「マンションは高すぎるので戸建にしました」は本当なのか?〜オープンハウスの決算からみてみよう〜

オープンハウス(狭小住宅)

マンションの価格が高すぎて、戸建に流れているようだ。

戸建て住宅分譲を手掛けるオープンハウスの2015年10月〜16年3月期は、連結営業利益が前年同期比約7割増の150億円強となり、同期間としてとして最高益になったもようだ。従来予想を40億円ほど上回った。東京都心でマンション価格が高騰し、相対的に値ごろ感のある同社の戸建てに消費者が流れた。

売上高は約5割増の1150億円強と従来予想を80億円程度上回った。通勤に便利な東京都心や横浜市、川崎市で展開する3階建ての戸建て住宅の販売が好調。子持ちで共働きのサラリーマン世帯の需要を取り込んだ。好業績の背景には、マンションに比べて戸建て住宅に値ごろ感が出たことがある。首都圏の新築マンション価格は1月〜3月平均で5669万円と前年同期から500万円近く上昇した。これに対しオープンハウスの戸建ては4400万円前後で推移しており、顧客の取り込みに成功したようだ。

戸建て住宅建設は人件費が上昇する鉄筋工などの必要度合いが少なく、コスト上昇の影響を受けにくい。土地の仕入れでもマンションのような広くまとまった土地に比べ購入競争が少なく、安く仕入れられる。

16年9月期通気の営業利益は前期比17%増の250億円を見込むが、上期の好調を受け予想を引き上げる可能性がある。

(2016年5月10日『日本経済新聞』朝刊15面)

オープンハウスがどんな会社か最初に説明しよう。

株式会社オープンハウスは、1996年に設立、「東京に、家を持とう。」をキャッチコピーとし、都心城南〜川崎・横浜エリアを中心に、不動産仲介事業、新築戸建分譲、マンション開発事業等を展開している。2013年9月東証1部に上場した。特に土地を仕入れての新築戸建分譲に強みがある。

オープンハウス(狭小住宅)

真偽はわからないが、不動産業界で働く人の心をつかんで離さない小説『狭小住宅』のモデルともいわれている会社だ。

営業職の平均年収は830万円と業界平均を大きく上回っている。

そのオープンハウスは、5月13日に2016年9月期第2四半期の決算発表を行った。その大筋の内容が、冒頭の日経新聞の記事内容だが、その内容をもう少し深く掘り下げて説明する。以下の資料は、決算説明資料から抜粋したものだ。

オープンハウス(売上高・営業利益)

売上高・営業利益をみると、戸建事業が前年同時期(2014年10月〜2015年3月)に比べて大幅な増収増益を達成している。

オープンハウス(戸建事業の内訳)

その戸建事業を詳しくみてみよう。オープンハウスのビジネスモデルは、メインターゲットである職住近接を望む30代の共稼ぎ夫婦」が「東京に、家を持とう。」を実現できるよう、製販一体体制で手の届く価格の住宅を提供することだ。

 戸建事業は、当社グループの主要な事業であり、OHD(オープンハウス・ディベロップメント)が新築一戸建て住宅等の開発・分譲を担い、当社の仲介事業とともに「製販一体型」の事業運営を行っております。具体的には、事業用地の取得から企画、設計、販売、仲介に至る工程において、施工の一部を除き当社グループ内で完結できる運営体制を整えております。この体制は、外部に販売等を委託している企業に比べ、当社グループの強みとなっております。
当社グループが提供する住宅の特徴は、通勤に便利な都心部を中心として3階建の新築一戸建て住宅をメインとしていることにあります。地価の高い都心の限られた敷地面積を有効に活用することにより、リーズナブルな価格で新築一戸建て住宅を提供しております。

(オープンハウス四半期報告書より抜粋)

決算説明資料にある【建売】とは、オープンハウスが仕入れた土地に建物をセットで販売する新築戸建のことだ。これはあらかじめオープンハウス社が設計した新築戸建で、建物を完成させてから引き渡す。

土地】とは、先に土地だけ購入し、土地代金の決済後に建物を建てる、いわゆる「売建」 であり、建築条件(あらかじめ設計され、決められた条件で建築する契約)はついていないとのことだが、限られた土地の広さに低コストで建設できる強み(オープンハウス・ディベロップメントだけでなく子会社のアサカワホームもある)もあることから、建物についてもほとんどオープンハウス社が行っていると思われる。そのことは「建売」と「土地」の売上高と引渡件数が、おおむね比例していることからも推測できる。

請負】とは、建築請負契約のことであり、建物部分だけを造って販売しているということだ。買主が選んだ土地が全てオープンハウスの所有している土地ではないだろう。例えば、一般消費者が売却に出している土地を選んだ場合は、仲介部門があるのでそこで土地の売買契約を行い、新築建物の部分だけ販売するというものだ。

また、売上総利益とは粗利のことだ。

住宅不動産価格指数(全国)

これは国土交通省が発表している全国住宅不動産価格指数だ。アベノミクス以降、マンションの価格は上がっているが、住宅地(=土地)や戸建住宅はほとんど変わらずだ。なぜマンションは上がって(人気があって)、戸建は上がらない(人気がない)かについては、日本人のライフスタイルの変化や外国人投資家が投資用不動産(貸しやすく管理しやすい物件が良い)としてマンションを購入していることがあげられる。詳しくは「大阪の不動産はバブルなのか?ええ、大阪市のマンションがバブっています」と「台湾人がなぜ日本の不動産を「爆買い」していたのか」を参照してほしい。

東京都区部新築マンション平均価格推移

すでに東京23区の新築マンションの価格は、容易に手を出せる価格ではなくなっている。都心や城南エリア(世田谷区・渋谷区・大田区・目黒区・品川区・港区)で新築戸建が手に入るのであれば、相対的に値ごろ感のあるオープンハウスの戸建に消費者が流れたというのは理解できる。そして実際に、決算でそのことを証明している。東京の新築マンション価格の上昇は一服したので、今後多少は下がったとしても、東京オリンピック需要もあることから、しばらくは高値圏で推移すると見られているので、オープンハウスやそのエリアの同業他社にも追い風になりそうだ。

では、東京23区以外の他の地域も、新築マンションから新築戸建へのシフトがこれから進むのだろうか?

大阪市新築マンション平均推移

これをみると、今のところなさそうだ。横浜は東京圏として一体になっているため、地方都市NO.1の大阪市でさえこの状況だ。実際、大阪市ではマンション価格が上昇し続けている。名古屋市など他の地方都市や東京でも23区を離れると、まだマンションの購入意欲の方が強い状況だ。他の都市が、新築マンションから新築戸建へ本格的にシフトチェンジするにはまだ時間がかかりそうだ

3288オープンハウス株価

 

オープンハウス(狭小住宅)

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。 主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。