ソニー不動産とヤフーが囲い込みしているのは本当に消費者利益なのか?

ソニー不動産×YAHOO!不動産×おうちダイレクト

「不動産業界に新たな風を吹かせる」として注目されていたソニー不動産の3期目決算は(平成28年4月1日〜平成29年3月31日)、売上高が20億円で9千万円の営業赤字だったようだ。

・第1期目(平成26年度)→当期純利益▲3億1400万円
・第2期目(平成27年度)→売上高11億6800万円、営業利益▲4億2800万円、当期純利益▲4億8500万円
・第3期目(平成28年度)→売上高20億円、営業利益▲9000万円
・第4期目(平成29年度)→(予想)売上高27億7000万円、営業利益1億5000万円
※ソニー不動産は2014(平成26)年4月1日設立、予想は日刊工業新聞より掲載

今期営業黒字転換めざす ソニー不動産

ソニー不動産(東京・中央)は4日、2018年3月期に営業黒字に転換させ、営業利益率5%をめざすと明らかにした。同社はヤフーと組み、ネット上で個人間などで不動産を取引できるサービス「おうちダイレクト」を展開する。買い主側のサポート役として全国の仲介企業の参画を増やすなど利便性を高める。ヤフーで物件を検索した時にはおうちダイレクトの紹介ページが優先的に表示されるようにする

ソニー不動産は2014年の設立で、ソニーやヤフーが出資している。17年3月期の売上高は20億円で9千万円の営業赤字だった。西山和良社長は「早期の上場をめざす」としている。

(2017年7月5日日本経済新聞朝刊14面抜粋)

ソニー不動産取締役(おうちダイレクト事業責任者)の喜志武弘氏によると、2016(平成28)年度の下半期は黒字化を達成しており、2017(平成29)年度は通期黒字化達成を目指しているとのことだ。

売上高20億円というと、仲介ランキング22位の小田急不動産の手数料収入と同じぐらいだ。

売買1位の大手不動産屋は?2017年「売買仲介実績ランキング」TOP10

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2017.07.03
会社名 手数料収入 取扱件数 取扱高 店舗数
小田急不動産 20億円 1289件 550億円 20

ただし、小田急不動産は純粋に売買仲介手数料収入であり、ソニー不動産の売上高はリフォーム収益や賃貸手数料なども含まれているためもっと売買仲介手数料収入は低いと考えられる。

当初掲げていた「営業の本格開始から3年後に株式を上場、5年後に売上高を500億円に増やすことを目指している」がいかに難しいか痛感しているのではないだろうか。売買仲介手数料で500億円となれば業界第3位の東急リバブルと同規模ぐらいになる。

会社名 手数料収入 取扱件数 取扱高 店舗数
東急リバブル 518億円 23278件 1兆1003億円 168

現状、ソニー不動産の店舗は「銀座オフィス」「銀座第2オフィス」「銀座第3オフィス」「渋谷青山オフィス」「池袋オフィス」の5店舗だ。

不動産テックは、一様に「ITの力」により手数料を下げるだの、店舗展開する必要がないだのというが、不動産はその地域によって風習や特性が異なる。何よりも、相続や離婚だけでなく隣地との揉め事にITやAIはほとんど役に立たず、現時点では人を介さなければならないビジネスモデルでもあるため、地域に店舗を置かずスケールアップするのは難しいと思う(揉めている不動産だからこそ、きちんと糸をほどけば安く仕入れることができて大きな利益が出るというのもある)。

ソニー不動産は、得意のIT技術を駆使し不動産流通革命に挑み、既存の不動産業界の打破を目標に以下の2点を掲げている。

  1. 不動産の売り手もしくは買い手のどちらかに専属の担当者をつけるエージェント(代理人)制度の導入
  2. 不動産仲介手数料を「掛かった分だけ」にする(「率」から「額」への合理化)

1番はともかく2番はどうだろうか。そもそも、売買仲介という仕事は手数料収入しかないのに、それを下げに行くのは自らの首を閉めるのと同様だ。むしろ、ITの力により買い手を効率よく見つけることができるなどして、相場価格よりも高く売却できる結果、正規手数料をきちんといただくビジネスモデルの方が良いのではないだろうか。

例えば、3000万円でマンション売却できた場合、正規手数料だと差し引き2904万円となり、半額だと2952万円となる。それならば「市場価格は3000万円ですが、3100万円で売却します(できます)から正規手数料ください」と言う方が本当の意味でユーザーファーストではないだろうか。

不動産テックの手数料削減問題

それでなくても、ソニー不動産は両手仲介をしないため、片手手数料しか入らないのだ。相場価格が3000万円のところ3500万円で売却するのはかなり難しいが、3100万円であれば誤差も含めて可能性はぐっと高くなる。その誤差の範囲を正確にビッグデータからIT(AI)の力を利用して売却成功のパターンを増やして実績させれると、ユーザーも納得するし、手取りも増えて喜ばれるし、ソニー不動産の収益も上がる。

別にソニー不動産のやり方自体を批判したいわけではない。以前にもソニー不動産の記事を書いたが、そのことは同様だ。古い慣習から進化の見られない不動産業界に一石を投じたソニー不動産は大きな注目を浴びているし、見ている。

両手取引は本当に悪なのか?今のソニー不動産の問題点を考えてみた

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2016.08.21

しかし、おうちダイレクト(のやり方)はさすがにどうなのだろうかと思う。

おうちダイレクトとは、2015年11月にヤフーと組んで、マンションの所有者と購入検討者を、従来よりもダイレクトに結びつける不動産売買プラットフォームだ。その少し前、2015年7月にソニー不動産はヤフーと資本業務提携を締結している。ヤフーはソニー不動産の第三者割当増資を引き受けて18億円を出資し、ソニー不動産への出資比率は、ソニーが約56.3%、Yahoo! JAPANが約43.7%となった。ソニー不動産はいわば、ソニーとヤフーの共同経営のようになっており、おうちダイレクトも共同運営している。

おうちダイレクトは不動産屋を通さず、個人間での中古住宅の売買取引(CtoC)を目指すものだが、取引が成立した場合、マンション所有者の売却仲介手数料は無料、マンション購入者はソニー不動産に仲介手数料(契約関係も全てソニー不動産が行う)として成約価格の3%+6万円+消費税を支払う。

「個人の売主が自分で自由に価格を設定して、Yahoo!不動産に物件情報を無料で掲載でき、手数料無料で売却できる」というのが売りではあるが、実は物件の見学が決まった場合に、売主は必ずソニー不動産と媒介契約を結ばなければならない。このときの契約の種類は、売主が複数の不動産事業者に媒介を依頼できる「一般媒介契約」であるものの、ヤフーとソニー不動産はおうちダイレクト以外での売却活動を利用規約で認めていない。

一般媒介はどのような物件の場合に選ぶべきなのか

2016.10.06

一般媒介であればレインズに登録しなくてよい(してもよい)。レインズに登録すれば、他の会社から購入客をしてもらえる可能性がある。しかし、ソニー不動産はレインズ登録をしていなく、していないということは、他の会社から全く干渉を受けず、買い手数料を必ずソニー不動産に落とすようにいわば「囲い込み」をしている。

不動産売却をスタートする前にレインズについて必ず知っておこう!

2016.08.17

4.売却希望物件の登録

(2) 売却希望登録を行おうとする者は、各場合に応じて、以下の条件をすべて満たすことが必要です。

① オーナー登録者が事前掲載物件の所有者である場合

ウ 売却希望登録を行おうとする者が個人の場合は、指定仲介会社以外の者と売却希望物件の売却にかかる媒介契約を締結していないこと。また、売却登録を行おうとする者が法人の場合は、指定仲介会社以外の者と売却希望物件の売却にかかる専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結していないこと。
エ 本サービス以外のサービスにおいて、売却希望物件の売却のための一切の活動を行っていないこと。ただし、売却希望登録を行おうとする者が法人の場合はこの限りではありません。

14.仲介サービス

(1) マッチングサービスを利用した売却希望登録者ならびに見学希望者および問い合わせ希望者は、売却希望物件の売買に際して、仲介サービスを利用しなくてはならないものとします

(2) 居住用物件の売却希望登録者は初回の見学(第12項)の際までに、投資用物件の売却希望登録者は当該物件にかかる売買契約の締結までに、それぞれ指定仲介会社の定める書式による不動産売却にかかる媒介契約を締結することに同意するものとします。また、購入希望者は、公開物件にかかる売買契約の締結までに、指定仲介会社の定める書式による不動産購入にかかる媒介契約を締結することに同意するものとします。

(「おうちダイレクト使い方ガイド」より抜粋)

本来の不動産「囲い込み」問題とは意味が異なるが、売り手優先、買い手優先、囲い込みの排除を掲げているソニー不動産の理念から外れているのではないだろうか。

ソニー不動産取締役喜志武弘氏は以下のように語っている。

質問者:では、ヤフーの強みはどのように発揮されているのでしょうか。

喜志武弘氏:ヤフーでマンション名を入力して検索すると、検索結果の上位に「おうちダイレクト」で扱っている物件が出てきます。あるマンションに興味を持った方がそのマンション名をヤフーで検索すると、売主さまの物件が検索結果の上位に表示されるのです。

喜志武弘氏:ちなみに、個人のお客さまによって「おうちダイレクト」で売られている物件は、ほかの不動産ポータルサイトには一切登録されていません。ヤフーでマンション名を入力して検索するような方が、「おうちダイレクト」限定のお部屋を見つけたら、どうでしょうか。

質問者:前向きに検討している部屋を見つけて、それがレアだったら……購入へと気持ちが強く動きそうですね。

喜志武弘氏:そうなんです。強い関心を持っている物件で、希少性の高いお部屋なので「ここは逃したくない」という気持ちが働いて、かなりの確率で内見の申し込みをしてくれます。また、内見との関連の話で成約した方の平均ではありますが、平均2.5回の内見でご成約いただけております。

質問者:内見や契約の調整などもネットから行うのでしょうか?

喜志武弘氏:その点は誤解があるといけませんね。「おうちダイレクト」は、インターネット上で「不動産取引のすべて」が完結するサービスではないのです。ネットを活用するのは売り出しまで。内見の申し込みが発生してからは、不動産のプロであるソニー不動産のコーディネーターがすべて対応させていただきます。

質問者:手数料0円というのは、ビジネスとして成り立つんですか?

喜志武弘氏:ご安心ください。仲介手数料は買主さまから頂いているので、ビジネスとしてはしっかり成立しています。売主さまには、ご自身で売り出すという負担をお願いしております。そこで発生する労力を省力化できているのであれば、その分の手数料は無料にするのは当然というのが、私たちの考えです。

喜志武弘氏:不動産売却のユーザーを囲い込むのではなく、将来的にはソニー不動産以外にも「おうちダイレクト」のプラットフォームを開放していく予定です。取り扱う物件の情報が増えるほど使いやすく、より便利にご活用いただけると思いますので、今後の展開にもどうぞご期待ください。

SR-Editor『ネットで不動産は本当に売れるの?「おうちダイレクト」担当者に聞いてみた』より抜粋)

SEOもへったくれもない。ヤフーは検索サイトとしてそれでよいのか。このように検索結果を自社ファーストしているヤフーに対して、不動産会社もヤフーにリスティング広告してて嫌にならないのか。そして、不動産会社がYahoo!不動産やおうちダイレクトに登録すると考えているのだろうか。

以前、不動産主要団体が、Yahoo!不動産への掲載を取りやめて話題になった。そのときは「閉鎖的な不動産業界団体」や「ブラック」など散々言われていたが、ヤフーが半分子会社のソニー不動産を通じて垂直モデルで利益を出そうとしていることに対して、「不動産ポータルサイトとしてまったく公平、中立ではない」としたこのときの判断は間違いではなかったことになる。

・2015年10月 不動産流通経営協会(FRK)、ヤフーと提携解消し、物件情報の掲載および提供を取りやめる
・2016年2月 全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)、Yahoo!不動産への情報提供を打ち切る

不動産の4つの団体(宅建協会・全日・ FRK・全住協)とは?

2016.08.04

始末が悪いと思うのが、ヤフーは「Yahoo!不動産」をSUUMOやHOME’Sなどと同じような物件情報ポータルサイトとして運営しており、各不動産会社の物件を格安とはいえ手数料をもらって掲載している。「おうちダイレクト」というサイトを独立して宣伝するならまだしも「Yahoo!不動産」の目立つ至る所に誘導している。

Yahoo!不動産

ちょっとやりすぎではないのか。このあたりのことは「おうちダイレクトをYAHOO!不動産の中でやっちゃうからだよ。」に詳しく書かれているので参照して欲しい。

はっきり言うが、売主はレインズ登録した方が売れる可能性は間違いなく広がる。おうちダイレクトの売主の手数料無料というのは、売却情報を囲い込みたいという目的なのだ。手数料無料の代わりにレインズ登録しないデメリットを伝えているのだろうか。

不動産屋にとって購入より売却のお客様の方が重要って知ってた?

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2016.10.27

ヤフーも本気だ。川邊健太郎ヤフー取締役副社長はこのように語っている。

たとえば「ヤフオク!」というサービスができる前は、ものの値段がよくわからなかった。買う人より売る人のほうが圧倒的に情報を持っていたから。だから高く売りつけられることもあった。
でも「ヤフオク!」が出てきたことによって、ものの値段が可視化されて、情報の非対称性が解消されたんです。その結果、なかには値段が上がったものもあるけれど、多くのものは値が下がった。

いまの不動産会社は、売る人と買う人の両方から情報を得て、値段をコントロールしているわけですね。この情報の非対称性を是正したいと思って、じゃあそういうサービスをやろう、われわれは売り手の立場に立ってやろう、と考えていたんです。ちょうどそのときソニー不動産さんがITを積極的に活用しているため、「じゃあ一緒にやりましょう」といって始めました。情報の非対称性を是正するサービスばかりやってきたので、「久々に来たね、こういうの。さあやるぞー!」と張り切ってますよ。【…】

話を戻すと、僕たちはそういう情報の非対称性を埋めるようなことが好きだし、燃えるんです。そのなかで久しぶりに現れた案件が、ソニー不動産との不動産事業。
孫さんもこのアイデアを聞いたとき、「これはヤフーがつぶれるまでやれ」と言いましたから。やっぱりインターネットの本来の意義を問うようなテーマだとわかってるんですよ。【…】

試行錯誤をしながら、10年かかってでもやり抜きたいと思っています。

(NEWSPICKS「インターネットの真の意義を問う」事業とは)

取り組むのは大賛成なのだが、取りあえず、Yahoo!不動産とおうちダイレクトは切り離して欲しい。あとYahoo!という検索サイトとして、公平であって欲しいと願う。

最後に、ソニー不動産の今後について西山社長が語っている記事をご紹介して終わる。

ソニー不動産、今年度に黒字転換へ−20年までの上場視野

ソニー不動産の西山和良社長は4日、日刊工業新聞などのインタビューに応じ、2017年度に営業黒字転換する見通しを示した。14年の設立以来、初めて。西山社長は「リアルとITの融合で新たな価値を提供し、中古不動産売買の電子商取引(EC)プラットフォーム構築を目指す」と方針を示した。全国展開など事業拡大を進め、20年までの上場を目指す。

17年度は売上高が前年度比33.9%増の27億7000万円、営業利益は1億5000万円(前年度は9000万円の赤字)を見込む。ヤフーと共同で展開するマンション売買プラットフォーム「おうちダイレクト」の強化が軸で、このほど売買情報提供先を増やすなど機能を拡充したほか、他の不動産会社が利用できる仕組みを整えた。

また18年度までに東京西部、埼玉県、横浜市に店舗を広げる。「おうちダイレクトを活用して各地の不動産会社と連携して全国展開を図り、将来的には海外展開も視野に入れる」(西山社長)方針だ。

(2017年7月5日日刊工業新聞電子版より抜粋)

ソニー不動産決算公告(平成28年度)
ソニー不動産×YAHOO!不動産×おうちダイレクト

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。
主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。