都市洪水想定区域・都市浸水想定区域についてわかりやすくまとめた

都市洪水想定区域・都市浸水想定区域についてわかりやすくまとめた

都市洪水想定区域(としこうずいそうていくいき)とは、大雨などにより、川の水が増して勢いよくあふれ出ることにより、洪水が想定される区域に指定されるもので、指定されると浸水した場合に想定される水深が公表されます。また、都市浸水想定区域(とししんすいそうていくいき)とは、大雨などにより、地表の水の増加に排水が追いつかず、用水路や下水溝などがあふれて氾濫したり、河川の増水や高潮(海水面の高まり)によって排水が阻まれることによって、住宅などが水につかる浸水が想定される区域に指定されるもので、こちらも指定されると浸水した場合に想定される水深が公表されます。

どちらも、大雨などにより、住宅が水につかる浸水の可能性があるエリアですが、浸水の原因によってそれぞれわけられます。

近年、ゲリラ豪雨などの発生により、都市部の河川流域において浸水被害が頻発しています。都市部における浸水は、都市機能の麻痺や地下街の浸水をもたらすなど重大な被害につながります。

ここでは、都市洪水想定区域と都市浸水想定区域についてまとめました。

浸水は2種類にわけられる

住宅や田畑などが水につかる浸水被害は、その原因から次の2種類に分けられます。

1 外水被害(がいすいひがい)

外水被害

堤防が切れたり、川から水が溢れるなど、川の水が原因で発生する浸水被害のことです。この堤防の決壊や河川の水が堤防を越えたりすることにより起こる氾濫を洪水といい、氾濫(はんらん)とは、大雨などにより、川の水が増して勢いよくあふれ出ることを指します。

2 内水被害(ないすいひがい)

内水被害

川が水で満杯になり、地区内の水が川に排水できなかったり、排水路の整備が不十分で、川に入るまでに生じる浸水被害のことです。いわゆる、溢水(いっすい:水があふれ出ること)または湛水(たんすい:水が溜まること)などの浸水を指します。このような浸水を内水氾濫(ないすいはんらん)ということもあります。

とはいえ、実際の洪水では、外水被害と内水被害が同時に生じたり、明確に区別をすることができない場合もあります。内水を排除しようとすると河川水位が上昇するなど、都市洪水と都市浸水とは相互に影響を及ぼす関係にあることから、都市の浸水被害対策にあたっては両者を一体的に考えなければなりません。

都市洪水想定区域とは?

都市洪水想定区域は、特定都市河川浸水被害対策法に定められています。

国土交通大臣は特定都市河川のうち一級河川の区間(河川法第九条第二項に規定する指定区間を除く。)について、都道府県知事は特定都市河川のうちその他の区間について、都市洪水が発生した時の円滑かつ迅速な避難を確保し、及び都市洪水による被害の軽減を図るため、国土交通省令で定めるところにより、それぞれ、流域水害対策計画において定められた都市洪水の発生を防ぐべき目標となる降雨が生じた場合にその特定都市河川のはん濫による都市洪水が想定される区域を、都市洪水想定区域として指定するものとする。ただし、その特定都市河川について、水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第十条第二項、第十一条第一項又は第十三条第一項若しくは第二項の規定による指定があるときは、この限りでない。

特定都市河川浸水被害対策法第32条1項

つまり、都市洪水想定区域とは、「特定都市河川の氾濫による都市での洪水が想定される区域」で、「都市洪水が発生した時の円滑かつ迅速な避難を確保する」「都市洪水による被害の軽減を図る」ことを目的としています。具体的には、市町村地域防災計画において、浸水の発生または発生の恐れに関する情報の伝達方法、避難場所、想定される水深の公表を行います。

指定するのは、国土交通大臣または都道府県知事で、都市洪水想定区域は、特定都市河川が水防法に基づく洪水予報指定河川である場合は除きます。

都市浸水想定区域とは?

都市浸水想定区域は、特定都市河川浸水被害対策法に定められています。

前項本文に定めるもののほか、特定都市河川流域の全部または一部をその区域に含む市町村の長、当該市町村を包括する都道府県の知事及び特定都市下水道の下水道管理者(特定都市河川流域の全部が一の市町村の区域内にある場合にあっては、市町村の長及び特定都市下水道の下水道管理者)は、共同して、当該特定都市河川流域について、都市浸水が発生した時の円滑かつ迅速な避難を確保し、及び都市浸水による被害の軽減を図るため、国土交通省令で定めるところにより、流域水害対策計画において定められた都市浸水の発生を防ぐべき目標となる降雨が生じた場合に都市浸水が想定される区域を、都市浸水想定区域として指定するものとする。ただし、その区域について、水防法第十四条の二第一項の規定による指定がされているときは、この限りでない。

特定都市河川浸水被害対策法第32条2項

つまり、都市浸水想定区域とは、「都市浸水(下水道の排水施設や河川に雨水を排出できないことによる内水による浸水)が想定される区域」で、「都市浸水が発生した時の円滑かつ迅速な避難を確保する」「都市浸水による被害の軽減を図る」ことを目的としています。具体的には、市町村地域防災計画において、浸水の発生または発生の恐れに関する情報の伝達方法、避難場所、想定される水深の公表を行います。

指定するのは、都道府県知事、市町村長、下水道管理者です。

都市洪水想定区域・都市浸水想定区域についてのQ&A

ここでは、都市洪水想定区域、都市浸水想定区域についてよくある質問についてまとめました。

なぜ、都市部の浸水被害が増加しているの?

人口急増に伴い、昭和30年代以降の急激な開発により、都市部において市街地が拡大してきました。開発前、雨水は土から地下に浸透し、河川に流れ込む水は抑制されていましたが、開発によってコンクリートなどに覆われた不浸透域(ふしんとういき)が増大したことにより、短時間に多量の表流水(ひょうりゅうすい:地表を流れる水)が河川に流入するようになりました。

その結果、都市部の河川では、平常時は流量が極端に少ない反面、台風時などに、流域に降った雨水が短時間に集中して流出し、浸水被害が頻発する「都市型水害」が発生するようになりました。すでに家が多く建ってしまい市街化(建物が多く建っていること)の進展した都市部においては、河道(かどう:川の水が流れる道筋)の拡幅や堤防のかさ上げ、洪水調整タム等の整備などの浸水被害の防止が困難となっています。

神田川洪水

特定都市河川浸水被害対策法とは?

都市部を流れる河川の流域において、著しい浸水被害が発生し、またはそのおそれがあり、かつ、河道等の整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難な地域について、①特定都市河川及び特定都市河川流域として指定し、②浸水被害対策の総合的な推進のための流域水害対策計画の策定、③河川管理者による雨水貯留浸透施設(うすいちょりゅうしんとうしせつ)の整備、④雨水の流出を抑制するための規制、⑤都市洪水想定区域・都市浸水想定区域の指定など、浸水被害の防止のための対策を図る法律です。

特定都市河川とは?

特定都市河川(とくていとしかせん)とは、市街化率がおおむね5割以上の都市部を流れる河川で、流域において著しい浸水被害が発生し、またはそのおそれがある(過去の実績または想定される年平均水害被害額が10億円以上)にもかかわらず、河道または洪水調整ダムの整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難であるものとして指定された川です。

特定都市河川として指定する区間に、一級河川の直轄管理区間が含まれる場合は国土交通大臣、それ以外の場合には都道府県知事が指定します。また、特定都市河川の流域と、特定都市下水道の排水区域をあわせて指定したものを特定都市河川流域(とくていとしかせんりゅういき)といいます。

特定都市河川流域

流域水害対策計画とは?

流域水害対策計画は、総合的な浸水被害対策を推進するために、特定都市河川の河川管理者、特定都市下水道の下水道管理者、関係都道府県知事及び市町村長が共同して策定するものです。

例えば、浸水を防ぐために、川へポンプによって排水できる施設を各自治体がつくると、間違いなく下流で水が溢れ出し、洪水が起きてしまいます。

流域水害対策計画

現場での混乱を回避するために、あらかじめ河川の水位などに応じて排水ポンプの放流量を制限する規定(運転調整ルール)を定めることが必要なわけです。このような内容を流域水害対策計画によって定めます。

そして、計画・策定にもとづき、雨水貯留浸透施設の整備等を行います。

雨水貯留浸透施設とは?

雨水貯留浸透施設(うすいちょりゅうしんとうしせつ)とは、雨水を一時的に貯めたり地下に浸透させたりして、下水道・河川への雨水流出量を抑制する施設のことです。

雨水貯留施設には、公園や駐車場などの地表面に貯留するタイプと、建物の地下に貯留するタイプがあります。貯留した雨水をポンプで汲み上げて散水等の雑用水として利用することもできます。

雨水浸透施設には、浸透ますや浸透トレンチ、透水性の舗装なども種類があり、水害を防止すると共に地下水の涵養(かんよう:水が自然に土にしみこむこと)にも効果があります。

雨水貯留浸透施設

制限される行為とは?

特定都市河川流域における規制として、①雨水浸透阻害行為の許可等、②保全調整池に係る行為の届出、③保全調整池に係る管理協定、④流域内住民等の努力義務があります。

①雨水浸透阻害行為の許可等

宅地等以外の土地を宅地等にする場合で、一定規模(1,000㎡:条例により500㎡以上1,000㎡未満とする範囲内で別に定めることができます)以上の雨水浸透阻害行為(うすいしんとうそがいこうい:土地からの流出雨量水を増加させるおそれのある行為)は都道府県知事等(指定都市、中核市、特例市または都道府県の条例で規定された事務処理を行うこととされた市町村長を含みます)の許可が必要です。

雨水浸透阻害行為の許可等

「宅地等」に含まれる土地とは、宅地、道路、池沼、水路、ため池、鉄道線路、飛行場を指しており、「宅地等」以外の土地とは、山地、林地、耕地、原野(草地)、締め固められていない土地を指します。

②保全調整池に係る行為の届出

一定規模(100㎥:条例により100㎥未満で別に定めることができます)以上の防災調整池として都道府県知事等が指定します。保全調整池(ほぜんちょうせいち)の機能を阻害するおそれのある行為(埋立て等)は、都道府県知事等に届出しなければなりません。また、都道府県知事等は、必要な措置を助言、勧告することができ、特定都市河川流域内に存する防災調整池の所有者、その管理について権限を有する者は、防災調整池が有する雨水貯留機能を維持するよう努めなければなりません。

③保全調整池に係る管理協定

地方公共団体は、保全調整池の所有者と協定を締結し、保全調整池を管理することができます。また、管理協定は保全調整池の譲受人等に対しても効力を有します。

④流域内住民等の努力義務

特定都市河川流域内に居住し、または事業を営む者は、浸水被害の防止を図るための雨水の一時的な貯留、地下への浸透に自ら努めるとともに河川管理者等がこの法律の目的を達成するために行う措置に協力しなければなりません。

特定都市河川流域に指定されたら?

特定都市河川流域内で不動産取引を行う場合、宅地建物取引業者は、対象物件が「特定都市河川区域」内である旨を記載した重要事項説明書を交付し、説明を行わなければなりません。(宅建業法第35条)

不動産の重要事項説明書における「特定都市河川浸水被害対策法」とはなにか

不動産の重要事項説明書における「特定都市河川浸水被害対策法」とはなにか

2016.04.21

都市洪水想定区域・都市浸水想定区域の指定について

流域水害対策計画において定められた都市洪水・都市浸水の発生を防ぐべき目標となる降雨が生じた場合の「都市洪水が発生した時の円滑かつ迅速な避難を確保する」「都市洪水による被害の軽減を図る」ことを目的として、特定都市河川の氾濫による都市洪水が想定される区域を、都市洪水想定区域として指定、都市浸水が想定される区域を、都市浸水想定区域として指定されます。

区域の指定・公表にあたっては、指定の区域及び浸水した場合に想定される水深を明らかにしなければなりません。また、市町村防災会議は洪水等情報の伝達方法、避難場所、地下街への情報伝達方法などを市町村地域防災計画に定め、住民に周知させるよう努めなければなりません。

浸水想定区域との違い

都市洪水想定区域・都市浸水想定区域・(洪水)浸水想定区域とも全て、浸水に対して円滑な避難行動や平常時からの防災意識の向上に活用されるという意味では同じです。

浸水想定区域は、主に河川の堤防の決壊や河川から溢れた水により発生した浸水を対象としています。これは、都市洪水想定区域と同じで、都市洪水想定区域は、大雨などにより、川の水が増して勢いよくあふれ出ることにより、洪水が想定される区域に指定され、いわゆる「外水被害」というものにあたります。

これらは、河川の指定によって異なり、河川の規模や重要度などによって、水防や整備のために河川を指定して、その目的に応じた浸水想定図を作成しています。

  1. 洪水予報河川:水防法に基いて指定し、河川管理者と気象台が洪水の状況や予想を発表する。
  2. 水位周知河川:水防法に基いて指定し、避難勧告等の目安となる水位に達したことを発表する。
  3. 特定都市河川:特定都市河川浸水被害対策法に基いて指定し、浸水被害の防止のための対策の推進を図る

浸水想定区域と都市洪水想定区域との違い

特定都市河川が洪水予報指定河川の場合は浸水想定区域、特定都市河川が洪水予報指定河川でない場合は、都市洪水想定区域となります。

国土交通大臣指定洪水予報河川
都道府県知事指定洪水予報河川

一方、都市浸水想定区域とは、大雨などにより、地表の水の増加に排水が追いつかず、用水路や下水溝などがあふれて氾濫したり、河川の増水や高潮(海水面の高まり)によって排水が阻まれることによって、住宅などが水につかる浸水が想定される区域に指定され、いわゆる「内水被害」というものにあたります。

浸水想定区域と都市浸水想定区域との違い

浸水想定区域についてわかりやすくまとめた

浸水想定区域についてわかりやすくまとめた

2018.07.05

都市洪水想定区域や都市浸水想定区域にある不動産は安くなるのか

結論からいうと、都市洪水想定区域や都市浸水想定区域に指定されると不動産価値は下がる可能性があります

指定されているということは、住宅が浸水(床上浸水・床下浸水)するおそれのある土地だからです。そのような水災の可能性のある土地とない土地、どちらの方が価値が高いでしょうか。

また、国は「コンパクトシティ」の概念を打ち出し、立地の良い場所に「集まって住む」ことを政策としておしすすめています。そこで各自治体は、集まって住むべき場所として「居住誘導区域」を設定していますが、都市洪水想定区域や都市浸水想定区域は、居住を誘導することが適当ではないと判断される場合は、原則として、居住誘導区域に含まれないこととすべき区域に定められているのです。もし、何らかの対策がされておらず、居住誘導区域外となった都市洪水想定区域や都市浸水想定区域内の不動産は要注意です。

居住誘導区域内の不動産価格は維持されますが、居住誘導区域外の不動産価値は下落します。

コンパクトシティ(居住誘導区域)とはなにか

都市洪水想定区域・都市浸水想定区域の調べ方

一番便利なのは、国土交通省ハザードマップポータルサイトです。浸水想定区域であっても、都市洪水想定区域で洪水であることにはかわりありません。洪水ハザードマップを調べると良いでしょう。また、都市浸水想定区域についても、内水ハザードマップを調べると良いでしょう。

わがまちハザードマップ

また、GoogleYahoo!で「◯◯(市区町村) 都市洪水想定区域(都市浸水想定区域)」と調べてみてください。

※こちらのページは国土交通省HPを参照しています。