ドルの国債に1ドルの利子ということは、この国債の年利回りは5%ということになる。このように、国債の価格が上昇すれば、利回りは減少する

アメリカ株式会社の側に立つと、支払う利子が減るので返済が楽になり、さらに借金していろいろな事業に回すことができる。

これらは「100年に一度の大恐慌(になる)」といわれたリーマン・ショックに対して、大恐慌にならないように実施されてきた異常な政策であった。今のアメリカはその危機を脱したので、正常に戻そう(出口戦略)としている。実際にアメリカは量的緩和政策をすでに終え、昨年末に政策金利を引き上げた。正常に戻すということは、今よりも金利を上げるということだ。だから、この旗振り役となっているFRBのイエレン議長の再任をトランプ氏は認めないと言っているのだ。

もう一つ理由がある。「政策金利を下げること&量的緩和政策を行う」と、通貨が他の国の通貨に対して安くなるのが一般的だ。金利が下がるとその国の通貨でお金を預けるメリットは小さくなるので、「もういらない」と売ってしまうかもしれない。また、量的緩和政策を行うと、通貨をどんどん市場に供給するということになる。例えばアメリカに今まで100枚の100ドル札しかなかったのが、200枚に増えたらどうなるだろうか。ドルの価値は下がってしまう。この売り圧力がつまり、ドル安になるということだ。

米ドル・円チャート 10年

上記のチャートをみればそのことがよくわかる。アメリカの量的緩和政策(QE1・QE2・QE3)により、円高・ドル安になり、アメリカの出口戦略と同時に始まった日本の量的緩和政策(黒田バズーカ第1弾・黒田バズーカ第2弾)により円安・ドル高になっている。

不動産価格指数(国土交通省)

これは、国土交通省が発表している全国不動産価格指数(住宅)のチャートだが、3ヶ月ごとに発表されるので、一番新しい分で2016年1月までだ。今の不動産高は、円安・ドル高に連動し、外国人投資家が日本の不動産を購入することで支えている。では「なぜ、外国人投資家が購入しているか?」という疑問が出てくるだろうが、それをここで説明すると長くなるので、詳しくは『台湾人がなぜ日本の不動産を「爆買い」していたのか』を参照してほしい。タイトルは台湾人だが、「中国人の爆買い」に置き換えても良い。結論をいうと、円安から円高に変わると、需要が減少することで売り圧力が強まり、日本の不動産は下落するだろう。

台湾人がなぜ日本の不動産を「爆買い」していたのか

2016.04.07
経常収支(アメリカ・日本)

これは、アメリカと日本の経常収支のチャートだ。経常収支とは、海外とのお金のやりとりを示す統計で、入ったお金が多ければ黒字、出たお金が多ければ赤字となる。他国(日本株式会社)と比較する上で、アメリカ株式会社がいくら儲かっているのか決算収支と置き換えても良い。

日本は、東日本大震災により原子力発電所の稼働がストップしたことで、火力発電所の燃料となる原油・天然ガスの輸入が増大し、大幅な貿易赤字となっていた。そのため経常収支も急減したが、昨年原油の価格が急落したことにより、貿易赤字が急激に減少した結果、経常収支が上向いている。

財務省が12日に発表した2015年度の国際収支速報によると、輸出額から輸入額を引いた貿易収支は6299億円の黒字となり、5年ぶりに黒字に転換した。原油安が寄与した。日本が海外との貿易や金融取引でどれだけ稼いだかを示す経常収支は17兆9725億円の黒字だった。黒字幅は前年度の約2倍で、年度の終盤に東日本大震災のあった10年度以来、5年ぶりの大きさまで戻った。

(2016年5月12日『日本経済新聞』夕刊1面より抜粋)

一方、アメリカは量的緩和政策のドル安により、輸出増大・輸入減少をもたらしたが、終了するとまたもや経常収支が悪化している。今、日本では「円高!円高!」と騒いでいるが、これを見ると、現状で儲かっている日本株式会社が、さらに円安に誘導して利益を上げようとしていると映ってしまうだろう。果たしてアメリカ株式会社の社長であるトランプ氏は、日本の円安を許してくれるだろうか。

Abe from Japan, who’s a killer, he’s great. He’s already knocking the hell out of the yen, by the way, which makes it even more impossible for us to compete. And he’s wining and dining her (=Caroline Kennedy), and I watch it all the time – wining and dining and just doing a number on our country.

日本のアベ、(アメリカ経済の)殺人者だが、やつはすごい。
地獄の円安で、アメリカが日本と競争できないようにした。
さらに、安倍は(駐日米大使の)キャロライン・ケネディを接待漬けにして(言うことを聞かせたことで)、アメリカに打撃を与えた。

(2015年7月にトランプがアリゾナで演説を行った時の発言)

And he said, I bought Komatsu tractors because nobody could compete with the price because of the fact… because of the dollar. It has nothing to do with the machinery, it is just that they have devalued the yen to such an extent that he said, he can’t compete.

(友人がキャタピラー社ではなくコマツのトラクターを買った話をして)
友人がコマツのトラクターを買ったのは、円安ドル高のせいでアメリカは日本と価格競争ができないからだ。
機械の性能差ではない、このレベルの円安誘導では競争は不可能だ。

(2015年9月にエコノミストのインタビューでのトランプの発言)

I was in Los Angeles two weeks ago, I’d see ships coming in from Japan — millions and millions of cars coming in from Japan, all the time, constantly. And we give them — what do we give them? We give them beef, and they don’t want it. And it’s just so imbalanced and so unfair.

日本から、何百万台もの車が、ひっきりなしに輸入されてくる。
アメリカは、日本に何か買わせたか?
牛肉を輸出した、だが日本は買いたがらない。
これは貿易不均衡だ。

(2015年8月にトランプがテレビ番組「Morning Joe」に出演した時の発言)

残念だが、日本が円安に誘導することについて賛成してくれそうにない

トランプ氏の政策的主張は、共和党の主流派とは大きく異なっており、敵対する勢力からは、「人気取りの大衆迎合主義(ポピュリズム)である」と揶揄されることも多い。これには、トランプ氏が1987年以前と2001年~2009年にかけては民主党員であり、民主党のビル・クリントンとヒラリー・クリントンのクリントン夫婦に過去10回に亘って献金を行っており、生粋の共和党員とみなされていないことも関係しているだろう。

奔放なトランプ氏の発言を、ポピュリズムとして捉えるのではなく、アメリカ株式会社の社長としての発言と置き換えてみた方がしっくりくる。社長は、自分の会社を立て直すために必要のないものを切り、利益を出すために仕事をつくる。

発言1:「(シリアで空爆を続けるロシア軍について)ロシアはアメリカに敬意を払っていないが、もしイスラム国を攻撃したいのならロシアに好きにさせればいい。イスラム国を排除させるのだ。我々もイスラム国を排除したいのだから気にすることなどない。」と発言。

発言2:「(サウジアラビアについては)守りたいが、彼らはいくら負担してくれるんだ?」と発言。

発言3:「(社会保障の財源について)狂気じみた北朝鮮が何かするたびに米国は艦船を派遣するが、事実上、米国が得るものは何もない。」と発言。

発言4:「(海外に基地を有することで米国は利益を得ているかという問いについて)個人的にはそう思わない。米国はかつての地位にはないと思う。米国は大変強く、大変豊かな国だったと思うが、今は貧しい。」と発言。

発言5:「中国、メキシコ、日本、その他多くの場所から、仕事を取り返す。私は我々の仕事を取り返し、我々にお金を取り返す。」と発言。

どうだろうか。実際にトランプ氏は自らの外交方針について「私は孤立主義者ではないが、’’米国が第一’’だ(I’m “America First.” )」「我々はあらゆる国と親しくするが、いかなる国に対しても付け入る隙を与えない」と要約しているが、納得できる。

もちろん、これからトランプ氏が大統領選に勝つために大きく舵取りを変える可能性もある。ただ、トランプ氏の「ひととなり」が変わることはないだろう。

なにかと暴言の多いトランプ氏だが、良いことも言っているので最後になるが紹介しておく。今のトランプ氏にピッタリだ。

Luck does not come around often. So when it does, be sure to take full advantage of it, even if it means working very hard. When luck is on your side it is not the time to be modest or timid. It is the time to go for the biggest success you can possibly achieve. That is the true meaning of thinking big.

幸運はそうしばしばやって来ない。来た時は必ず、その機を完全に活かせ、たとえ死ぬほど働くことになろうとも。
幸運が来たら、謙遜したり臆してる場合じゃない。最大の成功を掴みに行く時なのだ。
これが、「大きなことを考える」ことの本当の意味だ。

 

トランプが大統領になったら日本の不動産はどうなるのか

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産仲介を行う。ITを駆使して資産として不動産を高く売却するために、2015年12月に日本で初めて、実際に不動産(マンション)を売却した不動産会社名と売却価格がわかる「iQra-channel(イクラちゃんねる)」をリリースし、売却実績の情報開示を行いつつ、不動産売却に関わる情報も発信している。宅地建物取引士。