マンションはバブルなのか?「異変 マンション市場」を読み解く

マンションはバブルなのか?「異変 マンション市場」を読み解く

2017年3月13日〜16日の日本経済新聞朝刊において「異変 マンション市場」という特集が組まれた。

すでに東京都心の新築マンションの売れ行きが悪くなっており、その影響が今は好調な地方にも広がっていくのではないかという話である。

今の新築マンション市場の様子がよくわかる記事であり、ここでは「異変 マンション市場」から現状と今後、特に『マンションバブル』ついて客観的に読み解いてみた。

異変 マンション市場

異変 マンション市場① 「戸建てよりも高い」

「開発のタイミングが悪かった。売り切るまで苦労するだろう」。不動産関係者の間でこうささやかれるマンションが東京都大田区にある。昨春発売し、総戸数が数百戸という大規模物件。パーティールームなど充実した共用施設が売りで、最寄り駅から徒歩10分程度と利便性も悪くない。

ただ、プロジェクトが動き出したのが、アベノミクスによる低金利で不動産取引が活発化し、土地代や建設費が上昇基調にある時期だった。不運なことに分譲開始の頃、マンション市況では弱含みの気配が漂い始めた。

3月で発売から約10カ月。「モデルルームに来たお客さんの反応は悪くない」と開発会社は言うものの、これまで売り出した住戸は全体の半数以下。マンション販売では複数回に分けて新規住戸を売り出すのが一般的だが、時間をかけて総戸数の多さに見合う新規客を集めるしかない。

※野村不動産分譲「プラウドシティ大田六郷」(東京都大田区西六郷3丁目)総戸数632戸

プラウドシティ大田六郷

マンション市場に異変が起きている。2016年の供給戸数は1992年以来、24年ぶりの低水準を記録した。元凶は全国の半数を占める首都圏の不振だ。供給減で需給は締まっているのに、契約率は好不調の目安とされる70%を下回った。

空前の低金利は不動産業者に資金的余裕をもたらし、マンション開発を刺激した。だが、負の側面も表面化している。

東京・日本橋馬喰町。古くからの繊維問屋街がマンションの建設ラッシュに沸く。繊維産業の衰退で空きビルが目立っていたが、ビジネス街である東京・大手町に10分程度で通勤できる利便性にマンション業者が目を付けた。2015年から16年にかけて大手も参戦し、今やかいわいの開発案件は10件を超える。

※馬喰町(ばくろちょう)…古くは徳川家康が戦のための馬を数百頭この地で飼わせたのが発祥。馬の売買や斡旋をする馬喰がこの地に住んでいた。

馬喰町

「供給過多。だぶつくのでは」。近隣の不動産業者は浮かない顔だ。1坪300万円程度だった用地の売買価格は取引のたびに上昇、400万円、500万円とつり上がったという。その結果、8千万円を超える高額物件も目立つ。単身者や共働き世帯を狙うが、想定通り売れなければ、街に活気は戻らない。

マンション失速の理由を象徴するのが、漁夫の利を得る企業の存在だ。

「住宅の購入検討者がうちに流れているのは、マンションが高いから」。都内で戸建て住宅事業を展開するオープンハウス社長の荒井正昭(51)は笑いが止まらない。販売は右肩上がりで、17年9月期は最終利益が220億円と5期連続の最高益更新を見込む。

同社によると東京都世田谷区や練馬区などでは、マンションより1千万~2千万円安い戸建ても珍しくないという。

理由は土地の仕込みやすさだ。マンション向けは限られるため、入札で高値になりやすい。一方、戸建て向きの土地は比較的見つけやすく、割安で開発できる。住宅政策に詳しい慶応義塾大学教授の大江守之は「素早く開発できるという戸建ての強みが生きる環境にある」と指摘する。

マンションから戸建てに流れる動きが継続するとみた同社は昨年12月、東京・渋谷に大型のショールームを開設。都心で積極攻勢をかける。

消費者の意識変化という構造的な動きもマンション開発に対応を迫る。

かつては夫婦と子供2人という4人暮らしを想定し、手ごろな価格で開発できる郊外も重視してきた。それが少子高齢化で家族構成が変化。共働き世帯も増加し、「職住近接を求める動きが強まった」(不動産経済研究所主任研究員の松田忠司)。郊外の物件で数を稼ぐという戦略が取りにくくなる中で、土地価格の上昇などが直撃した。

マンション離れは意外なところにも表れる。

「昨夏から急に切手が売れなくなった」。こうぼやくのは、金券ショップのウィングカードシステム(東京・港)の社長、中山定則(62)だ。

金券ショップが集まる東京・新橋では52円の切手シートが定価の91.5~93%で売られている。3月は前年の同じ時期と比べて3ポイント下がった。

切手の主な買い手はダイレクトメールを大量に郵送する不動産会社。以前は一度に200万円分を買う大口客もいたが、マンション販売の低迷と連動するように姿を消したという。

低迷するマンション市場。そこで起きている異変を追う。

(2017年3月13日日本経済新聞朝刊2面抜粋)

異変 マンション市場② 「最大の敵はホテル」

三井不動産が川崎市内で販売するタワーマンションのダイレクトメールに今月、こんな文字が躍った。「3月31日までに契約のお客様に商品券50万円」。実質的な値下げだ。

※三井不動産レジデンシャル・JX不動産分譲「パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン タワーズイースト」(神奈川県川崎市中原区小杉町2丁目)総戸数592戸

パークシティ武蔵小杉 ザ ガーデン タワーズイースト

不動産経済研究所(東京・新宿)によると2016年の首都圏の新築マンションの平均価格は5490万円。バブル期の1992年以来ずっと割り込んでいた5000万円の大台を3年連続で上回った。

マンションの販売不振をもたらした価格の高騰。跳ね上がるコストを抑え、各社とも手ごろな物件を提供しようと躍起だが、決め手に欠く。特に土地の手当てで厳しさが増している。

最大の敵はホテルだ。訪日外国人の増加でホテル需要は急拡大が続き、開発は目白押し。例えばアパグループは、怒濤(どとう)の勢いで土地を吸い上げる。銀座に出やすい新富町、上野駅東側の稲荷町……、各所で新設が続く。同社は20年までに37カ所開業する計画だ。

アパホテル社長「不動産は買いたいときに買ってはいけない」

日銀の金融緩和で銀行の融資姿勢が緩み、投資マネーもホテルに向かう。不動産投資信託(REIT)に集まった資金でホテルは高値で取引されるため、マンション向けに比べ1~5割高く土地を買えるという。ホテル開発いちごの常務執行役、吉松健行(46)は「追い風が吹いている」と自信を見せる。

一方、マンション開発会社は採算ギリギリで対抗せざるを得ない。三菱地所次期社長の吉田淳一(58)も「安く土地を仕入れるのが難しい」とこぼす。

土地だけではない。あらゆるコストが重荷になっている。

建設現場では労務費が上昇。鉄筋工の不足をカバーしようと工法を鉄筋コンクリートから鉄骨へシフトしたところ、供給元である中国で減産が進み、昨年3年ぶりに価格が引き上げられた。日本の鉄鋼メーカーも呼応して価格を上げるとみられる。

材料高の要因はほかにもある。太平洋セメント系の外壁メーカーは今夏からマンション外壁を5%値上げすると顧客に通達した。値上げは2年前に実施したばかり。背景は外壁を運ぶ運賃の上昇だ。「運転手不足でトラックが走らない」と同社の営業担当者はぼやく。

神奈川県内に住む30代の男性会社員は毎週末モデルルームに通う。2人目の子どもが昨秋に生まれ、今の賃貸では手狭となった。マンション購入を検討しているが、これまで見た15物件はすべて予算オーバー。「マンション難民ですよ」。そうつぶやいた

(2017年3月14日日本経済新聞朝刊2面抜粋)

異変 マンション市場③ 「7億円で見繕ってや」

低迷する首都圏から目を転じれば異なる光景が広がる。2017年1月には近畿圏のマンション供給戸数が約26年ぶりに首都圏を上回った。

3億円の住戸も発売開始早々に売れた福岡市内のマンション

「7億円でなんぼか見繕ってくれへんか」。大阪中心部のタワーマンションを5~10戸まとめて購入する「タワマンコレクター」。中小企業のオーナーが多い。不動産相場の上昇で、中古で売っても利益が残る。市内では15棟以上のタワーマンションの計画が進行している。

マンションの平均価格が約3900万円と首都圏の7割程度の近畿圏。会社員にも手が届きやすい。1月に新居に入った島広行(31)は「価格は上がる。今買って損はない」と話す。

開発事業者は土地の仕入れに奔走する。地場系のプレサンスコーポレーション取締役の多治川淳一(47)は「商店街の空き店舗など、大手が手を出さない小さな土地も狙う」という。

地方都市も堅調だ。「いったい誰が買うのか」。地元の注目を集めたのが、九州随一の繁華街、福岡市天神近くで九州旅客鉄道(JR九州)が建設中の高層マンションだ。最高額は3億円。今年11月に引き渡し予定の全172戸のうち170戸が既に売れた。市内では建設中の高級マンションのブランド名を示す囲いがあちこちにある。

※JR九州分譲「MJR赤坂タワー」(福岡県福岡市中央区赤坂1丁目)総戸数172戸

MJR赤坂タワー

首都圏での高値競争を避け、中堅のマンション事業者は地方都市に流れ込む。

東京が本社のタカラレーベンが16年夏に着工したのは秋田市だ。秋田県内での分譲マンション着工は10年以来6年ぶり。販売価格は2800万円台~4500万円台と「相場より1千万円程度高めにした」と販売責任者の榎健太(34)は話す。それでも全56戸のうち9割が契約済み。購入した県北部に住む70代の男性は「秋田市内の病院に通うのに毎回1時間かかって大変だった」という。首都圏以外でも進む都心居住が追い風だ

※タカラレーベン分譲「レーベン秋田 THE MID TOWER」(秋田県秋田市中通3丁目)総戸数56戸

レーベン秋田 THE MID TOWER

好調は持続するのか。懸念はやはり価格の上昇だ。札幌、仙台では16年の平均価格がバブル期の水準を超えた。

建設ラッシュが続く仙台市中心部。新築の高級マンションで夜、明かりがつく部屋はまばらだ。市内の不動産業者は「投資用や富裕層のセカンドハウス用としてよく売れている」と明かす。野村不動産執行役員の天野哲哉(48)は言う。「首都圏の市況が下がると、半年から1年後に他の地域に広がる。楽観はできない」

(2017年3月15日日本経済新聞朝刊2面抜粋)

異変 マンション市場④ 「新築だけでは食えない」

高級住宅地として知られる東京・西麻布。2月にマンション「ウッドヴィル麻布」が売り出された。高級賃貸マンションを全面改修し、3千平方メートルを超えるゆったりした敷地に28戸が入る。初回分譲の3戸のうち、専有面積185平方メートルの住戸は2億9800万円。超高級物件ながらすぐに完売した。

開発したのはNTT都市開発。2015年春に取得し、社内でどう開発すべきか検討を重ねてきたこの物件は、曲がり角にさしかかった国内マンション開発の現状を映し出す。

「建て直すか、そのまま生かすべきか」。住宅事業本部の西部周志(46)は悩み続けた。かつてなら建て直して新築として発売するところだが、折からの建設費高騰で販売価格が大幅に上がりかねない。最終的に全面改修して再販する道を選んだ。滑り出しは順調でも西部は「手探りですよ」と慎重だ。

これまで不動産大手にとってマンション事業と言えばファミリー向けの新築が中心。安定収益を稼げるビジネスだったが、主戦場の首都圏は価格高騰もあり不振が続く。NTT都市開発でも収益を確保しようと、賃貸や高齢者住宅など領域を広げる。今回のように改修した高級中古マンションも、新たな食いぶちを探る一環だ。

※NTT都市開発分譲「ウッドヴィル麻布」(東京都港区西麻布4丁目12-19)総戸数28戸

ウッドヴィル麻布

三菱地所レジデンスは高級住宅地の東京・白金台で1棟まるごと改修し再販する事業を始めたほか、ワンルームなど小規模マンションの開発に力を入れる。住友不動産は共働きの夫婦2人を想定した物件を広げるなど、多様化が進む。

新たな付加価値でどう消費者をひき付けるか。大阪府摂津市では一風変わったマンションが開発中だ。全戸にウエアラブル端末や血圧計などを設置し、居住者はテレビを通じて専門家から助言が受けられる。

狙いはシニア層。事業主の近鉄不動産マンション事業部部長の後藤哲(53)は言う。「戸建てがついのすみかになる時代は終わった。シニアに振り向いてもらえないと生き残れない」

※近鉄不動産分譲「ローレルスクエア健都ザ・レジデンス」(大阪府摂津市千里丘新町)総戸数824戸

ローレルスクエア健都ザ・レジデンス

マンション販売は好調だった1994年以降の約10年間の水準に比べ、今はその半分以下。市場縮小で、首都圏でマンション事業を手掛ける企業は133社(16年)と、ピーク時の94年の3割弱に落ち込んでいる。どうやって生き残るか。知恵が求められている。

(2017年3月16日日本経済新聞朝刊2面抜粋)

新築マンションの売れ行きが悪いのは価格高騰が原因として、その理由や現状を以下のようにあげている。

・空前の低金利で借入がしやすくなり、不動産業者が開発を増やし競争激化
・都心居住により郊外で建てても売れないため、都心部に立地が集中
・インバウンドでホテルが用地買収(都心部の駅周辺)に積極的
・建設費および材料費の高騰
・地方の高級マンションでも売れるのは投資用やセカンドハウス目的
・中堅デベロッパーは首都圏を避けて地方へ進出するが、地方でもニーズは都心居住
・(売れないので)ファミリー向けから賃貸、高齢者住宅など事業の多角化が進む

 

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。 主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。