不動産売買契約書の「設備の引渡し・修復」とは

不動産売買契約書の「設備の引渡し・修復」とは

(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の契約書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)

不動産(土地・建物・マンション)を売買する際、契約書に「設備の引渡し・修復」という項目があります。

(設備の引渡し・修復)

第14条 売主は、買主に対し、別紙「設備表」中「設備の有無」欄に「有」とした各設備を引渡します。
2 売主は、買主に対し、前項により引渡す設備のうち、「故障・不具合」欄に「無」とした「主要設備」にかぎり、使用可能な状態で引渡します。
3 売主は、買主に対し、前項の「主要設備」について、引渡完了日から7日以内に請求を受けた故障・不具合にかぎり、責任を負います。なお、その責任の内容は修復にかぎるものとし、その修復の範囲等は、別表(修復範囲等)中「設備の修復範囲等」の記載によります。
4 売主は、買主に対し、「主要設備」以外の「その他の設備」および「主要設備」のうち「故障不具合」欄に「有」とした「主要設備」については、故障・不具合があったとしてもその修復をしません。

「設備の引渡し・修復」の意味と内容

まず大前提として、一般的な不動産売買契約書では、設備について表記建物欄に『別紙「設備表」において売主が「有」とした設備を含む』と明記して、設備を売買対象に含めています

不動産売買契約書の「売買の目的物および売買代金」とは

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2017.10.20

第13条(瑕疵の責任)では、建物の瑕疵担保責任の範囲を4種類の瑕疵に限定し、設備については免責(責任を問われるのを免れること)としていますが、こちらの条項で、瑕疵担保責任とは別に、設備の引渡しと修復について売主に一定の契約上の義務を課しています。設備については、瑕疵担保責任の免責と引渡し・修復義務の負担を併せて定めることにより、売主と買主の公平を図っているからです。

設備は、建物が中古の場合、建物と同様に経年変化や使用に伴う性能低下、キズ、汚れ等があることが通常です。そのため、こちらの条項では、売主が買主に対して引渡す設備とその状態を、別紙「設備表」によって売主が買主に説明し、「故障・不具合」欄に「無」とした「主要設備」については、使用可能な状態で引渡すことを売主に義務づけています。

なお、売主は、使用可能な状態で引渡すとした「主要設備」の故障・不具合については、引渡完了日から7日以内に請求を受けたとき、別表「設備の修復範囲等」の記載による修復をする責任があります。なお、別表(修復範囲等)「設備の修復範囲等」は、売買契約に添付します。

別表2(修復範囲等)

別表(修復範囲等)「設備の修復範囲等」)

主要設備とは?その他の設備との違いについて

一般的な不動産売買契約書では、設備を「主要設備」と「その他の設備」に区分し、設備表で、一般的な生活をするうえで必要不可欠と思われる給湯関係・水廻り関係・空調関係等の設備を主要設備に、それ以外の照明器具や建具類等の設備をその他の設備に分類しています。

なお、設備については、故障・不具合を「無」とした場合と「有」とした場合とでは、契約上の効果に違いがありますので、売主にはその違いを十分に説明し、理解してもらうようにしてください。

設備の引渡しについて

売主は、建物の設備について、①設備表に「有」とした記載した設備を引き渡す義務、②設備表に「有」と記載し、故障・不具合を「無」とした主要設備を使用可能な状態で引き渡す義務、③設備表に「有」と記載し、故障・不具合を「無」とした主要設備を修復する義務があります。

売主は、引渡す設備のうち、「故障・不具合」欄に「無」とした主要設備については、使用可能な状態で引渡す責任がありますので、引渡しまでに故障・不具合が発生した場合には、使用可能な状態に修復して引渡さなければなりません。

売主が使用可能な状態で引渡すとした主要設備について、引渡し時の確認を確実に行い、その後の故障・不具合の修復義務は免責とすれば良いと思うことでしょう。しかしながら、引き渡し時に完全な確認作業を行うことは難しいことが多いため、一般的な不動産売買契約書では、引渡し後に買主が設備を点検及び確認して、故障・不具合があった場合、引渡完了日から7日以内にかぎり買主は売主に修復請求できることとしています

売主は、引渡完了日から7日以内に買主より請求を受けたとき、別表「設備の修復範囲等」の記載による修復をしなければなりません。

7日の期間については、民法の原則に則り初日不算入で計算します。

日、週、月または年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

民法第140条

具体的には、引渡完了日の翌日を1日目としてカウントします。例えば、2017年11月20日が引渡完了日であれば、2017年11月21日が初日となり、2017年11月27日が終了したときに請求できる期間が終わることになります。

7日の期間については、その間に実際に引っ越しをして入居を始めるかどうかにかかわらず、7日を経過した後は、買主は修復を請求することができなくなりますので、買主には、7日の請求期間の制限を説明して了解してもらい、引渡し後すぐに引越しをしない場合には特に注意して、7日が経過すれば引越し後の点検に関わらずと請求ができなくなること、そのため、引越しする前でも設備の点検、確認を十分に行い、故障・不具合があった場合は、引渡完了日から7日以内に請求することが必要であることを十分に説明してください。

設備の引渡し・修復の義務

設備表の作成について

買主は物件の引渡しが終わるまでは、設備が本当に使用できるかどうかわかりません。そのため「設備表」を使用して、売主が買主に対して設備の状況について告知することで、引渡し後に設備に関するトラブルを避けるのが設備表を作成する目的です。

売主には、媒介契約締結の際に、設備表の目的について十分説明するとともに、設備表の記載内容は、買主にだけでなく、購入を検討してるお客様にも参考情報として提供することを説明し、引渡す設備とその状況の確認を売主に依頼し、物件状況等報告書と同様に、媒介契約締結後速やかに設備表を作成してもらうようにします。もし、売買契約締結までの間に設備表の記載内容に変更が生じたときは、売主に改めて設備表に変更内容を記入していただく必要があります。

設備表の記入については、売主が記入しなければなりません。記入の仕方がわからないとか、どの程度記入すれば良いのか分からないといった理由で、売主が宅建業者に記入の代行依頼してくる場合もありますが、後日設備の状況に関しトラブルが生じた場合に宅建業者が代行したことが明らかになると、宅建業者はその責任を負うことになりかねませんので、設備表の記入については、売主へのアドバイスをすることにとどめ、記入の代行は決して行わないようにしてください。

冷暖房機のように複数記入欄が用意されている設備については、設置されている部屋を記入し、引き渡す設備ごとに、購入後、何年使用しているかなど買主に説明しておいた方がよいことを具体的に記入して、不動産売買契約締結時の状態を伝えます。

また、主要設備のうち、故障・不具合欄に有とした主要設備及びその他の設備については、故障・不具合があったとしても、修復義務を負わないことから、将来のトラブルを防止するため、故障・不具合がある場合は、その状況を「故障・不具合の箇所および具体的内容等」の欄に記入してもらうことが必要となります。また、使用不能な設備については、買主の意向で売主に撤去していただくことが必要となる場合があります。

売主が撤去する設備については、設備表における「設備の有無」欄を「無」とします。特に冷暖房機、庭木等を撤去した場合、撤去した箇所について補修・埋め戻しが必要となる場合がありますので、原則として売主の責任と負担ですべきことですが、その負担を誰が負うのか、あらかじめ決めておき、「故障・不具合の箇所および具体的内容等」欄または「備考」蘭に明記することが必要です。

設備表(土地建物用)

設備表(土地建物用)

設備表(区分所有建物用)

設備表(区分所有建物用)

主要設備について

給湯関係

給湯関係は、引渡し後買主から不具合の申し出が多い項目です。できれば使用年数等を記入して、引渡し後買主が当該設備を保守する上で参考となるようにします。特に長期間にわたり使用していなかった場合は、引渡し前に点検するようにします。また、凍結の可能性がある設備については、水抜き等の処置をします。取扱説明書、使用説明書、保証書等があれば、引渡し時に買主に引継ぎます。

水廻り関係

各種設備について、長期間の使用等に伴う性能の劣化・不具合があれば具体的にその現象等を記入します。特に長期間にわたり使用していなかった場合は、引渡し前に点検するようにします。また、凍結の可能性がある設備については、水抜き等の処置をします。洗面設備についてはひび割れ等について記入します。

空調関係

空調関係も、引渡し後買主から不具合の申し出が多い項目です。できれば使用年数等を記入して、引渡し後買主が当該設備を保守する上で参考となるようにします。特に長期間にわたり使用していなかった場合は、引渡し前に点検するようにします。設置場所は、その設備が設置されている場所のことで、スイッチの場所ではありません。

その他

インターホンの故障の有無等について記載します。なお、インターホンについては、マンションの場合、共有設備に該当する場合があり、その修復は管理組合を通じて行うことになる場合があります。ドアチャイムの故障の有無等についても記入します。

その他の設備について

照明関係

引渡す照明器具に、球切れやスイッチの故障等があれば備考欄に記入します。もし、撤去するものがある場合、その設置された場所(例:リビング)を記入します。

収納関係

原則として造付けではない家具は含まれません。たんすや金庫等で不要となったものは、売主の責任で処分します。各設備について、設置場所のほか、不具合があれば備考に記入します。

建具関係

建具関係の有無だけでなく、使用上の不具合箇所の有無も重要で、建具自体の歪みや窓ガラスの割れている箇所、網戸やふすまの破れ等について記入します。溝はあるのに網戸が入ってない場合の網戸や、間仕切り戸を取り払って2室を1室のように使用していた場合の戸の行方等もチェックし、記載します。

その他

マンションの場合のTV共視聴施設については共用設備に該当する場合が多く、その修復は管理組合を通じて行うことになる場合があります。

戸建の場合の車庫は、物件によっては独立した建物として登記されているものであり、必ずしも設置とはいえない場合もありますが、それらも含めて記入します。物置についても同様です。また、車庫・カーポートを「有」とした場合でも、その広さによって駐車ができる車種が限られます。もし軽自動車しか駐車できないのであればその旨を、それ以上の場合でも駐車可能な車種をわかる範囲で記入します。

戸建の場合の庭木については、敷地に植えられているもののほか、鉢植えのものまで含めて記入します。枝が隣地へはみ出していたり、倒れる危険等がある場合は、その旨記入します。また、撤去する場合は、撤去後の穴が残っていると危険なため、埋め戻すなどの措置を行います。

「特定保守製品」の有無について

消費生活用製品安全法に規定する「特定保守製品」に該当する設備が設置されている場合には「有」に◯を、設置されていない場合は「無」に◯をつけます。なお、現在「特定保守製品」として定められているものは、2009(平成21)年4月1日以降に製造・輸入された屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用・LPガス用)、屋内式ガスふろがま(都市ガス用・LPガス用)、石油給湯器、石油ふろがま、密閉燃焼式石油温風暖房機、ビルトイン式電気食器洗機、浴室用電気乾燥機の9品目で、製品本体に「特定保守製品」の表示がされていますのでご確認ください。

特定保守製品の設置が「有」の場合は、売主は特定保守製品の所有者となる買主に対して、製品自体に表示された点検期間に点検を行う必要があることと、特定製造事業者(メーカー)に対して所有者の氏名や製品の所在場所等の所有者情報を提供(登録・変更)する必要があることを説明します。

特定保守製品の点検や表示制度については経済産業省のHPをご覧ください。