居住誘導区域外の不動産は下落?コンパクトシティー計画が拡大中

政府が国策として推し進めるコンパクトシティー。不動産の価値に大きな影響を及ぼすと言われていますが、着々と全国の自治体に広がってきています。

「コンパクトシティー」計画広がる 街再生に期待は大きく

全国の自治体で住宅や商業、福祉施設などを一定の区域に集める「立地適正化計画」の策定が広がっている。人口減少が加速するなかでコンパクトな街に変え、生活に欠かせない機能を維持する狙いがある。拡大志向だった地方都市を縮ませる試みが成功するカギは何だろうか。

立地適正化計画は都市再生特別措置法に基づき、市町村がつくる計画だ。住宅を集める「居住誘導区域」と、店舗や福祉施設、教育機関などの立地を促す「都市機能誘導区域」を設ける。

国土交通省によると、この計画ができると区域外での開発には届け出が必要になる。一方で、区域内に施設を整備する事業者は税財政面の優遇措置を受けられる。

※都市再生特別措置法は不動産の重要事項説明義務の対象です。

不動産の重要事項説明書における「都市再生特別措置法」とはなにか

2016.05.09

青森県の津軽平野に位置する弘前市。市は3月末、JR駅から800メートル、主要な路線バスの停留所から300メートルなどの範囲内を「居住区域」と定める計画を公表した。面積でみると市街化区域の7割弱になる。そのなかに細かく15カ所の「都市機能区域」を設定した。

現在、17万6千人の人口は20年間で2割強減る見通しだ。今後は居住区域に雪を溶かす設備を優先的に導入する一方、店舗や教育機関の郊外移転を抑制する方針だ。

計画を進めるうえで欠かせないのがリノベーションと呼ばれる街なかの既存建物の再生だ。市は中心商店街の裏手に位置する赤レンガ倉庫周辺の再整備をその柱と位置づける。明治から大正時代にかけて酒造工場として建てられ、現在は市が所有している。

PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式で現代美術館やカフェとしてよみがえらせる計画で、3月末にスターツコーポレーションを中心とするグループと基本協定を結んだ。「この一帯と弘前城を商店街で結び、にぎわいを生み出したい」と都市政策課の長内遼太郎主事は話す。

日本の都市は戦後、ほぼ一貫して膨張してきた。全国の市街地(人口集中地区)の面積をみると、高度経済成長期に急拡大し、その後も徐々に広がっている。一方で地区内の人口密度はかつてと比べて約2割低下した。

一般に店舗面積2千~3千平方メートルの食品スーパーが立地するためには、周辺人口が1万~3万人必要といわれる。コンビニで3千~4千人だ。このまま市街地の人口密度が低下すれば、生活に欠かせない店や施設の撤退が加速しかねない

団塊世代がすべて75歳以上になる2025年問題も地方都市の行く末に影を落とす。車を運転できない高齢者が急増するためだ。そうなれば通勤から買い物、通院まで車に依存する都市構造は行き詰まる

街の姿を変えるカギは公共交通網の充実にある。居住地域と病院やスーパーなどが使いやすいバス路線などで結ばれてこそ、車に過度に頼らない生活が可能になる。

居住区域を市街化区域の6割弱に絞る計画をまとめた岐阜市は現在、地域交通網の再編を進めている。多くが岐阜駅と結ばれているバス路線を幹線系と支線系に分け、幹線にはバス高速輸送システム(BRT)を導入する。幹線沿いに住宅を誘導し、人口が減るなかでもバス利用者を7年間で1割強増やす計画だ。

市は昨年11月の2日間、中心市街地の通りの一部区間で一般車両の通行を規制し、道路を歩行者とバスのみに開放する社会実験を試行した。片側2車線のうち、中央側はBRTが走り、外側は歩行者天国にした。晴天の日には通常の4倍の人出になったという。

「郊外に新たなショッピングモールをつくりたい」。昨年夏、岩手県花巻市に開発業者からこんな相談が持ち込まれた。市が立地適正化計画を策定してまもなくの話だ。市の担当者は都市機能区域の外になる点などを説明して、やんわりと断ったという。

これまで地方都市で郊外開発が進んだのは住民が便利になり、雇用も税収も増えるためだった。しかし、地方の消費市場はもはや飽和状態に近い。「今回の計画は市のまちづくり方針の大きな転換を意味する」と都市再生室の伊藤直樹次長は強調する。

埼玉県毛呂山町は計画のなかで「20年後に地価を10%以上、上昇させる」ことを目標に掲げた。町の人口はその間に18%減るものの、居住区域内の人口密度を維持して投資を呼び込み、地価上昇につなげる戦略を描く。

背景にあるのは長らく続く地価下落に伴う固定資産税の減収だ。市街地が拡散したままでは行政経費がかさむと同時に町の税収も増えない。

地方都市の姿が変わるのか否かは住民生活はもちろん、自治体そのものの将来を大きく左右することになるのだろう。

立地適正化計画

住宅や商業施設、病院、学校などの立地を誘導する区域を定めた計画。都市計画法上の「市街化区域」よりも狭い範囲に設定することになっており、時間をかけて街を縮め、人口密度を維持する狙いがある。区域外の開発に対して市町村は規模の縮小を勧告したり、区域内での土地取得をあっせんしたりできるが、開発行為そのものを禁止するわけではない。

地方都市、存亡の岐路

日本の地方都市は人口が少ないのではない。例えば、学園都市としてコンパクトな街づくりで有名なドイツのフライブルクの人口は約22万人だ。日本には20万人を超す市だけで100以上ある。

しかし、人口は多くても街のにぎわいは乏しい。そもそも街なかを歩く人が少ない。私権制限が弱く、郊外開発に甘かったから生活が車に依存し、中心部が廃れて魅力的な店が少ないから、車なしでは暮らせない。

立地適正化計画を策定済みの約100自治体をみると2つに分かれる。ひとつはしっかりと機能集約にかじを切った地域だ。広島県府中市や滋賀県東近江市などは居住区域の面積を市街化区域の半分程度に抑えている。

一方で、群馬県太田市や愛知県豊橋市などは都市機能区域だけを設定し、居住地域は先送りした。施設整備への優遇策だけとりあえず受けたいということだろう。

今でも郊外開発の圧力は根強い。農地転用を抑える方針を打ち出したものの、議会で突き上げられて撤回した首長もいる。トップの指導力抜きでは街は変わらない。

住民参加も欠かせない。岐阜市では地域住民が協議会を設けてコミュニティーバスのルートやダイヤ、運賃を決め、利用者が増えている。

人口減少時代でもにぎわいを生み出せるのか、ただ廃れていくのか。地方都市は今、その岐路に立っている。

 (2017年5月1日日本経済新聞朝刊19面抜粋)

ここではコンパクトシティーの実現に必要な条件として以下の4つがあげられています。

  1. 区域内(都市機能誘導区域・居住誘導区域)に住宅、病院などを集める
  2. 既存の建物を活用
  3. 公共交通の利用増
  4. 郊外開発を抑制

今後、居住誘導区域外の不動産の価値は下がるでしょう。

これらはなにも地方都市だけの話ではありません。大都市の衛星都市(ベッドタウン)も同じように街づくりしていきます。土砂災害の可能性がある山すそや崖地などは宅地開発を禁止していくでしょう。

平成29年5月1日現在、124の自治体が立地適正化計画を作成しています。国土交通省のHPにて確認することができます。

あなたの不動産が位置する自治体が立地適正化計画を作成しているかどうか、そしてもしあれば居住誘導区域内かどうか調べてみるべきです。

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。 主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。