土砂災害特別警戒区域・土砂災害警戒区域についてわかりやすくまとめた

土砂災害特別警戒区域・土砂災害警戒区域についてわかりやすくまとめた

土砂災害とは、「急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)」「土石流」「地すべり」を発生原因として生じる被害のことです。土砂災害の多くは大雨などが引き金で発生しますが、土砂災害の発生自体は、雨量だけでなく現地の地形・地質、土地利用形態などにより左右されるため、発生時期を正確に予測することは大変困難です。そのため、土砂災害危険箇所図や指定された土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域をインターネットで公表しています。

ここでは、土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域についてまとめました。

 

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは?

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは、土砂災害防止法に基づき指定された「土砂災害のおそれがある区域」で、土砂災害が発生した場合「住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがある区域」で「警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域」のことです。

土砂災害特別警戒区域とは異なり、区域内であっても開発行為や建築物等建築行為は制限されておりません

土砂災害警戒区域を「土砂災害防止法第7条第1項に該当する区域」ということもあります。

土砂災害防止法とは?

日本は、山地が7割を占めているため、地質的にもろく、毎年梅雨時期の集中豪雨や台風の大雨などにより頻繁に土砂災害が発生しています。土砂災害から生命や財産を守るため、従来から対策工事を行っていますが、土砂災害危険箇所は多く、すべての危険箇所に対して対策工事を完了するには、大変な時間と費用がかかります。

土砂災害防止法(土砂災害防止対策推進法[土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律])は対策工事だけでなく、土砂災害が発生するおそれがある土地の区域を明らかにし、警戒避難体制の整備などのソフト対策を推進することで、住民などの生命や身体を土砂災害から守るため制定されました。

一方、土砂災害の発生源に対する規制や対策工事の法律は土砂三法(急傾斜地法地すべり法砂防法)によって定められています。

土砂災害警戒区域に指定されたら?

土砂災害から生命を守るため、災害情報の伝達や避難が早くできるように、ハザードマップを作成して住民に知らせるなど、警戒避難体制の整備が図られます。

不動産取引(売買・交換・賃借)においては、宅地建物取引業者は、対象物件が「土砂災害警戒区域」内である旨を記載した重要事項説明書を交付し、説明を行わなければなりません。(宅建業法第35条第1項第14号)

不動産の重要事項説明書における「土砂災害防止対策推進法」とはなにか

不動産の重要事項説明書における「土砂災害防止対策推進法」とはなにか

2016.04.26

 

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)とは?

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は,土砂災害警戒区域のなかでも、土砂災害が発生した場合「建築物に損壊が生じ、住民の生命または身体に著しい危害が生じるおそれがある区域」で「一定の開発行為や居室を有する建築物の構造が規制されている土地の区域」のことです。

土砂災害特別警戒区域を「土砂災害防止法第9条第1項に該当する区域」ということもあります。

土砂災害特別警戒区域に指定されたら?

土砂災害特別区域内の土地・建物には次のような制限行為があります。

土砂災害特別警戒区域内の制限

①特定開発行為に対する許可制(土砂法第9条)

住宅宅地分譲(宅地用の土地)、社会福祉施設、幼稚園、病院といった災害時要援護者関連施設建築のための開発行為は、都道府県知事の許可が必要になります。

これは、今まで土砂災害の発生のおそれがある箇所にもかかわらず、十分な安全性が確保されないまま、住宅建築が続き、土砂災害が発生した際に貴重な人命が失われていることから、特別警戒区域において開発行為を許可制にし、安全性の確保を開発の段階から図ろうとするものです。

許可を得るためには、急傾斜地の崩壊・土石流・地滑りに応じて、土砂災害を防止するための対策工事が必要です。

②建築物の構造規制(土砂法第24・25条)

特別警戒区域内では、想定される衝撃の力に耐えられるよう、居室を有する建築物(家)の構造が規制されます。居室を有する建築物の建築行為(新築、改築、増築)は、都市計画区域外であっても建築確認が必要になります。すなわち、特別警戒区域内の建築物の建築などに着手する前に、建築物の構造が土砂災害を防止・軽減するための基準を満たすものとなっているかについて、確認申請書を提出して建築主事の確認を受ける(建築確認)が必要です。

つまり、土砂災害特別警戒区域内で家を建てたい場合は、土砂災害に対して安全な構造にしなければなりません。

土砂災害に対して安全な構造

具体的な構造基準は、建築基準法など土砂災害の原因となる自然現象ごとに定められています。

1.基礎

・基礎と一体の控え壁を有する鉄筋コンクリート(RC)造の壁

2.構造耐力上の主要な部分

・崩壊土砂の衝撃を受ける高さ以下にある構造耐力上主要な部分は、鉄筋コンクリート(RC)造とすること

3.外壁の構造

・急傾斜地に面する外壁は、崩壊土砂の衝撃を受ける高さ以下の部分を、鉄筋コンクリート造の耐力壁(建築基準法施行令第78条の2の規定による耐力壁で、開口部を設けないものに限る。)とすること

・この場合において、当該外壁に作用する衝撃力の強さに応じ、外壁の厚さや鉄筋の配置を定められたものにすること

4.適用の除外

・国土交通大臣が定める方法による構造計算によって、崩壊土砂の衝撃に対して安全であることが確かめられた場合、または急傾斜地と建築物の間の位置に鉄筋コンクリート(RC)造のへい(崩壊土砂を受け止める高さ以上のものに限る。)を設置する場合、その他国土交通大臣が定める安全上適切な措置を講ずる場合は、この限りでない。

③建築物などの移転の勧告及び支援措置(土砂法第26条)

都道府県知事は、危険な状態の建築物の所有者などに対して家屋の移転などの勧告をすることができます。住宅金融公庫の融資やがけ地近接等危険住宅移転事業による補助が支援措置として受けられます。ただし、指定されたことに対しての経済的な補償はありません。

1.住宅金融支援機構の融資

住宅金融支援機構の地すべり等関連住宅融資は、特別警戒区域からの移転勧告に基づく家屋の移転、代替住宅の建設、土地の取得等に必要な資金の融資を受けられます。(融資金利の優遇措置有)

2.住宅・建築物安全ストック形成事業による補助

特別警戒区域内にある構造基準に適合していない住宅(既存不適格住宅)を特別警戒区域から移転し、代替家屋の建設を行う者に対し、危険住宅の除去等に要する費用及び危険住宅に代わる住宅の建設に要する費用の一部が補助されます。こちらについては、補助制度を実施していない市町村もあります。

④宅地建物取引における措置(宅建業法第34条・35条第1項第14号・36条)

特定開発行為は、都道府県知事の許可を受けた後でなければ、当該宅地の広告や売買契約の締結を行なうことができません。また、宅地建物取引業者は、対象物件が特別警戒区域内にある場合、「特定開発行為の許可」について重要事項説明を行うことが義務づけられています

 

土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域についてのQ&A

ここでは、土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域についてよくある質問についてまとめました。

どのように指定されるのか

土砂災害危険箇所を基礎調査した後、区域を指定します。基礎調査の対象は、土砂災害のおそれがある土地で、過去の土砂災害の有無に関係ありません。基礎調査は、現地測量を実施したり、土石の到達範囲を計算し算出するなど詳細な調査となっているため、すべて基礎調査を完了するにはまだ多くの時間がかかります。一般的に、基礎調査が完了した後、順次、土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域に指定されて公表されます。

そして、土砂災害の自然現象(土石流、急傾斜地の崩壊[がけ崩れ]、地すべり)の種類に応じた区域の指定をします。

  • 土石流:山腹が崩壊して生じた土石等または渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象
  • 急傾斜地の崩壊:傾斜度が30°以上である土地が崩壊する自然現象
  • 地すべり:土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象またはこれに伴って移動する自然現象
土砂災害の種類

どこで指定区域を確認できるのか

現地に標識などは設置されず、図面により範囲を確認できます。なお、指定区域は1/2,500の平面図で公示されます。図面は、インターネット、市役所(町村役場)や建設事務所(支所)で閲覧できます。

インターネットで公開されている資料を不動産取引の添付書類に利用できるか

インターネットで公表している警戒区域の図面(PDFファイル)や画面等は、参考として情報提供しているものです。そのため、権利や義務の発生する不動産取引の資料として利用するのはふさわしくありません。不動産取引資料など正確な資料が必要な場合は、お住まいの市町村の役所役場、建設事務所(支所)などの窓口で取得し、確認する必要があります。(広島県「インターネットにおける公表内容」参照)

都道府県や市町村が造成を許可した宅地がなぜ、土砂災害区域等に指定されるのか

都市計画法や宅地造成等規制法などに基づいて開発許可を受けた宅地でも、開発区域外の斜面や渓流からの土砂によって被害(もらい災害)を受けています。このようなもらい災害にも土砂災害防止法は対応しています。これまでの開発に関する法律と目的が異なり、土砂災害防止法に基づき基礎調査が実施され、区域指定の対象になることがあるためです。

特別警戒区域に指定されると既存不適格の住宅は、ただちに移転勧告を受けるのか

既存不適格建築物について、直ちに移転勧告することはありませんし、そもそも移転勧告は、建築物の所有者などに自主的な改善措置を促すもので、強制力はありません。既存不適格とは、当初は適法であったがその後の法改正や指定変更などにより、現在では適法ではないことをいいます。

土砂災害危険箇所との違い

現在公表されている土砂災害危険箇所というのは、身近にある「土砂災害のおそれがある箇所」を確認し、土砂災害への備えや警戒避難に役立てるために公表されているものであり、法的規制はなく、土砂災害防止法に基づく区域ではありません。

土砂災害危険箇所調査では1/25000地形図で土砂災害のおそれがある箇所を把握しているのに対して、基礎調査では現地測量を実施し、1/2500の地形図で土砂災害のおそれがある箇所等を把握しているなど、調査の精度に違いがあります。そのため、土砂災害危険箇所図で示した土砂災害のおそれがある箇所と、土砂災害警戒区域・特別警戒区域図で示した土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域の範囲は異なります。

また、土砂災害危険箇所は、1999(平成11年)に国土交通省(旧建設省)の指導のもとに調査した結果で、基礎調査の対象は、土砂災害危険箇所(「土石流危険渓流」「急傾斜地崩壊危険箇所」「地すべり危険箇所」)をもとに、現地調査を踏まえて選定しています。(計算方法については国土交通省HPをご参照ください。)

土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域にある不動産は安くなるのか

結論からいうと、土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域に指定されると不動産価値は下がります

平成26年8月豪雨

こちらは平成26年8月豪雨による広島市の土砂災害の写真です。この土砂災害では、土砂災害警戒区域・土砂災害特別区域の指定だけでなく、基礎調査すら完了していない地域が多く存在し、住民に土砂災害の危険性が十分に伝わっていないことや土砂災害警戒情報が直接的な避難勧告等の基準にほとんどなっていないこと、避難場所や避難経路が危険な区域内に存在するなど、土砂災害からの避難体制が不十分な場合があることが認識される結果となりました。

この背景には、一般の市民から土地の資産価値の低下を嫌がる声が多く、指定が遅れていたという事実が見逃せません。つまり、土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域に指定されると不動産価値が下がるからに他ありません。買主の立場になってみてください。安全・安心の居場所としての家が、土砂災害特別警戒区域内や土砂災害警戒区域内にある場合、その家を欲しいと思うでしょうか。

また、国は「コンパクトシティ」の概念を打ち出し、立地の良い場所に「集まって住む」ことを政策としておしすすめています。そこで各自治体は、集まって住むべき場所として「居住誘導区域」を設定していますが、土砂災害特別警戒区域は【原則として、居住誘導区域に含まないこととすべき区域】、土砂災害警戒区域は【居住を誘導することが適当ではないと判断される場合は、原則として、居住誘導区域に含まれないこととすべき区域】に定められているのです。

居住誘導区域内の不動産価格は維持されますが、居住誘導区域外の不動産価値は下落します。

コンパクトシティ(居住誘導区域)とはなにか

指定解除されるには

基礎調査は、現地の自然条件や社会条件が変化することを考慮して概ね5年毎に見直すことになっています。そのため、現在は警戒区域等に指定されていなくても、今後の調査で指定される可能性があります。また、土砂特別警戒区域は,対策工事を実施したことや地形の変化などによってその指定事由がなくなったときは指定の全部または一部について解除される可能性があります。土砂災害警戒区域については、地形に変化がない限り区域の範囲の変更及び指定区域の解除は行われません。

 

土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域の調べ方

インターネットにより情報公開されている自治体は次のとおりです。

北海道

青森県

岩手県

宮城県

秋田県

山形県

福島県

茨城県

栃木県

群馬県

埼玉県

千葉県

東京都

神奈川県

山梨県

長野県

新潟県

富山県

石川県

岐阜県

静岡県

愛知県

三重県

福井県

滋賀県

京都府

大阪府

・大阪市:平成29年5月31日現在、土砂災害特別警戒区域・土砂災害警戒区域の指定はありません。

兵庫県

奈良県

和歌山県

鳥取県

島根県

岡山県

広島県

山口県

徳島県

香川県

愛媛県

高知県

福岡県

佐賀県

長崎県

熊本県

大分県

宮崎県

鹿児島県

沖縄県

土砂災害危険箇所についてはこちら

※こちらのページは国土交通省HPを参照しています。