「都心から地方」2017年前半の地価の動きは?「まだら模様の地価上昇」を読み解く

まだら模様の地価上昇

3月21日に国土交通省から2017年の公示地価が発表された。

「地価公示と公示地価」についてわかりやすくまとめた

「地価公示と公示地価」についてわかりやすくまとめた

2017.03.27

全国の住宅地が前年比0.02%プラスと、リーマン・ショック直前の2008年以来9年ぶりに上昇した。

価格高騰でマンション販売が鈍り、価格上昇が伸び悩んでいる東京都心から、比較的高い利回りが確保できる地方中枢都市へとマネーが移った。大阪圏や名古屋圏の住宅地の上げ幅も縮んだ。また、交通インフラ整備や再開発で利便性が高まったのも地方都市の地価の上昇を支えた。

ただ、全体でみると住宅地は1万7909地点のうち上昇は34%、下落は43%。通勤や買い物に便利な駅から徒歩圏内の地価が上がり、駅から離れた不便な場所の地価は下がるという二極化が全国的にも拡大。いわゆるトレンドは「都心居住・都心回帰・中心部回帰」だ。

2017年3月23日〜24日の日本経済新聞朝刊において「まだら模様の地価上昇」という特集が組まれた。

ここから、2017年の公示地価からわかる現状がどのようなものか見てみたい。

 

まだら模様の地価上昇

まだら模様の地価上昇(上) 再開発地域が押し上げ 不動産に迫る格差の波

地価上昇が2年目に入った。2017年の公示地価は全用途の平均が前年比0.4%のプラスで、住宅地の下落にも歯止めがかかった。前回の上昇局面はリーマン・ショックを機に2年で終わった。今回はどうなのか。

住宅地の上昇率で全国1位だった仙台市若林区白萩町。15年に仙台市営地下鉄東西線が開業して、新駅の近くに新築住宅が目立つようになった。通勤や買い物の利便性を重視する30~40代の子育て世帯を中心に、需要が急激に高まった。住宅地上昇率トップ10のうち7地点を仙台が占める。

仙台市若林区白萩町…最寄り駅は地下鉄東西線薬師堂駅。仙台駅まで乗車時間6分のアクセス。

仙台市若林区白萩町

1980年代のバブルや、2007~08年のミニバブルをけん引したのは投資マネーだった。今回は不動産投資信託(REIT)などの投資対象になりにくい場所でも、実需を映して地価が上がっている。

半面、「地価は下がらない」という不動産神話のもと都心から地方まで高い伸びを示したバブル期ほどの力強さはない。1988年は全国の調査地点の85%が上昇、下落はわずか3%。足元では4割超が下落している

新たな交通機関の整備や再開発といったイベントのある地点の高い伸びが、全体を押し上げているのが今の上昇局面だ

東京23区の住宅地の平均価格は1㎡約55万円。バブル期(88年、136万円)の4割ほどの水準で、リーマン・ショック前(08年、58万円)にも及ばない。人口減という現実があり地価上昇が全国の津々浦々まで波及する姿は描きづらい

かつてのバブルとは様相が異なる
バブル期(1988年) ミニバブル(2008年) 2017年
全国の地価上昇率 21.7% 1.7% 0.4%
上昇地点数の割合 85% 47% 37%
商業地の最高価格 3850万円※ 3900万円 5050万円
住宅地の平均価格 136万円 58万円 55万円
(注)※は91年、価格は東京23区の1㎡あたり

不動産コンサルタントの長嶋修氏は「資産になる『富動産』からマイナス資産となる『負動産』まで不動産格差の時代が到来する」と予想する。

兆候はある。住宅地の下落率が8.5%と全国ワーストの千葉県柏市大室にある「柏ビレジ」。東急不動産が1980年代に分譲を始めた典型的な郊外のニュータウンだが、住民が高齢化。最寄り駅から車で10分程度かかるため「つくばエクスプレス沿線のマンションに需要が流れ、売り物件が増えている」(不動産鑑定士の佐藤元彦氏)。

※柏ビレジ…面積約64ha、総戸数約1,600戸、約5,000人が住む。最寄駅はつくばエクスプレス柏たなか駅で、車で約10分、徒歩で約20〜30分

柏ビレジ

選別が生むまだら模様は商業地でより鮮明だ。最高価格の推移をみると東京23区は1㎡あたり5050万円とバブル期のピーク(3850万円)を3割ほど上回る。ただこれはごく一部の現象で、大阪市の最高価格は1400万円とバブル期(3500万円)に遠く及ばない。新潟、宮崎、水戸の各市など前年比マイナスの都市もある。

全国の最高地価…11年連続で東京都中央区銀座4丁目の「山野楽器銀座本店」で、1㎡あたり5050万円で前年度比25.9%上昇。

大阪市の最高地価…大阪市北区大深町の「グランフロント大阪南館」で、1㎡あたり1400万円で前年度比18.6%上昇

三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部の大溝日出夫氏は「マイナス地点でも底打ち感はあり、今後も緩やかに地価は上がる見通し。ただ物件の選別が強まりバブル期のように都市に引きずられ一斉に上がることはない」と指摘する。

(2017年3月23日日本経済新聞朝刊5面抜粋)

まだら模様の地価上昇(下) ホテル席巻、都心急騰 郊外・地方へ マネー移る

東京都豊島区のJR大塚駅前。JR東日本が昨年末開いた競争入札に約10社が殺到した。落札したのはアパホテルだ。落札額は推定50億円弱。「我々の採算ラインの1.5倍」と、マンション会社の担当者はため息をつく。

東京都心部の地価上昇に拍車をかけているのが、訪日客の増加に伴う建設ラッシュが続くホテルだ。ホテル業者は昨年から入札に現れ始め、超高額で土地をさらっていくようになった。

平等にチャンスが巡る競争入札の増加が、“新参者”のホテル業者には追い風になっている。株式市場でコーポレートガバナンス(企業統治)が重視される中、上場企業は遊休地などをなるべく高値で売却するため、相対ではなく競争入札を増やしているからだ。

競争入札の割合は取引の9割を超え「安く仕入れられなくなった」と大手不動産トップはぼやく。ホテル業者による高値落札につられて、都心のマンション価格も急騰している。

「もはや都心部に買える物件なんてない」。上場不動産投資信託(REIT)運営会社トップは話す。今回の公示地価では港区の六本木交差点にある8階建てビルの土地が1㎡約800万円。日銀の金融緩和前の13年から35%も高い。不動産サービスのCBREによると、都心オフィスの物件購入額に占める毎年の賃貸収入を示す利回りはこの間、1ポイント下がった。もうけは薄くなっている。

投資マネーは都心の一級物件に見切りを付け、割安な周縁部や老朽化した雑居ビルの改修などに活路を見いだし始めた

1月末、シンガポールの不動産最大手キャピタランドが日本で510億円の買い物をした。両国国技館のはす向かいに建つ築12年の「国技館フロントビルディング」や横浜市西区のビルなど4物件。利回りは約4%だ。賃料で投資額を取り戻すには25年かかる。

※「国技館フロントビルディング」東京都墨田区横網1-10-5

優良物件の目安となる利回りは5%程度。築年数や立地からみても得な投資といえない。利回りが3%台の東京都心よりましというのが買いに走った理由だ。

割安物件へのシフトが、都心部の過熱にブレーキをかける一方で、地方物件の底上げにもつながり、今回の緩やかな地価回復を生んでいる。

ただ変調の兆しもある。不動産・ホテル業者の旺盛な投資を支えてきたのは、日銀の金融緩和を背景にした金融機関の低利融資だ。

16年には前年比15%増で過去最高の12兆円を不動産業界に融資した。だが三菱UFJ信託銀行が不動産ファンド運用会社に金融機関の融資姿勢を尋ねたところ、直近2回の調査で「分からない」「やや悪化」との回答が増えた。1月調査では新規融資について、2割が「やや悪化」と答えた

景気の本格回復を見通せない中、不動産業界へのマネー供給の行方が、地価の先行きを占うポイントの一つとなる。

(2017年3月24日日本経済新聞朝刊5面抜粋)

「まだら模様」の実態は以下の通りだ。

●都心居住

高齢化や共働き世帯の増加で、就業地や居住地が駅に近い利便性の高いエリアにシフトしている。JR明石駅(兵庫県)前に野村不動産が34階建てマンションを建てたが、相場の2〜3割高いにも関わらず、199戸即日完売した。購入者の6割は50代以上だった。これら都心居住の流れが地方に進んでいるのも特徴だ(コンパクトシティとは?「居住誘導区域」外の不動産はこれから価格が下がる)。

●タワマン節税とアパート建設ラッシュ

相続税改正に伴う基礎控除が縮小され課税対象者が増加したため、節税対策としてタワーマンション購入やアパートを建てる人が増えた。また、サラリーマン大家なる個人投資家も増えている。都心の利回り低下により地方へと投資マネーが移っており、宮城県では4.7%、福岡県では2.7%上昇した(ともに商業地)。

●インバウンド需要

大阪のミナミが急上昇。41.3%上昇した道頓堀の「づぼらや」を筆頭に大阪は商業地の上昇率1〜5位を独占した。京都市も同様だ。訪日外国人の勢いは一時期ほどではないが、観光客向けの出店やホテル開発などが地価を底上げしている。

●物流施設用地の需要

スマートフォンの普及によりネットショッピングの利用者は増加し続けており、人口の多い大都市に集中している。ネットショッピングが広がるに連れて、大都市に「陸の倉庫」が必要となっている。圏央道入間インターチェンジに近接する埼玉県入間市の工業団地は、物流施設の建設が進み、工業地の上昇率10.3%とトップだった。

 

今はバブルなのか?

価格が高騰すると、それを吸収する旺盛な需要がなければ売れなくなるのは決まっている。需要と供給の関係だ。

バブルという言葉の定義は様々あるが、実際に消費者が買えない値段になったらバブルだろう。バブルになると売買しているのは実需ではなく投資家や不動産業者だからだ。実需を伴っていない不動産売買は、業者や投資家間でのババ抜きと同じであり、最後に誰かがババを引かなければならない。

先行して上昇してきた地域では上昇の勢いが鈍っており、東京都の千代田、港、中央の都心3区はそろって住宅地上昇率が前年より縮小しており、局部的ではあるが東京都心部の新築マンションはバブルだといえる。

マンションはバブルなのか?「異変 マンション市場」を読み解く

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2017.03.20

しかし、今が90年代のバブル期と同じかといえばそれは違う。

1988年の公示地価は全国平均の全用途が前年比21.7%上昇、東京圏に限ると65.3%も上昇した。当時は転売を目的にした投機が全国に広がり、地価も全体的に上昇した。一方、今年の公示地価をみると、調査地点のうち4割が下落しているし、近接する地域でも利便性によって上昇と下落がまだら模様だ。

全用途が2年続けて上昇するのはファンドバブルと呼ばれた2007~08年以来だが、現在の地価の水準は直近のピークにも及ばない。08年の地価水準を100とすると、商業地は83、住宅地は85.7と、リーマン・ショックによる落ち込みを未だに回復していない。

(参考)地価高額地点

全国・商業地の地価高額地点
順位 地点 価格 前年比変動率
1 中央区銀座4-5-6(山野楽器銀座本店) 5,050 25.9%
2 中央区銀座5-4-3(対鶴館ビル) 4,300
3 中央区銀座2-6-7(明治屋銀座ビル) 3,700 28.9%
4 中央区銀座7-9-19(ZARA) 3,660 27.1%
5 千代田区丸の内2-4-1(丸の内ビルディング) 3,490 6.4%
全国・住宅地の地価高額地点
1 千代田区六番町6番1外 375 7.8%
2 港区赤坂1-14-11 368 9.9%
3 港区白金台3-16-10 310
4 千代田区三番町6番25 288 7.9%
5 千代田区一番町16-3 281 7.7%
価格は1㎡あたり万円、変動率%、地点はすべて東京都、―は比較できず
まだら模様の地価上昇

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。 主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。