大阪の不動産はバブルなのか?ええ、大阪市のマンションがバブっています

ついに東京23区の中古マンションの値上がりが止まったみだいだ。

中古マンションの値上がりが止まった。不動産調査会社の東京カンテイが24日まとめた価格情報によると、2月の東京23区の販売希望価格(70㎡換算)は前月と同水準の5162万円。1月まで19カ月連続で上昇が続いていた。市場では「全般に頭打ち感が出ている」との見方が広がっている。[…]これまでの価格上昇を好機と見た保有者が、物件を高値で売り出すケースが増えている。買い手から見ると逆に割高感が強い。「売り手と買い手の希望価格の差が広がっている」(三井不動産リアルティ)という。

(2016年3月24日日本経済新聞夕刊3面より抜粋)

不動産は(不動産に関わらず全てだが)需要と供給のバランスで成り立っている。不動産を買いたい人が多くなるか、そもそも供給する不動産の戸数自体が減れば不動産価格は上がるし、不動産を買いたい人が減るか、そもそも供給する不動産の戸数自体が増えれば不動産価格は下がる。当たり前のことだ。

東京23区価格推移

参照:東京カンテイ

一昨年くらいから東京はバブってると不動産業者から聞いていた。ここでのバブっているというのは値段が上がりまくっているという意味だ。価値観は人それぞれだからなんとも言えないが、いくら東京23区とはいえど、いくら販売希望価格とはいえど、中古マンションで5,162万円は高くないだろうか。2013年の相場から約1.3倍の水準だ。ここが頂点でもさほど驚かない。

バブルという言葉の定義は様々あるが、実際に消費者が買えない値段になったらバブルだろう。バブルになると売買しているのは消費者が購入する実需ではなく投資家や不動産業者だからだ。

東京の人口は増加しているとはいえ、日本は人口減少社会に入っている。日本という大枠から見たときに需要が増えていくとは思えない。そこで気になったのが大阪だ。大阪市内もバブっているという話を最近よく聞く。しかしながら、「大阪府の人口が68年ぶりに減少!」(2016年2月22日『2015年国勢調査(10月1日現在)の速報値』より)というショッキングなニュースを見ていただけに、本当に大阪市の不動産はバブっているのか?と疑問を抱くようになった。(ちなみに大阪市自体は26,428人増加している。)そこでいろいろと調べてみた。

国土交通省が22日発表した2016年1月1日時点の全国の公示地価は8年ぶりに上昇した。

(2016年3月23日日本経済新聞第二部1面より抜粋)

もしや……日本は(アベノミクスにより)バブっているのかと?

日本全国地価推移画像byイクラちゃんねる

参照:土地代データ

うーんこの……というところだろう。かつてのバブルと比べたら全く比べ物にならない。日本全体はバブルではない。人口が減っているのだから当たり前だ。やはり人口が集中している大都市が伸びているということなのだろう。

東京23区と比較して大阪市のマンションはどうなのだろうか。

大阪市価格推移

参照:東京カンテイ

東京23区は止まったみたいだが、大阪市の勢いは凄まじい。2月の大阪市の中古マンションの販売希望価格(70㎡換算)は前月比+2.7%の 2,706 万円と 14 ヵ月連続で上昇した。東京23区の2月の5,162万円が前年同月に比べて15.8%増だったのに対し、大阪市は22.1%増と上昇の勢いが増し、凄まじく上がっている。他の都市と比べても一目瞭然だ。

東京カンテイ201603-1

参照:東京カンテイ

ちなみに大阪府を含む近畿圏のマンションが凄まじく上昇しているわけではない。大阪市のマンションが凄まじいのだ。

東京カンテイ201603-2

参照:東京カンテイ

さらにいうと、大阪市の中心6区(北区・中央区・福島区・西区・浪速区・天王寺区)が凄まじい。

東京カンテイ201603-3

参照:東京カンテイ

上記を見ると、東京都心6区(千代田区・港区・新宿区・渋谷区・中央区・文京区)は昨年12月を頂点に下落し始めている。大阪市は、周辺の市区町村からの市内回帰・都心回帰の動きはあるが、大阪オリンピックがあるわけでもないし、特段大阪市のマンションを買う理由はない。上がり続ける理由もない。

大阪市のマンション価格上昇の背景には、①東京のマンション価格が上がりすぎて割安感がなくなったこと(=インカムゲインの減少)②東京のマンション価格の上昇が一服し値幅益を取りに行くキャピタルゲインを狙いにくくなったことから、不動産業者や投資家が、東京に比べて相対的に割安で、価格の上昇を見込むことができる大阪市のマンションにマネーが移ったことを意味している。

実際に消費者が買えない値段になったらバブルと言ったが、昨年の同月より2割以上価格が上昇しているのであれば、消費者はどのように考えるだろうか。転勤等様々な理由の中で、必要に迫られて購入する人はともかく、今すぐに必要ではないという人は様子見になるだろう。あなたが購入する立場だったらどうだろうか?

それでなくとも、2016年に入って日経平均の乱高下(下落)が続き、購買マインドは下がり気味だ。大阪市のマンションは東京に比べてまだまだ安いと言う人がいるが、ここ5年ぐらいの推移を見ても、大阪市6区の相場は2,000万円台半ばから後半だ。この金額こそが、直近5年における大阪市のマンションの相場だったのだ。この金額であれば購入しても良かった金額とも置き換えることができる。

話題になっているマイナス金利については、お金を借りて投資する投資家や不動産業者にとっては、金利低下は追い風になるだろうが、実際に購入する消費者にとっては、追い風にはなっても、既に何年にも渡って過去最低の住宅ローン金利の水準であり、別に急いで購入を決断を迫られるような施策ではない。

それでも価格が上昇しているということは、購入の勢いが強く、需要があるということなのだろうか?

今まで見てきたのはあくまでも中古マンションの販売希望価格のデータだ。

実際の需要と供給がどうなっているか参考となるデータがある。

近畿レインズ201603-1

参照:近畿レインズ

これは近畿レインズが発表している「2016年2月近畿圏中古住宅市場の需給状況」で、実際の成約物件需要側新規登録物件供給側に見立て、成約に対する新規登録の件数倍率及び価格乖離率から市場の需給状況を捉えたものだ。

今年に入って、不動産成約1件に対する新規不動産登録件数が急増している(ピンク色の線)。これは価格上昇に伴い、売却を考えている人が増えたというだけではなさそうだ。今までも価格は上昇してきていたからだ。むしろ、ここが価格の頂点と考えて、売却を考えている人が増加していることに加え(=供給の増加)、今までの状況と違って成約件数そのものが相対的に減った(=需要の減少)ということになる。

一方、不動産成約に対する新規登録物件価格の乖離率は昨年の夏を頂点に下落し始めている(緑色の線)。仮にこれを2013年の-9%で計算すると、3,000万円で成約したマンションの場合、同時期の新規登録物件価格は約3300万円だったということになる。約1割ぐらいの値下げは必要だったということだ。その価格の乖離率が小さくなるということは、新規登録で出した物件価格から値下げをしなくても売却できるか新規登録で出した価格が上がっていても、成約に至るまでに価格を下げる率が以前より少ないことをあらわしており、需要が多かったか、供給が少なかったことをあらわす。ただし、同期間において成約に対する新規登録件数(ピンク色の線)が一定であることから、供給が少なかったわけではなく、それを上回る需要が強かったことを意味している。それが下落し始めたということは、需要側からすると価格の乖離が大きくなっている(物件価格が高いので値下げしなければ成約できない)ということを意味している。買い手と売り手に温度差が出ているということだ。

それにも関わらず、マンション販売希望価格が上昇し続けているということは、実需ではないところでマンションの売買が動いているということになる。やはり、バブルなのだ。

ここまでマンションのことばかり説明しているが、戸建の人とっては戸建はどうなんだ!と思うだろう。

近畿レインズ201603-2

参照:近畿レインズ

残念ながらこのチャートを見て「バブルです!」とは全く言えない。マンションに比べて戸建はほとんど価格が上昇していない。

これには戸建の需要の構造が変化していることが大きいと思われる。

世帯あたり乗用車台数画像byイクラちゃんねる

参照:都道府県データランキング

これは平成26年3月末時点での「世帯あたり乗用車台数」のデータだ。大阪は0.66と10家族中6.6家族しか車を持っていない計算になる。戸建を買う理由は様々あると思うが、大きな理由の一つは、「駐車場代金がかからない」ことだ。それがそもそも車を持っていないということになると、戸建を買っても駐車場は必要ないだろう。つまり戸建は必要ないということだ。逆に車を持っていないのであれば、駅チカのマンションに需要が高まるのは自然の理だ。カーシェアリングが流行っているのも車を持たない世帯が増えているからだ。

もちろん、この0.66というのは単身世帯も含まれるので、全てそのことが理由だとは言えないが、平成17年3月末時点での大阪は0.729だったので、ここ10年間に渡って全体的に鑑みても、車を持つ世帯が減少していることがわかる。さらに大阪市に限ると0.416という数字になる。これは10家族あれば4家族しか車を持っていないということだ。大きな流れで郊外から都心へ回帰し、車を持たない世帯が増えていることが市内のマンション需要を上げている理由なのだ。

以上のことから、戸建を含めた大阪の不動産がバブっているのではなく、全体的に見て大阪市のマンションがバブっているといえる。

ここで間違えないで欲しいのは、バブルが崩壊するので今すぐに売れと言っているわけではないことだ。バブル崩壊なんてことは一言も言っていない。東京の価格上昇が一服したことで、大阪の価格上昇もいずれ近いうちに一服すると予想している。東京を差し置いて大阪だけ上昇し続けるということは今までの事例を見ても考えにくい。ただし、今の大阪市のマンションは需要と乖離しているところで動き始めているのでバブルということができるし、今の割安感が無くなれば、価格の是正はいずれ起きるということだ。

大阪の不動産の価格がさらに上昇するには、当然需要が大きくならなければならない。今のところは政府による需要の喚起策を期待するしかない。

大阪の不動産が上昇し、久々に大阪の不動産業界が盛り上がっているので、引き続き盛り上がりが続いて欲しいと願っているが、ふと、豊臣秀吉が亡くなるときに詠んだ辞世の句を思い出したので最後に書いておく。

露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことも 夢のまた夢

(豊臣秀吉)

「夢の中で夢を見ているような、はかない一生だった」という意味だが、大阪の不動産がこのようにならないことを願っている。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。
主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。