コンパクトシティとは?「居住誘導区域」外の不動産はこれから価格が下がる

コンパクトシティ(居住誘導区域)

あなたは「コンパクトシティ」をご存知だろうか。

日本経済新聞に面白い記事が掲載されていた。

住宅や商業・福祉施設などを集約してコンパクトな街を目指す動きが全国で広がり始めた。本格的な人口減少時代に入るなかで、生活関連の機能を維持し、自動車に過度に依存しない街をつくるためだが、自治体側にはもうひとつ狙いがある。

政府は2014年都市再生特別措置法を改正し、市町村に「立地適正化計画」の策定を求めている。その計画で住宅を集める「居住誘導区域」と、商業施設や福祉・医療施設などの立地を促す「都市機能誘導区域」を設ける。区域外での開発には原則、届け出を求める制度も導入した。

(2016年5月8日『日本経済新聞』朝刊3面より抜粋/以下同)

コンパクトシティとは、都市が郊外へ拡大することやスプロール化(計画的ではなく、虫食い状態に宅地化が進むこと)を抑制し、商業地や行政サービスといった生活上必要な機能を一定範囲に集め、歩いてゆける範囲を生活圏と捉え、効率的な生活・行政を目指す街づくりのことだ。人口の少ない小都市という意味ではなく、郊外に住宅を求めることで無秩序に広がった生活圏を、中心部に集約させることで、維持管理費用がかかる道路・電気・ガス・水道などの無駄の少ない生活・行政を目指そうとするものだ。

コンパクトシティの概念は新しいものではなく、1970年代から提案されていたが、当時はさらなる都市の人口集中を招くとされ、批判されていたが、近年再び脚光を浴びている。コンパクトシティに類似した概念として、アメリカにおける「ニューアーバニズム」や、イギリスにおける「アーバンビレッジ」などがある。

コンパクトシティ・富山LRT

上記は富山市のLRT(次世代型路面電車)の写真だ。富山市や青森市など、実際にコンパクトシティを自治体レヴェルで、政策として公式に取り入れている自治体もある。

コンパクトシティが良いか悪いかという議論をここでするつもりは全くない。

コンパクトシティが良いか悪いかに関係なく、既に今や自治体レヴェルではなく、政府が国策としてコンパクトシティを進めているという点に注目すべきだ。

政府は、コンパクトシティを実現するために、2014年に都市再生特別措置法を改正し、市町村に「立地適正化計画」の策定を求めているのだ。

ここでは、全国で初めて立地適正化計画を策定した大阪府箕面市から、コンパクトシティになると具体的にどのような制限を受けるのか、そして今後不動産取引にどのような影響があるのかを見ていこう。

 

立地適正化計画を作成した大阪府箕面市の例と居住誘導区域

箕面滝

2月に全国で初めて立地適正化計画を策定したのが大阪府の北西部に位置する箕面市だ。市内の南北に2つの居住区域を設け、そこに計4つの都市機能区域を設定した。

居住区域は従来の市街化区域の85%の広さになる。土砂災害の警戒区域のほか「里山のような良好な住環境に必要な緑を区域から外した」(まちづくり政策室)点が特徴だ。都市機能区域は鉄道駅から半径800m、バス停から同300mを基本に定めた。

箕面市のほかに熊本市や札幌市も計画を策定済みで、宇都宮市なども素案を公表している。国土交通省によると「今年度中に100を超す都市が策定する見込み」(都市計画課)という。

上記の写真は箕面市を代表する箕面滝だ。大阪府箕面市は、大阪のベッドタウンである北摂エリアの人口13万人の都市だ。マンションより戸建が多く、自然環境が豊かで高級住宅地として知られる。

居住誘導区域立地適正化計画では、医療・福祉施設や住居などがまとまって立地し、住民が公共交通によりこれらの生活利便施設にアクセスできるよう、「コンパクトなまちづくり」と「公共交通によるネットワーク」の連携が重要とされている。

具体的には、住民の居住を誘導する「居住誘導区域」と、生活サービスを誘導する「都市機能誘導区域」を定め、都市機能誘導区域には、その区域に誘導する施設(誘導施設)を定める。また、それらの拠点を結ぶ鉄道やバスなどの公共交通ネットワークについても併せて位置づける。この立地適正化計画は計画的に誘導していくため、約20年後を展望して策定されている。

まとめてみると「私たちの〇〇市(町・村)コンパクトシティになります!」という宣言が立地適正化計画であり、コンパクトシティにおいて、住居エリアが居住誘導区域内、商業施設など生活利便施設エリアが都市機能誘導区域内ということになる

居住誘導区域(箕面)

これが箕面市の居住誘導区域だ。注目すべき点は、市街化区域(すでに市街地を形成している区域)でも居住誘導区域に外されている地域があるということだ。例えば、災害危険区域は外されている。つまり、今実際に居住しているエリアでも、今後そのエリアは、推薦すべき住居エリアとして認定しませんということだ。

特に土砂災害警戒区域については、平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害以降、指定される区域が大幅に増えており、不動産取引の際には注意が必要になっている。

不動産の重要事項説明書における「土砂災害防止対策推進法」とはなにか

2016.04.26
都市機能誘導区域(箕面市)

こちらは箕面市の都市機能誘導区域だ。

もし、居住誘導区域外で、①3戸以上②開発規模1,000㎡以上の1〜2戸の住宅開発をしようとするときには箕面市長に届出が必要になってくる。

居住誘導区域外での開発について、箕面市の見解は以下の通りだ。

これらの開発行為が禁止されるわけではありませんが、行政への届出というアクションを設けることにより、緩やかな誘導を行おうとするもので、届出に対する市町村の対応としては、当該開発行為が居住誘導に対し何らかの支障をきたすと判断した場合は、開発行為自体の中止、居住誘導区域内での開発、開発行為の規模の縮小などについて調整し、調整が不調に終わった場合には、届出者に対して、開発規模の縮小や居住誘導区域内への立地等について勧告を行います。

(『箕面市立地適正化計画』より抜粋)

もし、居住誘導区域外で不動産仲介を行う場合には、「都市再生特別措置法」という項目で、重要事項説明が必要になることも理解しておいた方が良い。

不動産の重要事項説明書における「都市再生特別措置法」とはなにか

2016.05.09

あなたの不動産が位置する自治体が、立地適正化計画を作成しているかについては国土交通省のHPを参照すればよい。

 

コンパクトシティは今後の不動産取引にどのような影響があるのか

日本の都市は戦後、ほぼ一貫して膨張してきた。全国の「人口集中地区」(原則、人口密度が1k㎡当たり4000人以上の地区)の面積をみると、高度経済成長期に急拡大し、その後も徐々に広がっている。地区内の人口密度はこのところほぼ横ばいだが、人口減少が加速すれば下がる公算が大きい。人口密度が低下するとスーパーなどの撤退を招き、車なしでは一層、暮らしづらくなる。

こうした事態を避けることが立地適正化計画の狙いだが、影響は住環境にとどまらない。「今後、誘導区域の内側から外側かで地価水準が大きく分かれ、地価が上がるのは区域内だけになる」と不動産コンサルタントの長嶋修・さくら事務所会長は指摘する。不動産業者や金融機関が資産価値を維持しやすい区域への投資を優先するからだ。

埼玉県毛呂山町は作成中の立地適正化計画のなかで「20年後に公示地価を10%以上、上昇させる」目標を掲げた。町の人口は同期間に18%程度減る見通しだが、居住区域に住宅を誘導して人口密度を保ち、投資を呼び込むことで地価上昇をつなげる戦略を描いている。

背景にあるのは長らく続く地価下落に伴う固定資産税の減収だ。現状のような拡散した市街地のままでは、行政経費がかさむと同時に、町の収入は減り続けかねない。

3月に公表された公示地価は8年ぶりに上昇に転じたが、大都市などの一部の地点がけん引した結果だ。全国でみると調査地点の3分の2は現在でも下落もしくは横ばいにとどまっている。

市民生活の利便性を維持し、地価回復を通じて税収増につなげる。コンパクトな街に変われるか否かは自治体の将来を大きく左右するのだろう。

(2016年5月8日『日本経済新聞』朝刊3面より抜粋)

このように居住誘導区域内か外かで、資産価値は変わってくるはずだ。居住誘導区域内において固定資産税が増えるということは、地価が上がり、資産価値が上がっているということだ。

地価が本当に上昇するのであれば、不動産を購入してから大きく資産価値が下がるという心配が少なくなるだろう。

逆に、居住誘導区域外の需要は細まり、資産価値として大きく下がる。

なにせ居住用としての需要がないのだ。居住誘導区域外の不動産が安いからといって飛びつくべきではない。安いにはそれなりの理由があるのだ。

日本は人口減社会に入っており、税収が減ることが見込まれている中、今まで造ってきた道路・電気・水道などのインフラを維持することが難しくなってきている。

加えて、高齢社会の中で、郊外の戸建から利便性の高い駅チカのマンションへと都心回帰が進んでいる。そのため、特定の駅周辺のマンションは高騰している。これが特定の駅周辺ではなく、誘導区域によって何カ所かに分散することができるかもしれない。

コンパクトシティが良いか悪いかは机上の空論の状態ではわからないし、成功するか失敗するかなんてことはわからないが、今の日本の現実を見据えた上で計画的に施策を「やる・やらない」という選択肢なのであれば、やってダメな方がまだ良い。やってダメならそこから改善すればよい。一番ダメなのは、何もやらずに現実として直面している問題に顔を背けることではないだろうか。

コンパクトシティへの施策により、今後不動産がこうなるだろうという話をお伝えしたが、(確実には)どうなるかはわからないという人がいる。そういう人に向けて、ふと、有名な株式の格言を思い出したので最後に書いておく。

国策に売りなし

(株式の格言)

「(株式投資する上で)国の政策は国からの追い風を受けるので逆らってはいけない(空売りしてはいけない)」という意味だが、不動産も株式も価格が上がるかどうかはわからないという点では同様だ。

 今後、あなたの街の居住誘導区域について、もっと関心を持つべきだ。

※居住誘導区域についてさらに詳しく知りたい方はこちら

コンパクトシティ(居住誘導区域)

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。 主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。