不動産売買契約書の「契約違反による解除・違約金」とは

不動産売買契約書の「契約違反による解除・違約金」とは

(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の契約書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)

不動産(土地・建物・マンション)を売買する際、契約書に「契約違反による解除・違約金」という項目があります。

(契約違反による解除・違約金)

第16条 売主、買主は、その相手方が本契約にかかる債務の履行を怠ったとき、その相手方に対し、書面により債務の履行を催告したうえで、本契約を解除して表記違約金(以下「違約金」という。)の支払いを請求することができます。なお、違約金に関し、現に生じた損害額の多寡を問わず、相手方に違約金の増減を請求することができません。
2 違約金の支払い、清算は次のとおりおこないます。
(1) 売主が違約した場合、売主は、買主に対し、すみやかに受領済みの金員を無利息にて返還するとともに、違約金を支払います。
(2) 買主が違約した場合、違約金が支払い済みの金員を上回るときは、買主は、売主に対し、すみやかにその差額を支払い、支払い済みの金員が違約金を上回るときは、売主は、買主に対し、受領済みの金員から違約金相当額を控除して、すみやかに残額を無利息にて返還します。

「契約違反による解除・違約金」の意味と内容

こちらは、契約違反があった場合は不動産売買契約を解除できること、解除された場合には当事者の合意によって定められた違約金を請求できることを定めた条項になります。

契約解除には、①契約違反の事実があること②契約違反が違法であること③催告することの要件が必要です。

①契約違反の事実があること

こちらの条項では、解除事由として「本契約に係る債務の履行を怠ったとき」と定められ、すべての義務違反が解除事由になると考えられがちですが、それぞれの条項の義務の内容には軽重があり、解除事由になるかどうかはそれぞれにより異なります。

買主が第3条(売買代金の支払い)、売主が第7条第1項(引渡し)第8条(抵当権等の抹消)第9条(所有権移転登記等)第10条(引渡し完了前の滅失・毀損)のいずれかに違反すれば、条項の重要性から鑑みて、原則として解除事由になるものと考えられます。

しかし売主、買主が第5条(境界の明示)第11条(物件状況等報告書)第17条第1項(融資の申し込み手続き)第19条(諸規定の継承)に違反したとしても、実損害が出ればともかくとして解除事由になり得ない場合もあることに注意が必要です。また、売主が第14条(設備の引渡し)に違反しても問題はありますが、その損害の程度からみて解除事由になりにくいと考えられます。

②契約違反が違法であること

たとえ、売主または買主が契約違反をしたとしても、それが違法でなければ解除権は発生しません。例えば、第7条(引渡し)では、原則として、売主の物件の引渡しと買主の代金支払いとが、第9条(所有権移転登記等)では売主の所有権移転登記申請と買主の代金支払いが、いずれも同時履行の関係になっています。そこで、買主が代金の支払いを怠る契約違反の事実があっても、売主が物件の引渡し、所有権移転登記手続きを怠たっている事実があれば、この契約違反は違法にはなりません。逆の場合も同様になります。

③催告したこと

催告(さいこく)とは、違約した者に対して、期間内に契約通りに実行することを促すことです。相手方が債務の履行怠ったとき、書面により義務の履行を催告した上で、契約を解除して違約金の支払いを請求できます。こちらの条項では、解除の通知は書面により行うことを明文化しています。通常は配達証明付内容証明郵便により、例えば「代金を本書面到着後7日以内にお支払いください。お支払いいただけないときは、右期間経過を持って本契約を解除します。」という内容で相手方に通告することになります。

違約金の請求について

違約金として、当事者の合意により定め、契約書表記に記載した違約金を請求することができます。この違約金の額を一律売買代金の20%相当額と定めているケースもありますが、売主と買主の合意により違約金の額を定めることができるケースもあります。

民法上では契約違反を理由として解除すると、契約違反と相当因果関係にある損害を請求できることになっています。

解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

第545条第3項

債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。

第416条第1項

とはいえ、損害のうちどの部分がこの相当因果関係にあるのか明確ではありません。そこで、こちらの条項では、あらかじめ損害額を契約時に売主と買主が合意した金額に決めて、実損額が契約時に定めた金額を上回っても下回っても、その差額はお互いに請求できないこととしています。

違約金の額は、売主または買主がその債務の履行を怠ったとき、その当事者に相応のペナルティとして課せられる抑止力の意味もあります。違約金の額があまりにも少ないと、その抑止力が働かず、簡単に契約解除できる可能性が高くなり売主・買主とも不安定な状態におかれます。そのような状態をできるだけ避けるため、違約金の額は、手付金額または売買代金の10%ないし20%ぐらいを目安として設定すべきでしょう。

ちなみに、当事者は違約金を請求するにあたって、実損害の発生等の証明をする必要はありません

解除となった場合、買主側に解除前に所有権移転等の登記がなされていればその抹消登記を、本物件の引渡しを受けていればその明渡しを、また売主側に解除前に受領している金銭(申込金、手付金、内金等)があればその返済を、それぞれ速やかに行う必要があります。民法ではこのことを原状回復義務と呼んでいます。

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

民法第545条第1項

なお、売主・買主双方に前記のような義務があるときは、それらは同時履行の関係になります。

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。

民法第546条

また民法では、返済すべき金額については受け取った時から利息を付することを規定しています。しかし、こちらの条項では、この民法の考え方を適用していません。これは、買主違約の場合には違約された相手方に利息まで付する必要はないという考え方にたち、売主違約の場合には売主が支払うべき利息も違約金の中に含まれるという考え方にたって、簡潔に問題処理することを目的としているからです。

売主の違約により契約を解除し、覚書を作成する場合の覚書はこちら(記入する日付は本覚書締結日です。なお印紙は不要です。)

買主の違約により契約を解除し、覚書を作成する場合の覚書はこちら(記入する日付は本覚書締結日です。なお印紙は不要です。)

契約違反と契約の解除の関係について

契約違反があった場合、当事者は本契約を解除する以外に方法がないわけではなく、本契約を継続させたうえで損害賠償請求することも可能です。

こちらの条項は、本契約解除のときの特則であって、本契約解除以外認めない趣旨ではありません。例えば、本物件の取得を目的としている買主が、売主から引渡しを拒否された場合に、売主が違約したとして不動産売買契約を解除してしまうと目的を達することができなくなってしまいます。このようなとき、買主は本契約の解除をせずに売買代金全額の支払い等の買主の義務を履行した上で、売主に債務不履行すなわち履行遅滞があるとして本物件の引渡しと引渡し遅延にもとづく損害賠償請求することができます。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

民法第415条

債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

民法第416条

なお、この場合の損害賠償の額は、引渡し遅延と相当因果関係にある損害で例えば、居住用であればその間の賃料などの出費、店舗用であればその間の営業利益でしょう。もっとも、この額は、買主において現実に証明しなければなりません。

一方、売主にとっては、買主が違約した場合、契約を解除せずに履行を促してもあまり有利とはいえません。なぜなら、売主とっては利害は金銭のみなので、条項に従い不動産売買契約を解除して、定められた違約金を買主に請求し、さらに第三者に物件を売却することができるからです。

合意解除について

売主・買主お互いに合意解除するときは、こちらの条項の適用はありません。違約金を支払うのかどうか、また、その時期はいつか等々何を決めても、売主・買主の合意によるのであれば、原則として解除の仕方は自由です。

合意解除のときの覚書の例はこちら(記入する日付は本覚書締結日です。また、「本契約締結と同時に無利息にて返還します。」の「本契約締結」を「平成◯年◯月◯日までに」と読替えするのも可能です。なお印紙は不要です。)