マンションの査定方法「取引事例比較法」についてわかりやすく説明する

マンションや土地の査定方法「取引事例比較法」についてわかりやすく説明する

不動産を売却する際は、査定してもらいますよね。

査定金額を出す方法として大きく3つの方法があります。

ここでは、その中でもマンションの査定価格を出すときに使われる「取引事例比較法」についてわかりやすく説明します。

 

取引事例比較法

取引事例比較法とは、売却する不動産と条件が近い不動産(同じマンションならより良い)の過去の成約事例(最終契約価格)を適切に選択し、平均㎡(坪)単価をベースに、比較物件と間取り・方角・現状・角部屋などを考慮の上、査定価格を出す方法です。ただし、不動産買取のように相場より大幅に価格が下回る場合は、事情補正といって含めません。また、景気や物価などの時点修正も考慮します。取引事例比較法は、中古マンションや土地の査定方法として多く利用されます。

マンション机上査定の求め方

例えば上記の場合、過去の成約事例の内容が専有面積76.11㎡・成約価格3600万円のため、3600万円÷76.11㎡で1㎡あたり47.3万円です。査定マンションは72.94㎡なので、単純に72.94㎡×47.3万円で3450万円が査定価格ということになります。これが机上査定と言われる査定方法です。

過去の成約事例については、不動産会社だけが利用できるレインズで調べることができます(2017年6月1日現在、不動産会社以外の人が見ることができるのはイクラちゃんねるのみです)。レインズに掲載している成約事例については、不動産会社であればどの不動産会社でも見ることができます。つまり、取引事例比較法を使った査定価格は、どの不動産会社が査定してもだいたい同じ価格が出てくるということになります。これが、いわゆる相場価格というものです。

不動産の相場価格とは成約価格であって売出価格ではない

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マンションも取引事例比較法で査定価格を出します。

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取引事例比較法以外、他にも以下のような査定価格を出す方法があります。

収益還元法

収益還元法とは、物件自体が将来どれぐらいの稼ぎ出せるのか、収益力に基づいて不動産の価格を求める方法です。当然ですが、その物件の収益力が高ければ物件価格も高くなり、収益力が低ければ物件価格も安くなります。住むための不動産、居住用不動産は稼ぐ力は求められませんので、この方法はアパートや賃貸マンションなど投資用不動産(収益物件)を査定方法として多く利用されます。

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原価法

原価法とは、今ある不動産と同じ建物をもう一度建てたときにいくら掛かるのかを計算(=再調達原価)し、建物が老朽化していたり設備が劣化している場合にはその分だけ評価額から差し引く(=減価修正)ことで、査定価格を出す方法です。土地付き建物の評価額を出す際には有効な計算方法と言われています。

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では、不動産の実務ではどのように査定しているのか、もう少し具体的に詳しくみてみましょう。

 

マンションの査定方法

不動産会社に査定を依頼すると「査定書」がもらえます。査定書の中身は「マンション価格査定マニュアル」に則り作成されています。マンション価格査定マニュアルは、取引事例比較法に基いて査定価格を出します。

マンション価格査定マニュアルとは、1980(昭和55)年の宅地建物取引業法改正により、媒介契約の制度が施行されたことに共に開発されたものです。

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宅地建物取引業者(不動産会社)が媒介契約において、媒介価額(査定価格)についての意見を述べる際には、根拠を明らかにしなければならないことが宅地建物取引業法により義務付けられました。

宅地建物取引業者は、前項第二号(当該宅地または建物を売買すべき価額またはその評価額)の価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。

(宅地建物取引業法第34条の2第2項)

この根拠を明らかにする方法の一つとして、建設省(現:国土交通省)委託調査による価格査定マニュアルが発表され、これを実現化したものが不動産流通推進センターの策定した価格査定マニュアルです。この「マンション価格査定マニュアル」は、不動産市場に出回っている新築以外の既存マンション、いわゆる中古マンションを対象とし、その査定価格を出すために利用されています。

価格査定マニュアルの査定の対象となるマンションは「居住用ファミリータイプマンション」で、居住用以外のマンションや定期借地権マンション、投資用マンション(ワンルームなど)、店舗ビルや事務所ビルの一部に併設された居住用マンションは対象としていません。

定期借地権マンションを査定の対象としない理由

・そもそも定期借地権マンションの数が少なく、取引事例が足りていない。
・取引事例比較による査定が慣習化していない。
・借りている土地に対する権利金や保証金がマンションごとの事情により異なり、定期借地権マンション同士での比較の場合でもコンサルタント的な分析を要するため。

借地権マンションとは、建物(マンション)は自分の所有(区分所有)だが、土地は自分のものではなく地主に借りているマンションのことです。当然、借りているので地主に対して地代を支払います。定期借地権とは、期間が決まっている借地の権利ということになります。例えば、定期借地権70年であれば、70年経てばマンションを取り壊し、更地の状態で地主に返還するということになります。

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同じ定期借地権マンションの中で取引事例がある場合には、そちらを参考にして算出するのが一般的です。

以下の手順で査定価格を出します。

実際に売買されたマンション(成約事例)を選びます。

査定を行うマンションと事例マンションのそれぞれについて「交通・立地条件」「周辺環境」「住戸の位置」「専有部分の状況」「維持管理状況」「敷地・共用部分の状況」の各条件について判定、評価を行います。この判定、評価の結果は評点(評価得点)で表されます。

2つマンションの評点の比較の結果と事例マンションの成約価格(売買価格)を基に、査定を行うマンションの査定価格を出します。

◯◯万円で成約した事例のマンションは、判定・評価の結果、評点は◯◯点、これを査定を行うマンションと比較すると、査定マンションの評点は◎◎点なので、査定価格は◎◎万円という計算になるという考え方

査定時に最低限必要な項目は以下の通りです。

項目 内容
年月日(査定/成約) 査定マンションの査定年月日
事例マンションの成約年月日
所在地 査定マンション・事例マンションの所在地
築年月 査定マンション・事例マンションの築年月
専有面積 査定マンション・事例マンションの専有面積㎡数
価格(成約) 事例マンションの成約価格

マンション査定条件記入用紙はこちらから

 

事例マンションの選び方

マンション価格査定マニュアルは取引事例比較法を使った査定方法であり、できる限り複数の事例を比較した上で、選定した1件の成約した事例のマンションと比較して査定価格を出すため、選んだ取引事例によって査定結果は変化します。選んだ事例が適切であれば、精度が高く信頼できる査定価格となります。

売却するマンションとできるだけ条件が近いマンションを選ぶと良いので、まずは同じマンションの成約事例がないかを探します。もし、同じマンション内に成約事例がなければ、近隣でよく似たような(同種)のマンションの成約事例を選びます。

同じマンション内の成約事例で、以下の①〜③の条件が全てそろう場合は、その事例を採用します

事例マンションの選定条件

①買い進み、売り急ぎ(買取)の特殊な事情がなく通常の条件下で取引された事例
②取引時点が過去1年以内の事例(成約日が査定時点から1年以内)
③専有部分等(専有面積・所在階・間取り)の状況が類似しているマンション
・【専有面積】:査定住戸と事例住戸の差が30㎡未満
・【所在階】:査定住戸と事例住戸の差が10階未満
・【間取り】:査定住戸と事例住戸が同一タイプ(LDK)
④査定マンションと事例マンションの最寄り駅が同じ(駅からの方向は関係なし)
⑤査定マンションと事例マンションの価格水準が類似した地域内にある
⑥査定マンションと事例マンションの総戸数が類似(差が50戸未満)
⑦査定マンションと事例マンションの建物地上階が類似(差が10階未満)
⑧査定マンションと事例マンションの築年数の差が±3年以内

同じマンション内の成約事例で上記①〜③の条件がそろわない場合は、①〜⑧を踏まえて近隣・同種のマンションの成約事例を採用します。

ただし、上記の選定条件は、可能な限り①〜③の条件に基いて事例を選択することを推奨したものであるため、わずかに条件が外れているが他に適切な事例選定ができない場合は、査定者の判断によりその事例を選んでも良いとされています。また、上記②と③の一方または双方がそろっていない場合は、同じマンションと近隣・同種のマンションと比べてどちらを採用するかは査定社が判断するものとされています。

近隣・同種のマンションを事例として選ぶ場合、以下の事項は禁止されています。

①新築分譲マンションとの比較
②徒歩圏マンションとバス圏マンションとの比較
③エレベータ付きマンションとエレベータなしマンションとの比較
④グレード(ネームバリュー)が異なるマンション同士の比較

これらは査定時の比較において物件の前提条件が合っていないため、事例マンションとしては選ぶことができません。

 

交通・立地条件について

査定マンション・事例マンション双方について、「交通の便」「立地条件」の項目を選び評点を求めます。

交通の便については以下を見て選びます。

・徒歩圏/バス圏の選択
・徒歩圏の場合、徒歩分数
・バス圏の場合、バス分数
・バス圏の場合、バス停までの徒歩分数
・バス圏の場合、バスの運行便数

立地条件については以下を見て選びます

・マンション周辺の環境
・店舗への距離
・公共施設への利便性

 

住戸位置について

査定マンション・事例マンション双方について、「住戸位置」「開口部の方位」「日照・通風」の項目を選び評点を求めます。

住戸位置については以下を見て選びます。

・エレベータの有無
・所在階
・最上階の住戸かどうか

開口部(窓がある部分)の方位については以下を見て選びます。

・建物の向き
・主要採光面(リビング)のバルコニー方位
・他の部屋の開口部

日照・通風については良いか悪いかについて選びます。

 

専有部分について

専有部分はお部屋の中のことです。そのためバルコニーは含まれません。査定マンション・事例マンション双方について、以下の項目を選び評点を求めます。

・室内の維持管理状況:内装の仕様やリフォーム、維持管理状況など
・柱・梁・天井の状況:リビングの天井高や柱、梁の状況
・住戸のゆとり:リビングやバルコニーの広さ、収納スペースの確保状況
・専用庭またはテラスの有無
・外からの騒音・振動:窓を閉めた室内での周囲からの騒音、振動の強弱
・眺望・景観:専有部分からの眺望景観
・バリアフリー対応状況:高齢者、障がい者への配慮の有無

 

維持管理状況について

査定マンション・事例マンション双方について、以下の項目を選び評点を求めます。

・適切な修繕計画の有無
・修繕積立金(月額)の負担額
・管理費(月額)の負担額
・共用部分の保守清掃の状況
・管理員の勤務形態(24時間管理・日勤・巡回など)
・管理受託形態:管理会社への委託形態(全部委託管理・一部委託管理・自主管理など)

 

敷地・共用部分について

査定マンション・事例マンション双方について、以下の項目を選び評点を求めます。

・土地の権利:マンション敷地の権利(所有権・地上権・賃借権など)
・建物の外観やエントランス:マンションの外観やエントランスにおける壁。床、天井の仕上げ
・耐震性
・省エネルギー性能
・セキュリティ設備:オートロックなど
・インターネット対応状況

 

流動性比率について

最後に流通性比率によって査定価格を調整します。

流通性比率とは、マンション査定価格に対して、最後にその物件が売りやすいか売りにくいか、という市場流通性(売りたい人に対して買いたい人の数が多い場合は売りやすいため流通性は高い)の度合いをいいます。流通性比率を判断して、必要に応じた調整を行います。

対象となる調整項目と調整比率は以下の通りです。1.00(100%)を基準とし、マイナス15%からプラス10%の範囲内で、売りやすければプラス、売りにくければマイナスとして評価します。

①価格(1.10〜0.85)
・査定価格が市場における売れ筋物件の価格帯を大きく逸脱していないか

②物件の需給状況(1.10〜0.85)
・地域における物件量が極端に多い、またはめったに物件が出ない地域か

③地域の特性(1.03〜0.97)
・地域的に知名度が高く売り物が出るとすぐに売れる地域か、逆に安くても敬遠される地域か

④その他(1.05〜0.95)
・上記以外に、特に加点・減点を考慮すべき市場性の要素がある(例:駐車スペースの有無など)
・居住者に不快感・不安感を与えるような施設の影響の有無

(査定価格◯◯万円 × 流動性比率) = 調整後の査定価格◯◯万円

これで完成です。これらの査定評価をもって不動産会社は売出価格の提案をします。

 

まとめ

これまでの情報をマンション価格査定マニュアルのシステムに入力すると、以下のような査定価格結果が出ます。

不動産流通推進センター価格査定マニュアルより抜粋)

不動産査定を依頼するとき、「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。机上査定は、「①過去の成約価格」「周辺の類似物件」「③不動産市場の動向」などのデータを元に、おおよその不動産査定金額を算出する方法です。つまり、不動産会社が不動産を見ずに査定する方法です。

机上査定でおおよその価格は出すことができます。しかし、おわかりのように、価格査定マニュアルを元に訪問査定をしなければ正確な査定価格を算出することはできません。

もし、本気で売却を考えていて、ご自宅の査定価格を知りたい方は、不動産会社に訪問査定を依頼しましょう。査定はどの会社であっても無料ですのでご安心ください。

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ABOUTこの記事をかいた人

坂根大介

イクラ株式会社代表。1986年大阪生まれ。関西大学文学部卒業。野村證券株式会社に入社し、国内リテール業務を経て、その後三井不動産リアルティ株式会社(三井のリハウス)にて不動産売買仲介を行う。不動産売買取引の契約実務や物件調査の経験をもとに、プロ向けに不動産の調査方法や用語解説、不動産市況、一般消費者向けに不動産業界の見えにくくわかりづらい不透明な情報をわかりやすく発信している。
主な資格は、宅地建物取引士、JSHIホームインスペクター、2級FPなど。