不動産売買契約書の「売買代金の支払いの時期、方法等」とは

不動産売買契約書の「売買代金の支払いの時期、方法等」とは

(この項目では、FRK・宅建協会・全日・全住協の契約書を念頭に説明しており、書式や記載方法は微妙に異なっていますが、用語の意味や記入すべき内容は基本的に同じです。ここではFRKの記入方法を中心に解説しています。)

不動産(土地・建物・マンション)を売買する際、契約書に「売買代金の支払いの時期、方法等」という項目があります。

(売買代金の支払いの時期、方法等)

第3条 買主は、売主に対し、売買代金として、表記内金(以下「内金」という。)、残代金を表記各支払日までに現金または預金小切手をもって支払います。

「売買代金の支払いの時期、方法等」の意味と内容

こちらは、不動産売買代金の支払いの時期とその方法を定めた条項になります。

内金、残代金の支払いとは?

買主は、内金(代金などの一部分として前もって支払われる金)および残代金を、それぞれ支払期日までに支払う必要があります。内金および残代金は、手付金と異なり、法律的に売買代金の一部です。

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そのため、買主が内金や残代金の支払いをサボると、遅れたことに対する責任を負わなくてはなりません。民法は、「不可抗力をもって抗弁とすることができない」と規定しており、仮にどうにもならない事態で遅れたとしても、そのことを主張することはできません。

3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

民法第419条第3項

代金が支払われないために遅滞(期日に遅れること)になると、売主は、買主に対して債務不履行[さいむふりこう]で本契約を解除し、違約金を請求することができます。

また、契約を解除しないで、売主は未払い金額とその金額に年利5%(宅建業者が当事者の一方または双方であったときは年利6%)の損害金を加えた額を買主に請求することもできます。

金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。

民法第419条第1項

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。

民法第404条

商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。

商法第514条

ただし、この場合は売主が買主に物件を引き渡す必要があります。

買主は、支払期日を過ぎたとしても、解除されないうちは、未払代金と前記損害金を売主に支払うことによって本契約の履行(不動産を引渡してもらうこと)を求めることもできます。

支払期日について

買主が、定められた支払期日前に売買代金を支払うのは自由ですが、売主が、物件の引渡しを早くしなければならないわけではありません。しかし、売買代金を支払ったのに引渡しをしてもらえないとなるとトラブルをになりますよね。トラブルを防止するためにも、売買代金の支払いは、できる限り引渡しと同時に行わなければなりません。

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実務では、お金の引き出し、預け入れの利便性および保管の安全性を考慮して、金融機関の営業日(平日)を内金や残代金の支払期日とするのが良いとされています。

支払方法について

売買代金の支払いは、現金または預金小切手に限定されています。そのほかの小切手や手形により支払うことはできません。

銀行振込みにより売買代金が支払われることもあります。振込み方法には、電信扱いと文書扱いの2種類があり、また振込先によって、同行振込みと他行振込みとがあります。一般的に、同じ銀行の支店間の電信扱いが一番早く振込みを完了することができます。残代金決済当日に、売主が現金を利用する場合は、事前にその内容を確認し、同行間の電信扱いにより振り込んでもらうよう買主に依頼することも必要でしょう。

預金小切手について

預金小切手とは、支払銀行(小切手に支払人として記入されている銀行)が振出人(小切手を発行した者)になっている小切手で、略して「預手」(ヨテ)ともいいます。預金小切手を利用するには、その小切手の券面額と同一金額を振出人となっている銀行に支払い、小切手の交付を受けます。

預金小切手は銀行が振出人のため、不渡り(小切手の支払期日を過ぎてもお金が引き渡されず決済できないこと。)の間違いがなく支払を受けることができるので安全です。そのため、民法上、金銭債務の弁済は通貨をもってなすべきところ、社会通念上、通貨と同一であるものとして預金小切手による支払いも有効な弁済になっています。(最高裁昭和37年9月21日判決)

債権の目的物が金銭であるときは、債務者は、その選択に従い、各種の通貨で弁済をすることができる。ただし、特定の種類の通貨の給付を債権の目的としたときは、この限りでない。

民法第402条

一般的に、売買代金の支払いに使われる預金小切手には、小切手の表面に2本の平行線(横線または線引といいます。平行線に「銀行渡り」や「銀行」および「Bank」等の文字が入ります)を引きます。その横線が入っている小切手については、支払銀行は、所持人(小切手を持っている人)から取立を依頼された銀行、または支払銀行と直接取引のある人にしか支払えないことになっているため、その小切手にもとづく支払いが誰に行われたかがわかります。

横線を入れていない小切手もありますが、横線の入っていない小切手の場合、支払銀行へ持って行けば、所持人に支払われることから、小切手を拾った者や盗んだ者が使用する恐れがあります。万一のトラブルを考えると、横線を入れた小切手を使うべきでしょう。

預金小切手を受け取った売主も、現金化するには手形交換所における決済などの手続きがあるため、日数を要することは注意をしておかなければなりません。例えば、上記の見本の富山近郊の自分の取引銀行に取立を依頼(自分の取引銀行に小切手を預けるという形を取ります)した場合は、取立依頼日の翌日から起算して、銀行の2営業日目の午後に現金化できることになります。また、遠隔地の手形交換所決済の小切手の場合は、現金化にはさらに日数を要しますので、注意が必要です。

一括決済による取引の場合について

一括決済とは、売買契約を結ぶのと同時に、買主が売主に売買代金全額を支払い、売主が代金全額の受取りと同時に、物件の引渡しと所有権移転を行うことを意味します。主に契約後、引渡までの買主の債権保全(お金を確実に回収すること)が求められるようなときに行われます(売主が売買代金の支払いを急いでいるときにも行われます)。

(一括決済の特約)

売主、買主は、一括決済につき、第2条(手付金)、第10条(引渡し完了前の滅失・毀損)および第15条(手付解除)の各条項は適用されないことを確認しました。

不動産売買契約書の売買代金の欄に「本契約締結時支払い」と記載するとともに、手付金、内金、残代金の記載欄に抹消線を引きます。

一括決済の取引の場合

また、重要事項説明書「契約の解除等に関する事項」のうち、①の「手付解除」、②の「引渡し完了前の滅失・毀損による解除」の欄には「」にチェックを入れ、空欄に「一括決済につき民法第557条の手付に関する規定は適用されません。」と記入します。

買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

民法第557条第1項

非居住者等に対する所得税の源泉徴収について

非居住者等とは、海外居住者など日本に居住していない人を指します。

非居住者等から国内にある土地、建物等を譲り受けた者(買主)は、原則として譲渡対価を支払う際に10%の税率により所得税を源泉徴収しなければなりません。

これにともない、買主は、売買代金のうちから所得税相当額を控除(差し引くこと)して支払うことになるため、その取扱いについて次の特約例のとおり処理する必要があります。なお、源泉徴収した所得税については、売買代金支払い月の翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。

(非居住者等に対する所得税の源泉徴収)

1 売主は、自己が所得税法に定める非居住者(または外国人)に該当することを確認のうえ、買主が同法の定めにしたがい売買代金(建物にかかる消費税相当額を除いた金額)の10%相当額◯◯◯,◯◯◯円を売買代金から源泉徴収することを承諾します。

2 買主は、前項により第2条の手付金および第3条の売買代金の支払いに際し、表記手付金に対する源泉徴収税額金◯,◯◯◯円、表記第1回内金に対する源泉徴収税額金◯,◯◯◯円、表記残代金に対する源泉徴収税額金◯,◯◯◯円をそれぞれ控除して売主に支払います。

3 買主は、前2項により源泉徴収した金員を同法の定める所定の期日までに、自己の納税地を所轄する税務署に申告納付しなければなりません。

ただし、譲渡の対価の額(不動産売買金額)が1億円以下、かつ譲り受けた個人が自己またはその親族(配偶者・6親等内の血族及び3親等内の姻族)の居住の用に供するために譲り受けた場合には、源泉徴収の必要はありません。

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