中国の不動産市況と関係するチャイナリスクについてまとめました

中国の不動産市況と関係するチャイナリスクについてまとめました

ここでは、中国の不動産市況や現状、チャイナリスクに関する記事についてまとめています。

中国の不動産市況

中国国家統計局が発表する「70大中都市の住宅価格の動向」が代表的な指標のため、こちらについての記事です。

中国不動産、高騰続く

中国の不動産高騰が止まらない。国家統計局が15日発表した8月の主要70都市の新築住宅価格動向によると、前月比で上昇した都市数は67と7月より2増えた。上昇都市数は2013年4月以来、5年4カ月ぶりの高水準。地方主導でマンション価格が高騰しており、将来の急落リスクが高まる。

下落は前月より2少ない1、横ばいは前月と同じ2だった。統計局によると北京、上海、広州、深圳の「1級都市」の前月比の上昇幅は0.3%にとどまったが、省都などが多い「2級都市」は1.3%、さらに小規模な「3級都市」は2%の上昇だった。

地方ほど不動産の販売規制が緩いため、大都市から投機マネーが流れ込みやすい。低所得層が住む老朽住宅の再開発が地価を押し上げている。

(2018年9月16日日本経済新聞朝刊5面抜粋)

中国国家統計局が発表する「70大中都市の住宅価格の動向」の70大中都市には次の3つ区分されています。

  • 1線級都市:北京・上海・広州・深圳
  • 2線級都市:天津・南京・蘇州など(ほとんどの省都)
  • 3線級都市:洛陽・楊州など(2線都市を除く小規模な都市)

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香港、狭小アパート9.3万室

香港の黄慧珠(56)さんは4年前に離婚して路頭に迷った。清掃員として働き、9千香港ドル(約13万円)の月収を得ているが、住むところがない。ようやく探し当てたのは「棺屋」と呼ばれる極端に狭いアパートだ。広さは3畳半ほどで、ベッドと物入れしか置けない。アパートの一室を小部屋に分割しており、トイレの中に台所がある。

香港政府によると、こうした狭小アパートは香港に約9万3千室あり、20万人以上が劣悪な環境で暮らしている。民間団体で住宅支援を担当する戚居偉氏は「香港では基本的人権の一つである居住権がないがしろにされている。深刻な現実を知ってほしい」と話す。

東京都の約半分の面積に730万人が暮らす香港は慢性的な土地不足だ。すべての土地を政府が保有し、賃借権を競売にかける。新たな住宅用地は政府の供給頼みだ。

「政府から農地転用の認可を得るのに6年かかる。もっとスピードアップしてほしい」。不動産大手、新世界発展の鄭志剛副主席は不満を漏らす。政府にとって不動産収入は歳入の3割を占める貴重な財源。値崩れを防ぐため、供給を調整しているとされる。長江実業集団の李沢鉅主席も「政府は長期的な戦略として住宅や土地の供給を増やすべきだ」と話す。

香港政府は28日、市民の不満を意識して、近く完成後に売り出されていない住宅にかける「空室税」を導入する方針を固めた。香港には空き物件が9千戸もあるとして、業者に早く売るよう圧力をかける狙いだ。

もっとも、空室税は新築だけに適用され、中古住宅は抜け道になる。みずほ証券アジアの金増祥氏は「香港は世界的に見ても空室率が低く、不動産市場への影響はほとんどない」とみる。結局、経済界も政府も住宅問題の責任を押し付け合っているだけにみえる。

香港は域内総生産(GDP)の2割近くを不動産が占め、大手4社の株式時価総額はこの1年で約5千億円増えた。上がり続ける不動産価格が香港経済を支え、繁栄をもたらしてきた。

しかし、そのひずみも覆い隠せなくなってきた。住宅価格は10年で3倍に高騰し、香港島の中型物件は1㎡あたり20万香港ドル(280万円)を超える。平均的な住宅価格は年収の19倍に達し、住宅ローン返済額は年収の7割を占める。

民間団体の調査では香港の20~40代の女性の53%が出産を希望しないと答えた。理由のトップはもちろん深刻な住宅不足だ。経済界から行き過ぎた住宅難は都市の競争力をそぐとの見方も出てきた。【…】

(2018年6月29日日本経済新聞朝刊11面抜粋)

超高層ビル 世界で急増 今年230棟完成、6割が中国

高さ200m(およそ40階)以上の「超高層ビル」が建設ラッシュだ。2018年は世界で前年比6割増の約230棟が完成する見通し。うち6割を中国が占める。経済成長による都市部の人口増が背景だが、多額の資金と長期の建設期間が必要な超高層ビルは経済の「遅行指標」の側面もある。適温経済で育ったカネ余りのピークアウト現象かもしれない。

世界の建築家などの専門家が集まる「高層ビル・都市居住評議会(CTBUH)」のデータを基に18年に完成予定の高さ200m以上のオフィスやマンション、ホテルなどの棟数を集計した。18年は6年連続で増え、年末時点の世界の超高層ビルは1500棟超とリーマン・ショックが起きた08年の約3倍になる見通しだ。

中心地は中国だ。18年は世界最多の約130棟を建設し、前年比7割増える。建設地は北京や上海、香港など大都市から周辺都市や内陸部にも広がる。通信機器の華為技術(ファーウェイ)などハイテク企業が集積する深圳や、製造業が成長する東北部の瀋陽で建設ラッシュが起きている。

今年完成予定の高さ上位10棟中9棟を中国が占める。1位は北京市のオフィスビル「中国尊」で、高さは528mに達する予定で北京のランドマークとして多国籍企業を誘致する計画だ。10位のビルでも343mと、高さ日本一の「あべのハルカス」(大阪市)の300mを超える。

中国以外のアジア各国の建設は40棟弱と前年より若干増える。クアラルンプールや台北、バンコクなど東南アジアの主要都市で開発が進む。中東はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイなどで約30棟の計画だ。

背景にはアジアの経済成長がある。国際通貨基金(IMF)によると、アジア新興国の18年の経済成長率は世界(3.9%)を大きく上回る6.5%に達する見通し。「世界の工場」としてグローバル企業が製造拠点を設け、賃金上昇を通じて内需が拡大してきた。国民の平均年齢は若く都市部で就業人口の増加が続く。オフィスや住宅の需要が膨らみ、超高層ビル建設を後押ししている。

だが、急ピッチな開発には警戒感も高まっている。実は今年の計画棟数には、昨年から完成がずれ込んだ物件も相当数含まれる。超高層ビルの建築には少なくとも数百億円の資金と数年単位の建設期間が必要。世界の完工棟数見通しは19年約170棟、20年約80棟と急ブレーキが予想される。

米国の利上げやドル高が進めばアジアからマネーが流出する懸念がある。東南アジアでは低金利で行き場を失った先進国の投資マネーが流れ込み、現地の高層ビルの開発ラッシュを後押ししてきた。三井住友トラスト基礎研究所の安田明宏氏は「一部の都市では供給過剰で住宅の賃料が下落に転じている」とみる。

さらに焦点となるのが中国の不動産バブルの行方だ。当局は景気テコ入れのため15年ごろまでは住宅建設を後押ししていた。だが、価格高騰への世論の不満を背景に規制強化に方針転換。17年は建設資材や人件費の上昇も加わり、完工棟数は当初計画に達しなかった。

18年も住宅投資の抑制傾向は続く。特に内陸部では完成後も空室が目立つビルも多く、供給過多の懸念も強い。当局の規制で住宅価格の下落が加速すれば、投資が一気に冷え込む恐れがある。ただ、オフィスビルに対しては「企業業績が好調なため需要は底堅い」(みずほ総合研究所の大和香織氏)との指摘もある。

日本は今年はゼロにとどまる見通しだ。地震が多いため、他のアジア各国に比べるとビルが小ぶりになりやすい。もっとも国家戦略特区による規制緩和を受けて、東京では20年の東京五輪後も大規模開発が目白押しだ。日本不動産研究所の吉野薫氏は「容積率の緩和で高層ビルの建設が加速する」と説明する。27年度には三菱地所が東京駅近くで日本一の高さとなる390mの超高層ビルを建設する計画がある。

(2018年4月8日日本経済新聞朝刊2面抜粋)

中国、消費に不動産の重荷

【…】「たぶん2017年と同じくらい」。中国国家統計局の毛盛勇報道官は3月14日の記者会見でそう答えた。18年1~2月の社会消費品小売総額(小売売上高)の実質伸び率を聞いた時のことだ。いつもは記載される数値が今回は資料から消えていた。毛氏は「名目の伸びは9.7%で消費は好調」と言うだけ。中国人エコノミストは1~2月の伸びを実質7.7%と推計する。03年以来15年ぶりの低水準という。

異変が起きているのは小売売上高だけではない。▼17年の個人消費支出の伸びは実質5.4%で前年比1.4ポイントも縮小。▼18年春節(旧正月)休みの消費の伸びは現行統計で最低。▼17年のスマホ出荷台数は初の前年割れ。▼17年10~12月の実質成長率6.8%のうち消費の貢献度は3.1ポイント。15年以降で最低。

中国人旅行客の爆買いの影響で日本では「中国の個人消費は好調」というイメージが強いが、統計が映す中国全体の消費の勢いは確実に曲がり角を迎えている。北京に住む記者の周囲を見渡すと、お金を使う人と財布のひもが固い人には明確な差がある。マンションを買う必要があるかどうかだ。

北京出身の男性で親にマンションがあれば結婚時に親が譲ることも多いが、地方出身ならばマンションを買う。中国では「家がない男性は結婚の資格がない」との観念が強い。借家住まいは子供の進学にも不利だ。

北京のマンション価格は東京とほぼ同じかそれを上回る。公務員の林さんは2年ほど前に日本円で6000万円のマンションを買った。「ローン負担が重い。消費なんてできない」と話す。北京の不動産仲介業、呉さんは「地方の出身者同士が結婚する場合、親戚中のお金をかき集めて北京の不動産を買う」と明かす。

中国人はどのくらい不動産にカネを使うのか、17年の統計から大ざっぱに計算した。まず、不動産販売面積は約17億㎡で単価は約7900元(約13万3000円)なので不動産販売総額は約13兆4000億元だ。中国人民銀行によると頭金は購入額の平均33%なので約4兆4000億元。個人ローン残高は17年末で約40兆5000億元。ローン期間は平均20年程度なので17年の元本返済額は20で割って約2兆元。ローン金利は平均5.3%(17年12月)なので金利負担は約2兆1000億元。頭金、元本、金利を合わせて約8兆6000億元を負担した計算だ。

ローンでマンションを買うのは基本的に都市の住民。17年の都市住民1人あたりの平均可処分所得は約3万6000元、平均消費支出は約2万4000元。都市住民は約8億1000万人いるので全体で約9兆7000億元が手元に残るはずが、このうち88%にあたる約8兆6000億元はマンションの頭金とローン返済に消えた。

この「不動産負担比率」は13年を上回って過去最高だ。14、15年と70%台に下がったが、16、17年と急上昇した。15年の経済失速に危機感を抱いた習近平指導部が住宅ローンの基準を緩め、大都市の不動産高騰を容認したからだ。地方のマンションの不良在庫では農民工らに補助金を渡し、ローンで買わせた。手元に残るカネの大半が不動産に流れれば消費は盛り上がらない。不動産負担比率が前年より上昇した11、13、16、17年は小売売上高の減速幅も大きめだ。

国際決済銀行によると、中国の家計債務の国内総生産(GDP)に対する比率は17年6月末で47%。先進国と比べると水準自体は低いものの、10年間で28ポイントも急上昇した。金融危機前の米国に似る。中国では家を買う時に親や親戚からお金を借りることが珍しくない。実際の債務比率はもっと高いはずだ。

不動産高騰で貧富の差も再び広がり始めた。北京や上海にマンションを何部屋も持つ富裕層はますます豊かになった。家計調査によると、中間層の所得の伸びは縮小が続くのに、高所得層だけは16、17年と2年連続で所得の伸びが拡大した。貧富の差を示す「ジニ係数」も2年連続で上昇した。習指導部も危機感があるのだろう。3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では所得税の課税最低限の引き上げを表明した。所得減税で庶民の懐を温める狙いとみられるが、莫大なローン負担の前では焼け石に水だ。

常識外れの水準に資産価格が高騰すれば、誰かが何らかの形で負担しなければならない。日本は不動産価格を強制的に下げ、不動産担保に依存した銀行に負担が集中した。中国政府は日本を研究し「バブルを破裂させるのは間違い」という教訓を得たとされる。中国は共産党の強烈な権限で不動産バブルもうまくコントロールしてきたが、個人消費という思わぬ形で副作用が出始めた。高すぎる統制能力は落とし穴でもある。市場による価格調整の機能が働かず、いつまでも問題を先送りできてしまうからだ。足元の消費減退は「強すぎる共産党」の弊害をも映し出している。

(2018年4月3日日本経済新聞朝刊11面抜粋)

不良債権もネットで競売

上海市の中心から北西30kmに位置する、小型のショッピングモール。3階建てで、スーパーや複数の食堂、子供向け英語教室などが入居する。地下鉄駅からはやや離れているが、周囲はマンションが立ち並ぶ住宅街だ。

ありふれた物件にみえるが、特徴が1つある。アリババ集団が手掛けるネット通販サイト、淘宝網(タオバオ)を通じて競売にかけられているのだ。

売り手は地方銀行の湖北銀行。裁判を経て取得した担保物件を処分しようともくろむ。評価額7139万元(約12億円)に対し、ひとまず4284万元で売りに出した。入札期限を3月末に設定していることもあってか、実際の応札は「少なくとも3月に入ってからだろう」(タオバオの関係者)。

ネットを通じた不良債権の競売はすっかり定着している。不動産だけでも上海で9件、全国では5000件超の競売が進行中だ。上海の物件が少ないのは処分が容易だからにすぎない。「3線都市」「4線都市」といわれる地方都市の、さらに交通の便が悪い地域では処分の難しい物件が根雪のように積み重なっている。

動産も多い。さびついた貨物船や工作機械、乗用車、在庫品のポリエステル、白酒と呼ばれる高級酒まである。タオバオの「訴訟資産」というページに掲載されている様々な物品からは、不良債権を少しでも回収しようとする金融機関の努力が伝わってくる。

なぜネットでの競売を選ぶのか。時価で処理業者に不良債権をまとめ売りする「バルクセール」では、特に動産は「二束三文で買いたたかれる」(銀行)。金融当局が最終処理を急ぐよう繰り返し圧力をかけてくるなか、相対で一つずつ買い手を見つけることなど到底できない。一度に大量の担保物をさらすことができ、売れれば一定額の回収が見込めるネットに流れるのは不思議ではない。【…】

(2018年2月15日日本経済新聞朝刊7面抜粋)

アジア不動産 転機 中国マネーで加熱、空室増

【…】香港の金融街を象徴する73階建て高層ビル「ザ・センター」。17年11月、中国資源大手を中心とする投資グループが約400億香港ドル(約5600億円)で購入したことが明らかになった。単独のビルとしては過去最高額だ。

日本不動産研究所によると、香港のオフィス、マンション価格は17年10月までの半年間でそれぞれ6.5%、5.2%上昇したが、市場が冷める気配はない。香港の主要オフィスビルの平均賃料は東京の2倍以上に高騰している。

調査会社ディールロジックの調べでは、アジア・オセアニアの不動産企業の買収や大型不動産の取引総額は17年、1952億ドル(約21兆円)と前年比43%増となった。タイの首都バンコクやカンボジアの首都プノンペンの主要オフィスビル賃料は過去5年で3割超も上昇。インドネシアのジャカルタやフィリピンのマニラは約4割伸びた。

シンガポールでは再開発目的の既存マンションの購入が相次ぐ。不動産サービス大手JLLによると、再開発目的の不動産購入額は17年、77億シンガポールドル(約6300億円)とリーマン・ショック前の07年に次ぐ水準に達した。同国の民間住宅価格指数は17年に4年ぶりに上昇に転じた。

都市部への人口流入やインフラ整備で不動産価格の上昇が続くとの「神話」に加え、中国マネーが市況の過熱に拍車をかける。オーストラリアのメルボルンでは17年4~6月の新築住宅の2割強を外国人が購入。うち8割が中国人とみられる。

だが、ひずみも広がり始めた。マレーシアのクアラルンプール中心部から車で20分のジャラン・クチン地区。幹線道路沿いの商業ビルは完成から1年たってもテナント募集の広告が目立つ。仲介業者によると入居率は約10%どまり。首都中心部の29階建てマンションの空室率も50%超だ。

マレーシアの閣僚は17年11月、1戸あたり100万リンギ(約2800万円)以上の高級マンションの開発認可を凍結する方針を表明。同国の中央銀行も「供給過剰が続けば、クアラルンプール周辺のオフィス空室率は今の24%から21年に32%まで高まる」と指摘する。

香港やシンガポールの当局も不動産購入を検討する個人に慎重な判断を呼びかけるなど、不動産バブルへの警戒を強めている。ニュージーランドのアーダーン政権は海外投資法を改正し、外国人の中古住宅購入を禁じる方針だ。中国系移民らの投資で、オークランドの戸建て平均価格が過去4年で1.6倍に上昇したためだ。

一方で、旺盛な不動産投資はアジア経済の柱でもある。急激に需要を抑え込んで不動産価格が急落すれば、企業や個人が借金を抱えて行き詰まりかねない。韓国では16年末時点の家計の負債が1566兆ウォン(約156兆円)と国内総生産(GDP)比96%に達したが、その大半は不動産融資だ。

世界的な金融緩和を背景に低コストで資金を調達できた環境は転換期にある。アジアの中銀の多くは利上げを進める米国をにらみ、金融引き締めを探る。過熱した市場の軟着陸へ、細心の政策運営を迫られている。

(2018年2月9日日本経済新聞朝刊9面抜粋)

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中国ネット金融 破綻急増

中国でスマートフォンなどを通じ個人の資金を融通するインターネット金融の破綻が相次いでいる。2018年に入り約330社に達し、債務不履行額は少なくとも300億元(約4900億円)にのぼる。個人投資家による抗議活動も広がっている。習近平指導部による債務の削減方針が背景にあるが、多発する不履行は個人の投資意欲を失わせ、株価低迷の一因にもなっている。

北京の天安門広場から西に約3km離れた金融街は7日午前、物々しい警備が敷かれていた。金融監督当局が集まるブロックには警察車両が取り囲むように配置され、大型バスの中には多数の警察官が待機していた。

6日にはネット金融を通じて融資していた被害者が集まり、陳情やデモ行進を計画していたもよう。不測の事態に備え、7日も厳しい警備態勢を維持したとみられる。

外資系の投資銀行に勤める20代男性は6日の様子について「多くの警察車両が道路をふさいで大きな騒ぎになった。静かな金融街でこのような状況はみたことがない」と話した。浙江省杭州市でも7月に金融被害者が体育館に集まるなど、抗議運動は中国各地で散発的に起きている。

ネット金融は「ピア・ツー・ピア(P2P)金融」とも呼ばれ、ネットで取引が完結する利便性と、高利回りが受け急拡大していた。しかし、7月末までに破綻したネット金融大手20社の不履行額を集計したところ230億元に達した。規模の小さい事業者では被害額が数千万元にとどまる例もあるが、330社の合計額は少なく見積もっても300億元を超える。

「3年に分けて投資家に返済する」などと釈明する事業者は集計から除いている。ただ、これらの事業者が説明通り資金を投資家に返済できるかは不透明で、損害額は膨らむ公算が大きい。

主に富裕層が投資する「信託商品」や「資産管理計画」でも元利払いの遅延が続出、既に不履行額は120億元ほどにのぼっている。17年の不履行額は10億~20億元規模にとどまっていたとみられるが、18年通年では前年比の10倍近くまで膨らむ可能性がある。

ネット金融と異なり、信託商品などは少数の開発プロジェクトや社債、企業向け融資を投資先とするケースが多い。3億元が滞るある信託商品は、安徽省系の国有企業が元利払いを保証していた。政府が背後にいるから安全と説明を受けた個人投資家は、はしごを外された格好だ。

国有企業が絡む投資商品すら債務不履行に陥っているのは、習指導部が掲げる過剰債務の圧縮(デレバレッジ)がなお進行中であることを示唆する。共産党が7月末に開いた政治局会議では積極財政で景気を下支えする方針を決めた。だが、金融当局は銀行に対し融資先を精査するよう指導しており、中小・零細や地方政府系企業の一部は資金繰りに苦しむ。

ネット金融の苦境も過剰債務や金融リスクの抑制策のあおりを受けたものだ。事業者の8割は投資家の資金と自社の運転資金を分別管理していないとされる。銀行が資金調達の蛇口を絞れば、体力の弱い事業者の経営が行き詰まるのは目に見えていた。

当局はネット金融が経営の悪化した中小、零細企業の延命につながっていると判断。詐欺もまん延しているとみており、残高が1兆元を超えていた市場規模の圧縮にかじを切った。健全な営業を続けるネット金融の事業者数は1700を割り込み、2年前に比べ半減した。年内には1000を下回るとの予想もあり、今後も破綻や廃業が加速する見込みだ。

早急な債務削減策の副作用も目立ち始めた。7月末までの社債の債務不履行は340億元を超え、過去最高だった16年の約400億元を上回る可能性がある。社債と信託商品、ネット金融の不履行額を合計すると800億元近くに膨らむ。

債務不履行の多発は損失を被った機関投資家や個人の投資意欲をそぐだけではない。市場全体が信用リスクに敏感になり、株式に資金が回りにくくなる悪影響もある。

主要株価指数の上海総合指数は年初来高値から2割ほど低い水準で推移する。16年1月につけた中国株バブル後の安値(2655)も視野に入る。米国との貿易摩擦だけでなく、国内の信用状況の悪化も株価の重荷になっている。

(2018年8月8日日本経済新聞朝刊9面抜粋)

中国、貧富の差 再拡大

中国で貧富の差が再び広がってきた。所得の格差を示す代表的な指標である「ジニ係数」が小幅ながら2年連続で上昇。富裕層の所得が大きく伸びる一方、中間層は伸びが鈍った。不動産高騰で富裕層が売却益を手にしたとみられ、大都市での農村の出稼ぎ労働者の流入制限も影響したもようだ。貧富の差の再拡大は社会的な不満を高めるとともに、消費がけん引する経済への転換にも逆風だ。

中国国家統計局によると、2017年のジニ係数は0.4670。16年より0.002ポイント上昇し、直近の底である15年からの上昇幅は0.005ポイント。ジニ係数は08年に最高の0.4910を記録してから低下傾向だったが、再び上昇に転じた。

統計局の別の調査からも格差拡大がうかがえる。5つの階層にわけて収入から税金などを差し引いた可処分所得を調べたところ、17年は最も裕福な「高所得」は伸び率が9.1%と16年より0.8ポイント拡大。5つの階層で最高の伸びだった。

一方、中間層にあたる「中の上」「中所得」「中の下」を調べると所得の伸びはそれぞれ7.7%、7.2%、7.1%。伸び率は0.6~1ポイント縮小しており、富裕層との差が開いた。「低所得」は7.5%増と伸びが1.8ポイント拡大しており、貧困対策は一定の成果を上げているようだ。

背景にあるのは15年以降の不動産バブル。中国政府は売れ残ったマンション在庫を減らそうと住宅ローンの規制をゆるめ、不動産投機を活発にした。大都市を中心にもともと高かった不動産価格はさらに上昇し、複数の物件を所有する富裕層が潤った。17年の収入調査でも「財産収入」が前年比11%増と3年ぶりに2桁の伸びを記録した。

もう一つの原因は農村からの出稼ぎ労働者の流入制限。北京や上海は違法建築を取り壊すなどして出稼ぎ労働者を追い出し、17年末の人口がそろって減少。北京の人口が減るのは20年ぶりだ。

一般に農民が都市に移住し、別の職業に就くと貧富の差が縮小するとされる。全国社会保障基金の楼継偉理事長は18年1月の講演で「人の自由な移動が依然として制限され、これが所得格差を拡大した」と指摘した。

習近平指導部は「成長の質を重視する」と繰り返し、投資主導から消費主導への経済構造の転換を進める。だが、17年の個人消費は実質で5.4%増と16年より1.4ポイントも伸びが縮小。消費をけん引するスマートフォンや乗用車の販売も低迷した。

17年の経済成長に対する消費の貢献率は59%に達したが、これは公的医療保険など「政府消費」を含んだ数字。中国政府は個人消費がどれだけ貢献したかを明かさない。

一般に貧富の差が拡大すると、経済全体でみれば貯蓄率が上がり、消費は低迷するとされる。富裕層の財産は消費に必要なお金を大きく超えており、所得が増えても使いきれないからだ。盛り上がるのは高額消費が中心となり、高級酒「貴州茅台酒」の好調な売れ行きがその象徴とされる。貧富の差の拡大を放置すれば経済の構造転換の足かせにもなりかねない。

(2018年2月14日日本経済新聞朝刊9面抜粋)

ジニ係数:所得の格差を示す指標で、所得が完全に均等に分配される場合は0となり、1に近づくほど不平等が大きい。0.4を超えると格差への不満から社会騒乱が起きやすくなるとされる。中国政府公表のジニ係数は実態よりはるかに低いとの批判があり、四川省の西南財形大学は2010年のジニ係数を0.61と推計している。