不動産仲介大手の住友不動産販売の売上や利益を調べてみた

2017年3月期住友不動産販売決算

住友不動産販売の2017年3月期(2016年4月〜2017年3月)の決算が出た。

この度、親会社の住友不動産[銘柄コード:8830]が住友不動産販売[銘柄コード:8870]の株式を公開買付し、6月2日をもって東証1部から上場廃止となったため、最後の決算開示となる。(住友不動産販売は住友不動産の完全子会社になった。)

これまで不動産仲介大手4社(三井不動産リアルティ[三井のリハウス]、住友不動産販売、東急リバブル、野村不動産アーバンネット)のうち、最後まで上場していたのが住友不動産販売であったため、これをもって仲介大手の詳しい開示情報はなくなってしまうのは残念だ。

さっそく決算内容をみてみよう。

 

住友不動産販売とは?

住友不動産販売は、住友不動産の子会社で不動産流通部門を担っている。不動産流通部門とは、不動産仲介のことで、中古不動産売買をメインとして、新築マンションの販売代理(受託販売)や宅地の販売代理(不動産販売)、賃貸を業務として行っている。

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平成29年3月31日現在、全国に260店舗あり全て直営店舗だ。愛称は「住友の仲介・Step(ステップ)」で、住み替えを通じてお客様に住まいをステップアップしていただきたいという住友不動産販売の願いが込められたものだ。

2017住友不動産販売決算2

2017年3月期における仲介手数料収入は、三井不動産リアルティに次いで第2位となっており、中古不動産売買において2番目の大手不動産会社ということになる。

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住友不動産販売の売上(営業収益)・利益は?

売上高と営業収益の違いについて明確な区分は難しいが、簡単に言うと、製品や商品など有形物を販売する場合には「売上高」として表示する。一方、無形のサービスや手数料などを提供した場合の対価は通常、「営業収益」として表示される。住友不動産販売は、仲介手数料がメインの売上になるので営業収益ということになる。

営業収益 営業利益 経常利益 当期純利益
29年3月期 782億2500万円(+8.8%) 169億円(+9.8%) 170億2100万円(+9.8%) 118億3700万円(+15.9%)
28年3月期 719億1600万円(+3.7%) 153億9200万円(+8.7%) 154億9700万円(+7.7%) 102億1600万円(+14.0%)

営業収益は4期連続の増収で、前期に続き過去最高を更新、当期純利益についても平成20年3月期以来9期ぶりに過去最高を更新した。

2017住友不動産販売決算1

1.仲介業務

住友不動産販売の事業の柱であり、中古マンション・中古戸建を中心として不動産売買の仲介を行っている。

2017年3月期における取扱件数は、36108件と過去最高を更新したことに加え、都心部の不動産価格が大きく上昇したこともあり、取扱高(売買物件価格の合計)が1兆1930億4400万円と3期連続で1兆円の大台を突破した。営業収益(売買仲介手数料)においても612億1600万円と8期連続の増収となり、過去最高を更新した。

当期 前期 増減率
取扱件数 36108件 35987件 +0.3%
取扱高 1兆1930億4400万円 1兆656億5400万円 +12.0%
営業収益 612億1600万円 563億300万円 +8.7%
営業利益 180億200万円 165億900万円 +8.5%
2017住友不動産販売決算3

確かに過去最高なのだが、それほど取扱件数が伸びていないのが気になるところではある。

 

2.受託販売業務

デベロッパー(住友不動産など)の事業主が供給する新築マンション・新築戸建を事業主からの委託により、事業主に代わって顧客に販売する。

2017住友不動産販売決算4

首都圏における新築マンション市場の供給戸数は前期比4.4%の減少と3期連続の減少となり、平均初月契約率も8期ぶりに好不調の分かれ目となる70%を下回るなど、販売価格の高騰で需給ともに低調だった。

一方、住友不動産販売は、首都圏にある大型新築マンションがあったため、増収増益だった。

当期 前期 増減率
取扱件数 36108件 35987件 +0.3%
取扱高 1兆1930億4400万円 1兆656億5400万円 +12.0%
営業収益 612億1600万円 563億300万円 +8.7%
営業利益 180億200万円 165億900万円 +8.5%

 

3.賃貸業務

主に首都圏において、オフィスビルやマンション等の賃貸及び管理業務を行っている。

当期 前期 増減率
営業収益 21億5700万円 21億9900万円 −1.9%
営業利益 10億1800万円 10億5900万円 −3.9%

 

4.不動産販売業務

土地、建物などの仕入・販売業務等の不動産販売業務を行っている。具体的には、子会社のウエル東京ステップ・インベストメントを通じて不動産買取再販売を行っている。特に宅地販売が多く、城南地区(品川区・目黒区・大田区・世田谷区)を中心に好調だった。

当期 前期 増減率
営業収益 92億6100万円 83億3300万円 +11.1%
営業利益 5億7800万円 4億1700万円 +38.3%

 

5.その他

住宅ローンの事務代行業務やその他の業務を行っている。営業収益は5億5000万円、営業利益は2億8400万円だった。

 

決算からわかること

メインである不動産売買仲介を見てみよう。物件価格の上昇と共に手数料が上がっているので、収益は上がっているが、対して取扱件数がほとんど伸びていないので、物件価格の上昇が止まれば、横ばいになる。新築マンションの高騰とともに中古物件に流れ、中古物件も高騰化し始めているため、手数料収入が上がったわけだが、新築マンションの価格がすでに横ばいになっている中、昨年度と同じように中古物件の価格が上昇し、手数料収入が拡大するという状況は難しいのではないだろうか。

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なぜ住友不動産の完全子会社化になったのか

親会社の住友不動産の新築事業が衰退する中、中古住宅売買は有望な伸びしろ分野であり、活路を見いだしているからだ。野村総合研究所の発表によると、新築住宅は2016年度の97万戸から、2020年度には74万戸、2025年度には66万戸、2030年度には55万戸と減少していくと予想されている。

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特に不動産仲介という仕事は、在庫リスクがない。一般的に商売は、なにかモノを仕入れて、それを加工するなどしてお客様に売る。もし、そのモノが売れなかった場合、全部在庫になる。それが食品であれば廃棄処分しなければならない。しかし、不動産仲介には在庫が存在しない。なぜなら、売主が所有する家の売却をお手伝いする仕事だからだ。

そのため、在庫処分なんてない。売れなくて困るのは売主であって、不動産屋が値引きして売る必要はない。

「人の褌(ふんどし)で相撲(すもう)を取る」

不動産仲介の仕事はよくこのように表現される。人の褌で相撲を取るとは、「他人の物を利用して、自分が利益を得ること」という意味だ。他人の家を売って、仲介手数料をいただくのが不動産仲介の仕事であり、必要なスキルは不動産の知識と営業力だ。

人口減少社会に入っている日本において、住友不動産はじめ大手不動産デベロッパーが新築不動産をつくっていれば良い時代はすでに終わった。今後は、新築だけでなく、中古売買、賃貸、管理を一貫して行える総合不動産企業となって効率的に収益を上げるため、住友不動産販売を子会社化したと考えるのが妥当だろう。

 

2017年3月期住友不動産販売決算

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。
主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。