今後の不動産市況を占う業界人の注目の発言をまとめました

今後の不動産市況を占う業界人の注目の発言をまとめました

こちらでは、今後の不動産市況を読む上での業界の要人の発言をまとめています。

ライフコーポレーション:岩崎高治社長(2019/4/1)

――商況はどうですか。

「よくない。昨年12月あたりから急速に悪くなっている。当社の2018年度第4・四半期(12月~2月)は既存店舗の売上高が前年同期比で0.7%減だった。マイナスになったのはほぼ6年ぶりのことだ。前回の消費増税時(14年4月)は四半期ベースで前年割れをしなかったことを考えれば明らかに減速している。3月以降もこの傾向は変わらず、食品スーパー業界全体でも最近の商況は芳しくない」

「これまでも上質と低価格価格志向の二極化消費があったが、ここに来てそれがさらに鮮明になってきている。来店客数はほぼ前年並みだが、買い上げ点数が減っている。低価格な商品だけをいろいろなお店で買っている消費者が目立つ」

――その理由は。

「この冬は晴天が続いたので天候要因ではない。海外の政治経済情勢が大きい。米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)からの離脱問題など先行き不透明感が漂い続け、株価の乱高下を招いた。それが消費ムードにも水を差し、生活に密着した食品スーパーの分野にも影響が出ている」

――10月に消費増税が控えています。

「飲食料品は軽減税率の対象でもあり、前回よりも引き上げ幅が低い(14年は3%、今回は2%)から影響は軽微だと思っていた。ところが最近の消費の変調で見方を変えた。増税後の買い控えは長引くのではないか。国の財政事情などを考えれば消費増税は致し方ないが、このタイミングは良くない」

(2019年4月1日日本経済新聞朝刊3面抜粋)

LIXILグループ:瀬戸欣哉社長(2018/8/27)

 ――足元の状況はどうですか。

「昨年秋からアパートなど貸家の新設着工戸数が前年同月を急速に下回り始めている。相続税対策でアパート建築が活況だったが、社会問題化して金融機関が融資に慎重になった。持ち家もさえない」

――地域別には。

「西高東低だ。東日本に比べて世界遺産が多くある西日本はインバウンド(訪日外国人客)の増加によってホテルや旅館、商業施設などの需要が強い。東京はビル建設が旺盛なのは変わりはないものの、東北は東日本大震災の住宅関連の復興需要は一段落した」

――長期トレンドでは。

「全体の新設住宅着工戸数(1990年以降)は96年度の163万戸のピークから下落基調で予測では2030年ごろには60万戸になるという。この業界は属性(人口、年齢構成、世帯人員など)に左右されるのは仕方がない。地方では既に60万戸時代を予感させる光景もある」

――来年10月に消費増税が予定されています。

「今秋あたりから住宅展示場やショールームなどで動きが出てくると思う。ただ過去2回の消費税率引き上げ時のような駆け込み需要は無いとみている。20年のオリ・パラ後の景気動向が見通せないからだ」

「景気が悪くなれば地価も下がる。今、駆け込まなくてもいいことになる。22年に約8割の生産緑地の税優遇が期限切れとなり、土地の放出も予想される。地価にも影響するだろう。いくつもの要素が絡み合うので誰も確信ある見通しを持っていないはずだ」

――リフォーム需要はどうですか。

「需要はあるが工事業者が少なくて思ったようには伸びてはいない。住宅の質も向上しているから手直しのサイクルも長くなっている。25年には12兆円市場(現状は推定6兆円)になるといわれているが難しいかもしれない。ただ料金体系をもっと透明化することで健全な成長はできる」

――資材の価格動向は。

「サッシなどに使うアルミニウムや水回り用の銅の価格は気になる。アルミ価格は16年から上昇基調になり、貿易摩擦の影響で値動きも激しい。今期のアルミ価格は弊社では前期比6.8%の上昇を見込む」

(2018年8月27日日本経済新聞朝刊3面抜粋)

アートコーポレーション:寺田千代乃社長

――春の引っ越しピークに向けて、足元の予約状況は。

「2月中旬から問い合わせが増えてきた。ピーク時期への依頼を中心に受けられないケースが出ている。人手不足の中で働き方改革を進めており、2017年も前年から2割受注を減らした。今年も受注は低い水準になる」

「今春は学生など個人客よりも継続的な専属契約を結んでいる法人顧客の転勤の依頼を優先している。数社の引っ越し業者と契約し、その中から社員が選んでいるような法人顧客は、場合によって受注を見送っている」

――引っ越し難民が顕在化した理由は。

「業者側の背景として労働環境の見直しがある。当社は昨年、大手引っ越し業者で初となる定休日を設けるなど全社を挙げて働き方改革に取り組んだ。これまで時間外の労使協定(三六協定)に基づき、ピーク時は土日もできる限り仕事を請け負っていた。今後は稼ぎ時といえども、働き方の見直しを優先することにした」

「社会的な背景は単身世帯の増加だ。1977年の設立から2000年ごろまでは4人家族の世帯の引っ越しを、大金を頂いて時間をかけながらこなす仕事が中心だった。単身世帯が増え、少額の案件を数多くこなすビジネスモデルに変化した。こうした中で運転手やアルバイトの人手不足が追い打ちをかけた」

――19年春以降、人手不足をどう克服していきますか。

「人工知能(AI)の導入に向けた準備を今春から始める。引っ越しは交通や荷造りの状況など当日現場に行ってみないとわからないことが多く、社員の『勘』に頼るところも多かった。今後はAIにこれまでの膨大な引っ越しデータを記憶させ、おおむね必要な人員や1件あたりにかかる作業時間を導きだすことで、大幅な効率化を図る。速やかに導入したい」

「お客様にもこちらに納期があることを今後はしっかり伝える。たとえば作業日に伺っても、荷造りがきっちり終わっていない人もたくさんおり、スタッフが現場に着いてから手伝う例も多い。今後は事前に荷造りが終了しているか、電話で念押しの確認をする」

――現場の仕事内容が競争力の源泉なのに担い手が不足していて持続的な成長ができますか。

「引っ越し業界は人口減や都市部の人口集中の影響で市場は縮小傾向にある。会社を成長させるにはシェア向上しかなく、大手各社はこれまで値下げを競い合ってきた。今後は人手不足で単価は上昇し、サービスの質で競わなくてはならない。引っ越しは数年に1度のイベントだから、利用者に各社の違いがわかりにくい。サービス面で他社との違いをどう発信するか、頭を悩ませている」

(2018年3月3日日本経済新聞朝刊2面抜粋)