不動産売買契約書の「物件状況等報告書」とは

不動産売買契約書の「物件状況等報告書」とは

(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の契約書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)

不動産(土地・建物・マンション)を売買する際、契約書に「物件状況等報告書」という項目があります。

物件状況等報告書)

第11条 売主は、買主に対し、本物件について、本契約締結時における状況等を別紙「物件状況等報告書」に記載して説明します。

「物件状況等報告書」の意味と内容

こちらは、売主が不動産売買契約時の物件の状況について記した「物件状況等報告書」を記載し、買主に対して説明することを定めた条項になります。

買主が、不動産の購入を検討する際は、物件そのものが買主の希望条件に合致しているかどうかが重要な要因となります。あわせて、周辺環境や利便性などさまざまな要素を総合的に勘案した上、意思決定するのが一般的です。

とはいえ、外形上の判断はできたとしても、物件を1回または数回内覧しただけでは、物件について知り得ることは不可能です。買主が数回の内覧では確認できなかった問題点が後日発見された場合、その取扱いをめぐってトラブルになりがちです。例えば、物件に重大な物理的な不具合があったのにもかかわらず、物件の購入前に知らされていなかった場合は、買主に予定外の出費や利用上の制約が生じることになります。また、購入動機に影響を及ぼす可能性が高い周辺環境(近隣の建築計画など)や心理的な事項(自殺など)がある場合、その事実を事前に聞いていたならば、買主は購入しなかったといった場合もあります。

このように、買主は物件の状況について把握することが難しいことから、不動産売買契約締結時の状況等について、売主から買主に対し物件状況等報告書により説明することを定めたのがこちらの条項になります。売主から買主へ、売主が知っている物件情報について物件状況等報告書により開示・交付することにより、将来のトラブル発生の可能性を低くすることができます。

いくら宅建業者であっても、物件の物理的な不具合および物件の周辺環境や心理的な事項は、調査の範囲で全てを発見することは困難です。しかし、買主に知らされていなかった事項によってトラブルが生じた場合、買主から宅建業者に対し不具合解消のための売主への折衝を求められますし、宅建業者の調査不足を理由に損害賠償を請求される可能性もあります。このようなトラブルに巻き込まれないためにも、売主に、物件状況等報告書を利用して、買主へ伝えるべきとされる事実については正確かつ漏れなく記載するように促す必要があります。

国土交通省も「宅地又は建物の過去の履歴や隠れた瑕疵など、取引物件の売主や所有者にしか分からない事項については、売主等の協力が得られるときは、売主等に告知書を提出してもらい、これを買主に渡すことにより将来の紛争の防止に役立てることが望ましい」(平成15年7月10日国総動第71号、国土交通省総合政策局長から関係業者団体の長あて、「不動産流通の円滑化について」)としています。物件状況等報告書はこの考え方を参考に作成されたものになります。

「宅建業法の解釈、運用の考え方について」(平成15年7月10日改正)より一部抜粋その他留意すべき事項

5 不動産の売主等による告知書の提出について

宅地又は建物の過去の履歴や隠れた瑕疵など、取引物件の売主や所有者しか分からない事項について、売主等の協力が得られるときは、売主等に告知書を提出してもらい、これを買主等に渡すことにより将来の紛争の防止に役立てることが望ましい。

告知書の記載事項としては、例えば売買であれば、

①土地関係:境界確定の状況、土壌汚染調査等の状況、土壌汚染等の瑕疵の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺土地の過去及び現在の利用状況

②建物関係:新築時の設計図書等、増改築及び修繕の履歴、石綿の使用の有無の調査の存否、耐震診断の有無、住宅性能評価所等の状況、建物瑕疵の存否又は可能性の有無、過去の所有者と利用状況

③その他:従前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築等に関わった建設業者、不動産取得時に関わった不動産流通業者等

などが考えられ、売主等が知り得る範囲でこれらを記載してもらうことになる。

なお、売主等の告知書を買主等に渡す際には、当該告知書が売主等の責任の下に作成されたものであることをあきらかにすること。

物件状況等報告書(土地建物・土地用)

物件状況等報告書(土地建物・土地用)

物件状況等報告書(区分所有建物用)

物件状況等報告書(区分所有建物用)

物件状況等報告書と瑕疵担保責任

瑕疵(かし)とは見えない欠陥や不具合のことをいいます。瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは、その不動産に瑕疵があった場合に売主がその責任をもたなくてはならないということを意味します。

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)についてわかりやすくまとめた

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2017.03.07

一般的な不動産売買契約書は、売主が買主に対して負う瑕疵担保責任について、その範囲を土地及び建物の4種類(雨漏り、シロアリの害、建物構造上主要な部位の木部の腐食、給排水管の故障)に限定(4種類の瑕疵)、かつ引渡しから3ヶ月以内に請求のあったものに限り、その修復義務を売主に課すこととしています第13条)。売主はこれ以外の瑕疵担保責任を負担しません。このように瑕疵担保責任の範囲の制約されていることにより、売主は保護されています。

不動産売買契約書の「瑕疵の責任」とは

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しかし、売主を保護するだけでは買主に対して不公平になります。そこで、こちらの条項の物件状況等報告書は、売主に対し正しく情報開示させる義務を課し、買主の利益を保護し、売主と買主の公平を図っているのです。

もし、土地及び建物の4種類の瑕疵があっても、売主がこの内容を物件状況等報告書に記入して買主に説明しれば、FRK契約書の第13条第5項に定めがある通り、瑕疵修復の対象外となります。瑕疵担保責任を免責する取り扱いを売主が受けるためには、不具合の事実を具体的に記入(例:雨漏りが2階和室に発生)する必要がある旨を、宅建業者が売主に説明し、売主がその不具合の事実を物件状況等報告書に記入することが必要です。

また売主は、土地及び建物の4種類の瑕疵以外についても、買主にとって利用上や財産上の影響が及ぶ事項が存在する場合は、物件状況等報告書に記入の上、買主に説明しなければなりません。特に、土地に関する不具合(地盤沈下、擁壁の状況、家屋の傾き、越境等)や心理的な事項(自殺、他殺等)や周辺環境(近隣の建築計画等)は説明が漏れると、後日大きなクレームになることがありますので、宅建業者は、該当する事実がある場合は、売主に必ず記入・説明することをを促す必要があります。

ただし、売主に全て任せるのではなく、不動産のプロとして宅建業者の立場からも、気付いた建物や土地の不具合については、売主にその確認を求めるとともに、買主への説明が必要な事項について物件状況等報告書に記載されていない場合は、売主に対し、物件状況等報告書の記入を促す必要があります。

売主は売買物件の評価を落すような事実は、できれば伏せておきたいというのが本音です。しかし物件状況等報告書は、売主の義務を負わせて買主を保護するものであると同時に、物件状況等報告書に記入がなされていれば、売主には記載事項について買主が知っていたものとして責任を免れるという効果もあることを売主に説明して、正確に記入してもらうことが必要です。

もし、売主が物件状況等報告書への記入を拒む事項があり、その内容を買主に告知しないことによりトラブルになることが想定される場合は、宅建業者の立場で重要事項説明書等への記入による買主の説明は必要となります。

なお、古屋など建物の解体を前提としない取引で、建物について瑕疵担保責任を免責(瑕疵担免責)とする不動産売買契約を締結する場合は、物件状況等報告書に瑕疵担保責任免責の旨、また、設備表には修復責任免責の旨を記載して手交します。

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物件状況等報告書の注意点

物件状況等報告書は、作成に時間と手間がかかりますが、購入希望者(買主)に対して売買物件の状況をなるべく早い時期に知らせる必要があるため、媒介契約締結後速やかに、売主に記入してもらうようにしてください。その際、売主には物件状況等報告書の「売主様控え」を手渡し、残りは仲介業者にて保管します。その後、不動産売買契約締結時に記載内容の変更がないかを確認し、売主、買主署名押印のうえそれぞれ1通保有することになります。もし変更が生じている場合は、売主に、改めて物件状況等報告書の作成を依頼します。

物件状況等報告書の記入については、売主が記入しなければなりません。記入の仕方がわからないとか、どの程度記入すれば良いのか分からないといった理由で、売主が宅建業者に記入の代行依頼してくる場合もありますが、物件の状況は、第三者である宅建業者が自らの責任で判断することができるはずがなく、しかも後日物件の状況に関しトラブルが生じた場合に宅建業者が代行したことが明らかになると、宅建業者はその責任を負うことになりかねませんので、物件状況等報告書の記入については、売主へのアドバイスをすることにとどめ、記入の代行は決して行わないようにしてください。

物件状況等報告書の記入・交付の注意点として、ここに記入されている状況について宅建業者が記載の内容を保証するものではないことを買主に説明し、誤解がないようにすることが大切です。

契約から引渡しまでの期間が長い場合、記入した物件状況等報告書の内容と、引渡し時の物件の状況に関し、変化が生じている場合があります。そのため、引渡し時までの期間が長い場合、宅建業者は売主に対して新たな不具合の発見がないか確認し、不具合が生じている場合は、不具合が発生した原因と、修復等の取り扱いが必要な場合には、売主に物件の引渡しまでに修復をするよう対応してもらうことが必要です。